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絵本「アネモネ戦争」

上村 亮太   BL出版

ギリシャ語の「anemos」と「neos」というふたつの言葉をひとつにした「anemone」は、「風の娘」という意味だそうです。

文字通り風に乗って、いろんなところにアネモネの花が咲きほこるようになり、人の手で種や球根もかけ合わされ、さまざまなアネモネが作り出されました。

そんなとき、ある国の欲張りで自分勝手な王様が、自分の国だけに咲く新種のアネモネを作るよう命じます。

それだけではありません。

その花も種も球根も、自分の国だけ、いや、王様自身だけのものにして、作り方も誰にももらしてはならないと命令しました。

なんてわがままな王様。だれかの顔が浮かんできます。

ある風の強い日、アネモネの種が王様の塔から舞い上がって飛んでいきます。


私は、この絵本の中で、このページが一番好きです。

なぜなら、それは、アネモネが、球根から育てられたりせずとも、自分の力で種を作ることを忘れず、風に乗って自由に飛んで行けることを証明しているからです。

となりの国にまで飛んでいったアネモネの種。自分だけのものにしておきたいと思った王様は、なんと、となりの国の地面をめちゃくちゃにしてしまおうと考えて、戦争を起こしてしまいます。

こんなことが、人類の歴史では無数に繰り返されています。

でも、きっと大丈夫。

アネモネの種のように、どんなに大きな渦に巻き込まれようとも、風に乗って、どこにでも飛んでいってそこで咲くことのできる力はなくなることはありません。

アネモネの種だけでなく、市井の人々の力は根強い。
そう、地面にしっかり張られた根っこはそう簡単に途絶えることはありません。

このアネモネの種のように、風にのって、海や山や国境も越えて、きっと助け合える根が広がります。

根のない、たったひとりの我がままな王様に勝ち目はありません!





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