わたしはエキスパート

変な時間に寝落ちてしまい眠れなくなったので、なにか書いてみる。
本当は台詞練習したり、部屋片付けたり有意義に時間を使うべきなんだけど、3:25(今現在)って本来寝ていなくちゃいけない時間だし、身体は完全に寝るモードのためそんな気にもなれずぐたぐだしている。

こんな時間に起きていると当然ポジティブな気持ちなど一切湧いてこず、ただひたすら暗いことしか思い浮かばないので、毎度といえば毎度だがネガティブなことを書く。

ちょうど1年くらい前かに居酒屋でバイトをしていた。元々東京にきてからずっとコールセンターで働いていてそこは結構時給がよかったけれど、それでもなぜか常に金欠だったので掛け持ちで働くことにした。
働きはじめて数ヶ月、店長が代わることになった。新しい店長はアルバイト全員と面談をしたい、悩んでいること、不安なこと、店長に聞きたいことがあったらなんでも聞いてくれと言った。わたしは、なんでこの仕事をしようと思ったんですか?となぜか面接官のような質問をしたのを覚えている。
悩みはないかと聞かれたので、わたしはぼーっとしているタイプなので、お客様のグラスが空いていること、キッチンから料理が出されていることなんかにすぐ気がつけなくて作業が遅くなってしまう、気づいたときには誰かがやってくれている、自分はダメ人間だ、みたいなことを言ったと思う。
それに対して店長はまず、わたしはダメ人間じゃない、みたいなことを言った。例えば、接客が苦手でいつも気づけば洗い場に入ってるスタッフがいたとして、俺はそいつをダメなやつだとは思わない。他の誰かがやるよりもそいつが洗ったら皿が綺麗になったら、他の誰かがやるよりも速く洗えたら、それは店にとって意味のある事だし、みんなと同じにできるようになるよりも、自分の得意をそれぞれが磨いた方がいい店になる、みんな何かのエキスパートになれる、みたいなことを言ってくれた。
自己肯定感が地を這っている安藤は、それにいたく感動し、やる気がもりもり湧いてきた。エリカ(本名、店長にはみんな下の名前で呼ばれていた)は何が得意なのかと聞かれたが特になかったので声が大きいと言った。実際、挨拶のデカさは他の人にも褒められたことがあるので、そういうことにしておいた。
それから数ヶ月、元気に挨拶をする人としてがんばって働いたが、突然襲ってくる、わたしいま100%店の役に立ってないな…という気持ちに勝つことができず辞めてしまった。

アルバイトに限らず、演劇活動でもさらには家族や友人との間でも、役に立ってないな…が頻繁にあって、すみませんすみませんの気持ちの連続なのだが最近、これは自分が役に立っていないのではなく、役に立ちに行っていないのではないかと気づいてしまい恐ろしくなってしまった。ん?めちゃくちゃわかりやすく言うと、「〇〇さんは仕事がはやい」「気が利く」「頭がいい」など相手を褒める発言と「わたしは仕事が遅い」「気が利かない」「馬鹿だ」など自分を下げる発言を組み合わせることによって、なんとなく相手がやってくれる空気を生み出し、尚且つわたしが仕事をしなくても怒れない雰囲気を作り出し、自ら役に立つことを避けているのではないかということを発見し、己にドン引き中なのである。

先日も稽古場でみんながお弁当を食べているのを見て、「みんな料理が上手でうらやましい」「自分で作ったメシはクソまずい」と例のコンボをキメたところ、共演のるい乃さんが、今度アンちゃんちにご飯作りにいきますよ〜と言ってくれて、ついにここまで来たかと思った。
店長の言うようにみんな何かのエキスパートになれるのだとしたら、わたしは他人にやらせるエキスパートだな。ドン引き。おわり。


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