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電子書籍は良くも悪くもなかったから、結局良いってことなのだろうって話。(外套と青空)

2020年4月8日

 通勤電車はまだ混んでいる。それなりに空いてはいたけど、満員には変わりなかった。
 今までは紙の本を読んでいたけど、どうも最近、すぐに眠くなる。いっこうに本が読み終えない。読みたい本はたまり、読んでる最中の本もたまる。カバンは重くなる一方。
 せめてカバンは軽くしようと思い、『紙の動物園』を電子書籍で買った。初めて買う、電子書籍。紙の信奉者ではあるので個人的には事件だった。けれども何も変わらなかった。この場合、変わらないことが核心なのだろう。姉さん、事件です。

 この時節、いつもなら関西へ出張へ行く。今年はもちろん行けない。関西には文通してる子がいて、なんだか私が揺れに揺れてて返事をかけてない。
 京都の高瀬川沿いに咲く桜を見ながら青空文庫で『高瀬舟』を読んだりする。京都から大阪へ。京阪電鉄に乗って。まるで流刑されるみたいな心持ち。
 
 中目黒沿いの桜はいつも溢れんばかりの人に溢れている。桜が満開だっけ、人が満開だっけ、となる。今年は閑散としているんだろう。毎年、川沿いのベンチで、恋人同士が腰を抱き合い、密着させて桜の下で缶ビールを飲んで、春ランマンだと浮かれて陽気になっている。
 帰りの電車では青空文庫で『桜の森の満開の下』を読んだりする。

 就職氷河期の末期に大学を卒業することになり、偏差値40以下の大学生だった我々同級生はことごとくフリーターになった。
 1999年に世界が滅びるとしか思ってなかったので、仕事のことを考えてなかったし、世界存続の余韻に浸ってしかいなかった私はハッピーモード全開で卒業旅行のことしか考えてなかった。でも、意外や意外、友だちはみんな意気消沈してて、卒業旅行どころじゃなかった。仕方ない。一人で行こう、と思い、一人で行くなら電車賃もホテル代もとったいないな、と自転車に跨って、野宿しながら行くことにした。
 鈴鹿峠も高瀬川もその時通った。

 SFみたいな毎日。ようやく電子書籍で本を買っただけのこと。未来がどんどん遠くに行ってしまう。5Gだって言ってるよ、世の中は。

 どこでもドアが生まれたら、きっともっと走りたがる人が増えるでしょうね。だから今日もトレーニングパンツを履いて、最初の一歩を走り出す。
 クライミングジムが自粛してるので、なんだかずっと走ってばかりいる。

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