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台灣好吃的旅遊

 台湾に着いた。むしっとした空気。湿気を感じる。ここは都会、決して良い空気ではないだろうが、空気の違いはエキセントリックだ。
 今はフリーのワケありニイハオ、エキセントリック少年ボウイ-
 
 ここは曇り空。飛行場の景色は開けている。雲で遮られる日中の光。空が変わった。
 両替所で台湾ドルに両替をする。今あるすべての財産が台湾ドルに変わる。飛び交う言葉も中国語になっている。
 空港を出る。すぐに地下鉄の駅があった。松山機場站。階段は長く深かった。地下鉄に乗る。電車の中で同僚は、まず行きたいご飯屋さんがある、と言った。じゃあ、そこへまず行こう。待ち合わせの時間を決める。

 どこにでもあるどこか。仕事柄、よく出張へ行く。ホテルで朝食を食べ、マックで昼ごはんを食べ、モールで夕食を食べる。出張はルーティンの作業だった。
 出張ってそんなもんでしょ、と思っていた。意識が低いのだ。せっかく来たのだから、と同僚は言った。
 行きたいご飯屋さんがある。素敵だな、と思った。

 それぞれの宿泊場所はAirbnbで決めた。それぞれチェックインして、駅で待ち合わせることにする。信義安和站、17:00。
 
 行きたいご飯屋さん。
 圓山駅で降りて、10分くらい歩く。途中で児童書専門店を見つけて、写真を撮った。本屋を見つけたら写真を撮る。仕事の一つだった。次第に台湾出張の気持ちになる。当たり前だが、知らない本屋がある。

 ここだよ、と同僚は指を指した。丸林魯肉飯。地下と二階も同じ店なのだ、と説明をする。人はたくさんいたが、座席数は多く、広いのでいつでも座れるのだ、と。
 ここはセルフで料理を選ぶ。席に着く前に、並べられた料理を指差しながら選ぶ。店員が選ばれた料理をさらに盛り手渡す。料理を選び終え、席に着く。飲み物と主食(ご飯)は席についてから注文をする。
 飲み物の値段が高い。お腹が膨れるほど食べて、2人で700元だったのにそのうち、半分が飲みものの値段。ソフトドリンク二杯。食事が安いのか。
 ご飯はあまりに美味しかった。魯肉飯を2杯食べてしまう。

 タイペイは夜の7時。楽しみにしていたレストランは潰れてなくてよかった。お腹が満たされて幸せなの。
 
 嘘みたいに輝く夜市。とても楽しい、だから会いたい。誰というわけでもなく、口ずさんでしまう。年相応に。

 南に歩いて15分くらい。雙城街夜市に着くと人が群れをなしている。6年前にも夜市へ行ったことがある。そういえば、その時一緒に行ったのは女性だった。女性と行くと、出張に妥協はない。マックなんか行かない。
 その時に嗅いだ、臭豆腐の匂いはあまりしなかった。香辛料、薬味の匂いは相変わらずした。甘い匂いが以前より強くなったように思う。

 せっかく夜市へ来たのに、お腹が空いてない。美味しそうなものを見つけても食べることができない。夜市をぐるっと周り、帰る。
 同僚と間違えたね、と話す。どこか一ヶ所でたくさん食べたらもったいないんだね、それがタイペイの夜の7時。

 帰り道、翌朝5時に象山へ走ろうと決めた。食べ過ぎた。太ってしまう。数年前まで、どこにでもあるどこかの都市でしかなかった訪れた都市たち。唯一残されたユートピアは走ることだった。走ればそこは、どこでもないどこか、に変わった。

 帰り道、ビールを買って飲んだ。浮かれて鼻歌を歌う。
 上海蟹食べたい。あなたと食べたい。
 心のトカレフに想いを込めてぶっ放す。
 夜明け5分前。

言葉は人間をつくってはくれない
言葉が崩壊すれば人間は灰になるだけだ
その灰をかきあつめる情報化社会の奴隷たちに
(田村隆一 僕の聖灰水曜日)

 Google mapとGoogle翻訳に全ての痕跡を残す。Air BnBで宿泊場所を決めて、思い出はInstagramへ。そしてこのnote。
 実態のない巨人が問いかけてくる。充実してますか?幸せですか?と。いいね。いいよ。愛してる、と。
 はやくあなたに逢いたい、
 はやくあなたに逢いたい。
 GPSであなたを探す。
時代が変わり、イケイケのドンドンな流行曲ももはやただの懐メロになる。早く逢いたいなら、GPSを共有すればいい。

 6年前の台湾、その日の話題だったGPSはジョルジュ・サンピエールだった。
 今では近くに総合格闘技の話をする人はいない。あなたに会いたよ。


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