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晶文社という出版社で単行本の編集をしております。キャリアだけは長くなってしまいましたが…

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晶文社という出版社で単行本の編集をしております。キャリアだけは長くなってしまいましたが、まだ修業中のつもり。メールはandoraあっとst.rim.or.jp

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コロナ禍で躓いたきみたちへ

コロナ禍で躓いたきみたちへ村上春樹の作品には、世間一般に浸透する支配的な価値観・道徳観(モラル)から否定された体験を持ち、そこで受けた傷の痛み(喪失、疎外、損なわれた感覚etc)に耐え、自分で自分を律する格率(マクシム)を支えにして生きている人物がよく登場する。 専門性の高い職種につき、食事、洗濯、掃除など日々のルーチンを丁寧にこなし、芸術を愛し、周囲の人間には対して礼儀をもって接し、控えめに生きるひとたち。彼らの多くは、なんらかの形で「損なわれた感覚」を抱いたまま、あやう

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      『街場の日韓論』の帯文について 内田樹先生編の『街場の日韓論』は、幸いにして多くの読者に読まれているようですが、この本の帯にあるコピー「아이고(アイゴー)。困っています。みなさんの知恵を貸してください」で、なぜ「アイゴー」という言葉が使われているのか、疑問に思う方々がいるようです。本の内容とは直接かかわらないことで恐縮ですが、この点について、編集子より少しご説明させていただきたいと思います。 まず、この本の編集子は1960年生まれで、学生時代に韓国の民主化運動、すなわち全

      • 作法のツインギター okuradashi01

        人間長く生きていると、作法のようなものがいくつか生まれてくる。 と言っても、そんなにおおげさな話ではない。歯は右下の奥歯から磨きはじめて右上の奥歯で終えるとか、髭は朝ではなく夜入浴時に剃るとか、階段は右足から登り始めるとか、そんなたぐいのものだ。とくべつそれに理由があるとか、こだわりがあるとかいうわけではない。ただ、そういう暗黙のきまりごとがあると、ものごとはよりスムーズに、効率的にいくことがある。なにものにもしばられない、絶対的な自由というのも考えものだ。「今日はどの歯から

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