安藤ベッグ

好きなお酒はアードベッグです。

安藤ベッグ

好きなお酒はアードベッグです。

マガジン

最近の記事

  • 固定された記事

虚実混濁日記 その壱 アリ&ヒジキ

×月×日 アリとヒジキとビールと居酒屋 久しぶりにアリを見た。至近距離で見たのは何年ぶりだろうか。右へ左へ揺れ動くアリの触覚や頭の動きが見えた。そこは居酒屋のカウンターの上であった。  初夏である。夕日が沈んでも涼しくならない繁華街では、入口を開け放つ居酒屋がちらほらあった。クーラーをかけるより外の風を入れたほうが心地よいとする店主の判断であろう。店内の様子が通りすがりざまに見えた。今夜は初めての店で飲もうと試みる俺を安心させた。  「ごめんください。一人ですけど空いてま

    • 「ご注文は」「とりあえず激辛で」

      自問自答することも偶には悪くない。脳のクオリアがどうにかなるって茂木健一郎も言っていたとかいなかったとか。 迷うな!「とりあえずビール」だ!  世の中の酒クズの多くは最初の一杯をビールと決めている。ビールが好きなのは言うまでもないけれど、ビールが好きというよりアルコールが好きなのであって、何が何でも「俺はビールなんだよ」ではないのだ。  お店について着席したら最短最速で一杯にありつきたい。ならばシンプルで手間のかからない酒が一番早い。よって「とりあえずビール」なのだ。迷う

      • 俺の本棚から一冊 #3『ニセモノ師たち』中島誠之助

         先日ビブリオバトルに参加した。メモを用意して臨んだけれど、話す予定だった内容の3分の1に達する前に時間切れとなってしまった。準備不足である。情けないやら悔しいやらで枕を濡らす日々を送りそうなので本稿で改めて紹介する。 『ニセモノ師たち』中島誠之助 2005/講談社文庫  今この記事を読んでいる人に骨董蒐集の趣味をもつ方はいらっしゃるだろうか。もし居るのであれば業の深いことだなあと関心するし、骨董のコの字もしらねえよと言う人ならばある意味幸せな人だなあと思う。なぜそう思う

        • 俺の本棚から一冊 #2

           社会人になって驚いたことの一つは、本を読む人は少数派であるということだ。「新書って何?」と40歳半ばの上司に言われたときはカルチャーショックで頭がクラっとしたのを覚えている。 『字が汚い!』新保信長 2020/文春文庫  「手書き信仰」という言葉がある。履歴書を手書きで作成することにこだわる人々を揶揄する言葉である。彼ら曰く、筆跡や字の丁寧さが性格や能力の判断材料になるだけでなく、なによりも誠意が伝わったり温もりを感じることができるらしい。彼らの言い分にどれだけの根拠や

        • 固定された記事

        虚実混濁日記 その壱 アリ&ヒジキ

        マガジン

        • 虚実混濁日記
          3本

        記事

          俺の本棚から一冊

           私事ではあるが、先日退職した。それからしばらくの間は退職後の諸手続きや求職活動を除けば酒を飲むかネットサーフィンをするかの日々であったが、さすがに飽きた。これを機に求職活動をする傍ら空いた時間で本を読むことにした。 1.『町の忘れもの』なぎら健壱 2012年/ちくま新書  たまに散歩をする。古い民家やアパートやビルを眺めながら「へぇーっ」と呟きながら歩く。外壁や庇が傷んでいる様や、ごみ屋敷の郵便受けからはみ出した宅配物の束、民家の庭に置いていある植木鉢や置物、放置されて

          俺の本棚から一冊

          虚実混濁日記#3 部屋のイメージ

          ×月×日 普請道楽の家  数年前、遠い親戚ではあるけれど両親が仲良くしていたAさんの母が亡くなった。翌年、後を追うようにその父が亡くなった。父と母がいない親戚の家はAさんが一人で住んでいる。  広い家だった。増改築を繰り返したAさんの実家は迷路のように分かりにくい間取りだった。例えば、便所の脇に扉があり、ギチリと音を立てて開けると長い廊下が続き大小幾つかの部屋がある。廊下の脇には階段があり、階段を上がるとまた長い廊下と幾つかの部屋。部屋の横にはまた階段。部屋かと思っ

          虚実混濁日記#3 部屋のイメージ

          早合点して詩を書いた事

          長い前置きと言う名の弁明 予め弁明する事を臆病、逃げ腰、予防線を張ってる、何とでも言えばいい。何事も事前の弁明が大事なのである。説明なくして本題を出すのは暴挙と言える。  今となっては、思い返せば頭を抱え、見返せばアッと声を上げるほど恥ずかしいことを、友人の要請により披露する事となったのだ。恥を晒すのだ。私が人間である以上、精神衛生上に必要不可欠である自尊心を微塵の程でも保たせんと欲する故の「弁明」なのだ。    事の始まりは本稿執筆の約1年前。行きつけの飲み屋で店主から

          早合点して詩を書いた事

          虚実混濁日記 その2 がびょうやま

          ×月×日 「がびょうやま」 実家の近所には林がある。毎朝窓を開けてタバコを吸うたびに見える広い林。林の外側には茨の木やススキが繁茂しており、冬はひどく物寂しい景色になる。小さい頃よく遊んだ場所だ。  ある日俺は飲み屋で同年代の人と話す機会があった。偶然にもその人は実家の近所に住んでいたことがあるようで、極めてローカルなあるあるネタの話で盛り上がった。互いに幼稚園や小学生だった頃に見た風景とその思い出を共有できるというのは、嬉しいと言うか、何処となくこそばゆい感慨を覚えるもの

          虚実混濁日記 その2 がびょうやま

          熱狂!血液型おばさん

          長い前置き ネットを散策していれば、粗雑で不埒で志の低い広告を目にすることは数多ある。その中に一つ見つけた広告が「血液型で性格当てる!驚くほど当たる」という内容。  私はこの手の話を鵜呑みにする人々の考え方を危険であると思っている。人格を構成する要素は血液型で決まるほど単純ではない。科学的にも証明されている明白な事実である。詳しくはCINII等で調べてくれたまえ。星座占いや誕生日占いはまだ可愛いほうである。では、なぜ危険なのか。血液型という親から否応なしに受け継いだ身体的な特

          熱狂!血液型おばさん

          人生の半分損する事

           いろんな言い回しがあります。日常生活で起こる様々なことを、現実には起こりえないような事で例える当意即妙な言い回し。あえて言葉通りに受け止めてみると、面白いことがわかるのではないでしょうか。  本稿では「人生の半分損してる」と言う人々について考えた事を記しました。少々辛辣な物言いをするかもしれない事は予め承知して頂きたいです。  唐突ですが、私はしめ鯖が苦手でした。(今は大好きです。とても美味しいしめ鯖を食べたからです。)ある人が私がしめ鯖を好まないことを知り、「人生の半分

          人生の半分損する事