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ニュース✓:ウクライナの原発への影響、復興予算終了後の被災地はどうなるのか

出来事が自分ごとになる瞬間

 出来事が自分ごとになる瞬間、というのがあります。渦中にいたとしても、それまではどこか距離を持っていた出来事が、もう抜き差しならない、自分の人生から切り離すことのできないものになったことを自覚する、そういう瞬間です。
 どこか自分自身の人生においても傍観者的であった私ですが、原発事故のあとに何度もその瞬間を経験することになりました。今回のロシア軍のベラルーシ南部の原発直近地区からのウクライナ侵攻と、チェルノブイリ原発の占拠は、そのひとつになるだろうと思います。

私とチェルノブイリ被災地域

 私の原発事故のあとに行ってきた活動は、今回の侵攻の舞台となったベラルーシ南部の地域が起源です。その地域では、1991年のソ連崩壊以降に本格化した、欧州委員会によるチェルノブイリ被災地域支援活動が多数行われてきました。昨年のベラルーシの弾圧開始以降、欧州と強いつながりを持ってきたこれらの地域も人たちがどのような状況に置かれているのかはわかりません。NGOなどの民間活動もルカシェンコは弾圧していると報じられていたので、おそらく楽観できる状況ではないと思っています。

 福島でも、原発事故以降、広く国内外のつながりができ、それが原発事故後の唯一のよかったことだ、と話す地元被災者の人は少なくありません。私もその一人です。ベラルーシでも、ウクライナでも、同じだと思います。その人的繋がりによって、強権的な独裁官僚国家がなしえなかった地域復興をねばりづよく続けてきた人びとをあざ笑うかのように踏みにじった彼らは、私を踏みにじったのと同じだと感じています。

ウクライナの原発 損傷リスク

 ウクライナの原発の損傷リスクについて、日経でも詳報が出ていました。ロシアからの天然ガスによるエネルギー依存を減らすために、ウクライナは原発の増設を進めていたところでもあります。
 戦闘による物理的損傷も懸念されますが、通常のオペレーションが維持できるかどうかも同様に不安視されています。
 チェルノブイリ原発は、大事故が起きた場所ではありますが、少し管理ができなくなったとしても、ただちに危機的になるような状況ではないでしょうが、稼働中の原発は、福島事故同様のことはいつでも起こりえますので、こちらも心配です。

復興予算終了後の被災地

 震災からこっち10年間、復興工事関係者の宿泊を受け入れ続けてきた岩手県田野畑村の宿が、復興予算が減る10年め以降、利用者が激減。事業の続け方を模索しているとの記事です。

 震災10年目の2020年度の1年間に投じられた復興予算は、岩手、宮城、福島の被災3県で約2兆3千万円。だが翌21年度からの計画では、向こう5年間の総額で1兆6千万円程度だという。とくに原発事故の影響が今も続く福島以外の、岩手と宮城で減少が著しい。

記事本文より

福島復興に与えられていた「特別扱い」

 宮城、岩手の予算が激減した地域の状況は、遅れて予算が減少することになる福島の浜通りの数年先の姿でもあります。福島の避難地域の場合は、原発事故のあと、津波被災地域よりも国のイノベーション・コースト構想であったり、廃炉工事であったり、国の予算投資が一定程度続くことは予想されますが、このことは、逆に言えば、今後、厳しい状況になっていくだろう、宮城、岩手の津波被災地域との格差がさらに広がるということであり、それによる不公平感が高まっていくことも大きな懸念材料です。

 これまで福島復興に与えられていた特別扱いは、原発事故にあって格別に気の毒だから、という国民的な一定程度の認識があったから行うことが可能だったと思っています。しかし、今後、他の被災地の苦境が伝えられてくるようになったときに、福島だけ特別扱いにどのような眼差しが向けられるようになるのかは、わかりません。

福島県の被災12市町村の人口規模に復興計画は見合っている(た)のか?


 また、福島県の被災12市町村は、震災前の2010年時点でも人口規模は20万人に過ぎません。人口は、震災前から既に減少フェイズに入っていたところが大半ですから、事故がなくても自然に減少していたでしょう。
 投下している予算規模や、国が目指している事業の行く末は、もともとの人口規模に見合ったものなのか、との疑問は当初からあります。事故前の状況以上にするべきではない、という意味ではなく、浜通りという地域の地理的条件や社会条件を考えた時、めざせる人口数にはおのずと限界がある、という意味です。
 人口減少時代に、どれだけ予算を投下しようとも、避難十二市町村の人口規模が100万規模になったりすることはありえません。
 これもいまさらではあるのですが、浜通りの身の丈を踏まえた計画に考え直すべきではないでしょうか。
 「なにをわかりきったことを書いているのか」と思われるかも知れませんが、震災のあとの異常な高揚感のなかで、荒唐無稽とも思えるような計画ばかりぶち上げられ、あまりに多くの人の感覚が麻痺しきっているのです。「常磐新幹線」なんて、避難自治体の復興会議でぶち上げていたくらいです。私には、自治体の方たちは巨額の復興予算で感覚がどうかしてしまったとしか思えなかったです。

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