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ニュース✓:川魚が基準値を超えるのは、山林除染ができないことが理由、山林除染は現実的ではない

「白血病ユーチューバー」のにゅ〜いんさんのドキュメンタリーを見ました。(「目撃!にっぽん」は丁寧な内容が多くてよく見ています。)

最後に、「社会とつながっていたい」と言われていたのがとても心に残りました。社会から置いてけぼりにされている孤絶感は、とてもしんどく、みじめなものです。私の震災のあとの動きのモチベーションのひとつは、この孤絶感を知っていたことも大きかったと思います。
どんな形であったとしてもつながっていたい、ひとりでは生きていけない。人間とはせつない生き物だと思います。もしひとりで生き、ひとりで死ぬことを苦としない生きものであったなら、人間のかかえる苦難の多くはほとんどなくなってしまうことでしょう。

川魚の基準値が超えるのは、山林の除染ができないことが理由 :朝日新聞

震災ウィークなので、この喧噪のなかでも、今週は報道も増えると思います。
首都圏の関心度をはかるには、新聞のなかでは日経がいちばん妥当な気がしています。日経は、3月になってもほとんど震災関係の記事が増えていないので、これが全般的な関心度なのだろう、と思っています。
他の全国紙は、関心が低いなか、このアクセス数全能の時代にアクセス数の伸びない記事を書いてくださってありがとうございます。

いまとなっては避難指示が解除された地域の食品でも、基準値を超えるものは、コシアブラや天然物のキノコといったかなり特殊な食材のみなのですが、川魚もそのうちのひとつです。

川の水そのものは測定しても放射性物質はほとんど検出されないにもかかわらず、なぜ川魚は基準値を超えるのか。その理由は、川魚が餌とする虫や藻類や落ち葉などに未除染の山林由来の放射性物質が含まれていて、生物濃縮されるから、とのことです。

これまでの調査で、山林の放射性物質は山林外にほとんど流出しない=山林内にとどまって循環することがわかってきています。これからわかることは、この先の山林の放射性物質は、地表から地面深くに沈下していくということでもない限りは、ほとんどを占めるセシウム137の自然減衰(半減期30年)に従って、ゆるやかに減衰する、つまり、影響は長期に渡るということです。

山林除染は現実的ではない

では、山林も除染するべきなのではないか。

石井さんは「森の放射性物質をどうにかしない限り、魚の濃度は下がらない。だが、森の除染も現実的でない」と指摘する。

朝日新聞 本文より

おそらくは被災地の人たちに気兼ねして、あまり強く主張されることはありませんが、山林の除染が現実的でない、というのは、専門的な知識をもつ方たちにとっては共通認識であるといっていいと思います。

その理由は、もちろんひとつには経済合理性、コストがあまりにかかりすぎるということがありますが、それよりもなによりも、山林の除染をするということは、生態系を完膚なきまで壊すことにしかならないからです。

すでに福島県内の皆さんは理解されていると思いますが、除染というのは、放射性物質「のみ」を選択的に取り除くことはできません。付着した物質を一緒に撤去する、早い話が、土木工事になります。

山林の除染を行うということは、そこに生えている樹木、植物、表土のすべてを取り除くことを意味します。それをすることによって放射性物質が取り除かれたとしても、かつてのいわゆる「山林の恵みの豊かさ」といったものは、中期的に失われます。そうまでして山林除染をする意味があるのか、否定にならざるを得ない理由です。

では、どうすればいいのか。部分的には、山林の整備にあわせて、除染的な工事を組み合わせたり、人が出入りが多い部分は、多少の生態系の破壊を前提とした上での除染工事、といったことは可能かもしれません。
しかし、長期的には、山林の放射性物質とは付き合い続けざるを得ないだろう、というのが私の考えです。それがいいとかそうするべきだ、と思っているわけではありませんが、原子力災害の特徴として、そうならざるを得ない、のだと思います。

山林除染をめぐる問題についても、私は、県庁が前面に出て、環境省と自治体や林業従事者などの関係者との調整を行うべきだと思っています。
ただ、万事面倒くさいことは国に丸投げで、自分は泥をかぶらないことに徹している現福島県知事がそんなことをするとは思えず、将来の展望は非常に暗く、このまま長期的にずるずるになるのだろうな、と悲観的に考えています。
そういう県知事を「手堅い」「堅実な手腕」と褒めあげるのが、いまの福島県であり、日本社会なのでしょう。

除染はなんのために行うのか

後日また、帰還困難区域の避難指示解除と除染について、稿を改めたいと思いますが、人びとが除染になにを求めているのか、除染をめぐる経緯については、昨年、以下のように発表しました。

現状がなぜこんなことになっているのか、わかりやすくまとめられたと思いますので、ご関心のあるかたは参考にしていただけると幸いです。

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