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嫌な気持ちと距離を置くの意味

じっとしているとなんだか不安な気持ちが沸き上がってくる。
今、何が起きているわけでもないが、嫌だった出来事を繰り返し思い返してしまう。
ふとした瞬間に嫌な気持ちに飲み込まれてしまう……今日はそんな気持ちに「距離を置く」方法と、その意味を書いてみようかなと思います。

苦しいのループ中に人は頑張れない


気分が「なんとなく」落ち込んでいるとき、というのは生きていると訪れることがあります。何か大きな出来事があったわけじゃないし、今すぐに最悪な出来事があったわけでもない。よくよく考えれば大したことがないと思えるのに、心に刺さって抜けないこと、あるいは抜けた後の傷が治らないこと。

そういうことにとらわれている自分を「ダメだ」「やめなきゃ」と責めてしまうこと。

落ち込んでいる、のループに陥ってしまうこと。ありますね。誰にも解決してもらえないし、自分でもどうしていいか分からない。自分でなんとかしないといけないのは「分かっている」。

分かっているのに、どうしたらいいか分からない。

こういった状況には「認知行動療法」という、考え方の癖を変えるような取り組みが有効とされていました。私もこのやり方はわりとしっくり来るので、適応だなというクライアントさんには提案してみたりします。

が、ここ数年、いろんな方とお話をしてきて思うのです。
傷だらけの人がいきなり頑張るのって、めちゃくちゃ難しくて苦しくて痛いに決まっている、 と。

自分はこれもできない、だからだめなんだ、となってしまうクライアントさんを見て、もちろんその「だめなんだ」も認知行動療法の対象の範囲内であることは分かるのです。

「だめなんだ」のループに入っている人にそれを語ってもらう時間は、クライアントさんにとって非常に苦しくてつらい時間です。かさぶたを触るような、そんな時間だと思います。

「だめなんだ」で落ち込む程度も人それぞれです。何となく健康を損なっているけれどそこそこやれている人から、もう何もできない、その思考でいっぱいになってしまう、という人まで。

いっぱいいっぱいになってしまう人に、「じゃあ、あなたの考え方の癖を変えていきましょう」と言うのを、私はかなり躊躇います。もっともっと傷つくんじゃないか、抜本的な解決よりもまず、やることがあるんじゃないか?

いっぱいいっぱいになって、感情に巻き込まれて、それ以外のことを考えられない、という人。
まず「その自分の考え方がダメだから、何とかしないと」という気持ちになることから離れてみるのも大切なことだな、と感じます。「ダメな自分を何とかする」という考えそのものが、非常に苦しいものだからです。

ダメな自分をなんとか「正しく」するのではなく、自分が苦しいから、その苦しみを何とかしたいから、やってみる。

そういう風に思えた時がきっと認知行動療法のはじめ時なのかな、と、最近は感じています。

ではその「苦しみから距離を置く」とは、どういうことなのか?

言ってしまえば「考えなくて済む時間を少しでも持つ」ことです。長くなくていいのです、最初は一分、二分でも構いません。以下の手順で少し試してみてください。


苦しみから距離を置く方法


1.悲しい気持ちになってきたことに気づく
 まずはここからです。「あ、今私は悲しくなっている、落ち込んでいる」と理解すること。「私は何かに傷ついている」と感じること。いつの間にか感情にのまれるより先に、そのことに気づきます。そうすると感情と自分に少しだけ距離ができます。自分の真ん中にあった感情を、目の前に見えるように取り出したイメージです。

2.自分が悲しさを感じなくてすむ時間をとる
 悲しい気持ちがやってきたときに、あなたの役に立つことは何でしょうか。今の生活を振り返って、自分が何も考えず、嫌な気持ちにとらわれていない時間はどんな時でしょうか。
 悲しさに飲み込まれてから考えるのは大変なので、いくつかピックアップしておくと良いと思いますし、できれば紙や付箋などに書いて、お守りのようにしておくといいと思います。
 音楽を聴く、歌を歌う、散歩に出かける、いつもより丁寧にお茶を淹れる、その場から立ってみる、ラジオ体操をする、いらない紙をぐしゃぐしゃにする、推しキャラのことを考える、音ゲーの好きな曲を一回叩く、ルームスプレーを撒く…… など、悲しい気持ちとは全く関係のない、落ち込みが入る隙間のない、すぐにできることをピックアップしておくのです。
 難しいこと、手順が大変なこと、できればお金を衝動的に使うようなことはやらないでくださいね。家の玄関から出て、外の天気をぼーっと眺めるだけでも、気分は変化します。

3.やった後の気持ちをモニタリングする
 やる前と比べてどうでしょうか。ちょっとは距離が出来ましたか? まだ近くにありますか? またすぐ戻って来そうでしょうか。
 それでもずっと真ん中にあるよりは、楽になったような感じがしませんか?
 もし少しでも軽くなったような感じがするなら、さらにできそうなことをやってみるのもいいでしょう。


このやり方には即効性はありません。落ち込んでいるときにそんな気分になれないというのは最もです。
それでも、あなたの真ん中にあるつらさが「ほんのちょっと」遠ざかる時間があることを積み重ねてほしい。あなたがやった「ほんのちょっと」をご自身で価値のないものにしないでほしいし、「ほんのちょっと」が出来た自分のことをしらけた目で見ないでほしいのです。

苦しさを抱えたあなたにとっては「ほんのちょっと」としか思えないこと。苦しさからは誰だって、一足飛びに距離をとりたいこと。
そういうことを分かっていて、かなり厳しく、つらいことを書いているな、と自分でも感じます。

でもその「ほんのちょっと」から、ゆるやかに、おだやかに、苦しさを抱えていく力が取り戻せる。そうしていくと、根本的な「考え方の癖を変えてみたい」という意欲が沸いてくるのではないかと、経験則ながら思うのです。


それでも気分の変化がどうにもならない、ずっと苦しめられている、コントロールが全くできないという人は、どうか医療機関にかかることも手段の一つとしてご検討くださいね。人によってはちゃんと適した薬が出て、楽になることも多々あります。

ひとつの気がかりが生活の全てをどよんと覆うような、そしてその気がかりが解決したらすべてが晴れやかになるような。
不安や苦しみとは、そういう側面もあります。実際に起こっていることを検討することも大切ですが、まずは自分が気分よくいられる時間を増やすこと。もやもやしても、思考を「自分はダメなんだ」で終わらせないで、ちょっと気分転換、面倒だけどできたな、とか、できなかったけどやろうとはしたな、もやもやするけど、と、そのままで終わらせておくこと。

痛みには手当が必要です。怪我が治ったらできることも増えます。

まずはそっと、包帯を巻くことを意識してみてくださいね。



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