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不安の解消への近道を選んでしまうこと

人間関係の話をしている途中だったのですが、どうしてもひとつ気になることがあり、書かせてもらおうかなあと思いました。

ウィズコロナ、ニューノーマルなどと言われる時代。
私は医療の専門家ではありませんので、日々信頼のおける情報を適度に探しながら、とにかく今は感染予防に努めることが必要だなという思いでいます。ワクチン接種も二回終了しました。

ノーマスクだったり、ワクチンを接種しないことだったり。いろんな立場や考えの人がいます。そのことは否定されるべきことではありません。

ただ、人の不安を利用して誰かを扇動するのは、許されるべきことではありません。


私はいつも不安との付き合い方をお話するときに、「不安を抱えておく」「不安をそこに置いておく」という言い方をしています。不安を「解消する」ことを目標にできなくもありませんが、全く不安を発生させずに生きていくことは、自分の考え方ひとつでは大変難しいことだからです。

自分の考え方ひとつ、というのは、今のこの世の中の状況。災害だったり、時勢だったり、身近な人の死だったり、病気だったり。私たちがごく普通の生活を送っている中で起きる、人の力では防ぎようがないできごとというのが必ずあります。

そんなとき、私たちはその心配事を手放したくてしょうがなくなります。
「大丈夫だろうか」「明日どうしたらいいんだろうか」「不安でしょうがない、眠れない、苦しい」「生きていく希望がない」「怖い」。

こういった感情が次から次へと沸き上がってきたり、ぼやっと自分の人生を覆いつくしてしまったかのような心持ちになります。

私たちは安心したい。正体のわからないものや、安定しないことからは逃げ出したくなるのです。それは自然な心の動きです、誰だって当たり前に感じることです。

そして私たちの心は、自然と「バランスが取れるほうへ」動いていきます。矛盾した考え方、バランスのとれない状態を自分の中へ抱えておくことはとても難しいことです。だからこそ、誤った不安の解消方法を選んでしまった人はそこから抜け出すのがとても難しいのです。


たとえ話をしましょう。
失業してお金の心配をしているときに「これを買えば絶対宝くじが当たるよ」とツボを売りつけてくる人と、「仕事を探しに行こう、一緒についていくよ」と言う人と、どっちが誠実な人だと思いますか?

後者に決まってる、と多くの人が思うのではないでしょうか。

でも、自分が本当に本当につらい気持ちを抱えているときに、「もしかしたら一発で救われるかも」「この不安をもう抱えていなくてもよくなるのかも」と思えることを何か言われたら、絶対にそれに抗えると思えるでしょうか?

私にはわかりません。弱った時、いつも通りでない時、普段なら一蹴できる言葉を私たちはどう受け取ってしまうだろう。そんなことは誰だって分からないのです。

だからこそ、人の不安に付け込んで、言葉だけでその不安を取り除いたふりをすることをとても不誠実だなと思います。


不安を安易に解消できる出来事なんて、きっと奇跡のようなことでしか起こらなかったり、不安を抱いている出来事に決着がつくことくらいしかあり得ない。

つらい気持ちを抱えている人にとっては本当に残酷なことですが、安易に不安を解消できることなんて、きっとほとんどないのです。

だからこそ、私たちは自分の不安をうまく抱えてやる必要がある。この不安の根拠は何なのか。実際に怖いことは起こっているのか。それは客観的に正しいことなのか。自分がこの不安を抱えているのは、いったいどうしてか。

先の見えない時代を私たちは生きています。
度重なる緊急事態宣言、経済的な不安、病気への不安、怒り、落ち込み、絶望、緊張感。そういったものの中で必死に頑張っています。頑張れば頑張るほど、ぷつんと途切れたときに不安でたまらなくなる。あなたが真剣に頑張っている証拠でもある。

どうかそれを利用されないでほしい、と、頑張っているあなたにこれ以上お願いをするのは心苦しいのですが、そう願うばかりです。

抱えながら、いつか解消できたとき、頑張ったなあ、ぼろぼろだなあ、と涙を流すかもしれない。分かりやすいエンディングなんてきっとないと思います。傷ついたり悲しかったりしたことは、なかったことにはなりません。

それでも人生は続いていく。
十年後、あなたが今大切にしたいもの、ずっと大切にしてきたものを、大切にしておけるように、どうか不安と付き合っていてください。付き合い方が分からなくなったら、一緒に考えさせて下さいね。

不安を抱えておくには「自分の生活の中で大丈夫なことを見つける」とか、「自分の出来ていることをちゃんと見つける」、「誰かと不安な気持ちを共有する」「ねぎらい合う」という、本当にごくごく些細なことが大切になってきます。

乗り越えることが容易ではない不安ですが、誰もが抱いている、共有しやすい不安でもあります。だからこそ、一緒に大変だね、つらいよね、怖いね、いつまで頑張ればいいんだろうと嘆いて、でも頑張ってるね、を見つけたり、もう頑張りたくない、と本音を口にしたり、それでも辛ければ休む道を見つけたりしていきましょう。


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