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【イベントレポート】初開催!AND ON大企業オープンイノベーション座談会

2022年6月9日、AND ON SHINAGAWAにて「大企業イノベーションの課題と解決策」をテーマにしたイベントが開催されました。オンラインでも配信されたイベントの様子をご紹介します。

前半のプレゼンの登壇者は、大企業で新規事業の推進をしながら、大企業挑戦者支援プログラムCHANGE by ONE JAPANリードや共創組織ONE Xの共同代表や塩尻特任CIOなどを務めている濱本隆太さん。大企業の若手中堅有志団体の実践コミュニティ「ONE JAPAN」で幹事を務めるなど、社内外でオープンイノベーションに関わっている方です。

濱本さんは「熱狂するコミュニティを活用してイノベーションを加速しよう」というメッセージを、4つのアジェンダを通して提案してくれました。

【アジェンダ1】個人の原体験

まずは濱本さんの原体験から話は始まります。

大学時代にトラックに轢かれて九死に一生を得た濱本さんは、それ以来「人生は一度きり」と強く思うようになりました。そして、自分の人生を使って何をしようかと考えている中で、2つのことを経験していきます。

1つ目の経験は、2011年にパナソニックに入社したときでした。当時のパナソニックは会社経営に難航しておりました。会社の将来性などに疑問を持ちつつも、何をすればいいのか分からない毎日。業界を取り巻く環境が日々変わっていくなかで、GAFAM(Google、Amazon、Facebook、Apple、Microsoft)の存在感が増していきました。

GAFAMの時価総額というのは、東証一部上場企業の全てを合わせた時価総額を越えています。例えばApple社がiPhone発売したことで、コンパクトカメラ市場は衰退の道を辿るなど、たった1社の動きが市場全体に影響を与えるようになっていきます。

濱本「20年前のパナソニックの時価総額は、私が記憶している限りでは約4兆円。その時のApple社はたしか約7000億円程度でした。でも今のアップルは、約250兆円にまでなっています。この経験から、イノベーティブな事業を創れば時価総額を200倍以上あげられるのではないか、と思うようになりました」

2つ目はAIの発展です。当時、営業の仕事をしていた濱本さんは、最新技術のAIを調べた結果「今の自分の仕事は将来なくなるのではないか?」と思うようになりました。オペレーション的な事業はAIに淘汰されてしまう、という濱本さんの読み通りに世間は動いていきます。実際に、証券会社のトレーダーはAIエンジニアに変わり、保険会社のコールセンターでもAI化が進んでいます。

クリエイティブな分野が今後の生き残りの鍵だと悟った濱本さんは、その後、新規事業開発などのイノベーション関連に力を注いでいきます。

【アジェンダ2】なぜCHANGE ONE JAPANを作ったのか?

濱本さんは経済産業省次世代イノベーター育成プログラム「始動」など様々なコミュニティに参加をして、新規事業立ち上げのノウハウを学んでいきます。パナソニックでもその熱意が認められて、新規事業開発部門へと異動しました。

濱本「新規事業開発部門で私は、スタートアップの方と共に学んできたノウハウを大企業で実践してみました。しかし、全然うまくいきません。そこで思ったのは、“スタートアップが新規事業を生むノウハウは体系化されていても、大企業が新規事業を生むためのノウハウは体系化されていないんじゃないのか?”ということでした。大企業なりのノウハウを体系化するために、大企業挑戦支援プログラム“CHANGE by ONE JAPAN”というのを立ち上げました」

CHANGEとは、大企業向けの実践型のコミュニティのことで「本気で自社を、社会を変えていく人財(CHANGER)」を生み出すことを目的にしています。そこで学ぶことのひとつが、大企業とスタートアップのノウハウの違いです。

濱本「私はそのスキル・ノウハウを“Tシャツとスーツ”という言い方をしています。例えば、大企業の場合は根回しや決済を通すためにスーツ的な動きをしなくていけないのですが、スタートアップなどの方と会う時はスーツよりもTシャツを着ていたほうが仲良くなれるんです。このスーツとTシャツの使い分けが大事になります」

【アジェンダ3】大企業イノベーションの罠

さらに話は進み、大企業に潜む3つの罠をまで言及してくれました。

その罠と以下の3つになります。

・1つ目の罠 PL思考の罠
・2つ目の罠 既存勢力の罠
・3つ目の罠 熱量の罠

濱本「皆さんもこんな経験はないですか? 経営幹部から“投資した1億円はいつ回収できるのか?”というものです。実は、大企業とスタートアップで投資に関する考え方が違っています。大企業の経営陣は回収までに時間がかかる長期投資として考えているのですが、スタートアップの企業はすぐに回収できる短期投資として考えています。これがPL思考の罠です」

例えば、スタートアップ企業であれば、もともと時価総額が低いので事業を成功させると事業価値がすぐに上がるために、投資金額を短期間で回収できます。しかし、最初から時価総額が高い大企業はそういうわけにはいきません。この意識の差が壁になってしまいます。そこで大企業の場合は、新規事業の組織を外部に設置したり、売却時の時価総額で評価をしてもらうなど、工夫が必要になります。

2つ目は既存勢力の罠です。新規事業が具体的になっていくと、既存事業と利益を食い合う関係になるなど、不都合な真実が浮かびあがってくることがあります。既存事業からいかに敵視されないようにするかも重要なポイントです。

3つ目は熱量の罠です。大企業は人数が多いのですが、イノベーションに関して必ずしも熱量がある人たちばかりとは限りません。中間層にいる人がストッパーになってしまうと、全体の熱量が下がってしまします。無題に関係者を増やすのではなく、熱量のある人、つまりは有志が集うコミュニティを作る必要があります。

【アジェンダ4】これからは顧客共創の時代

濱本「これは私独自の概念ですが、従来の開発スタイルというのは、プロトタイプを当てて開発する“デザイン思考型事業開発”でした。しかし、これからは“顧客共創型事業開発”に変わっていくと思います。“顧客共創型事業開発”というのは、ゲーム業界などでは増えているスタイルですが、開発者とお客さんが一緒になって作っていくことで、一瞬のうちに改善点が見つかり、改善スピードが飛躍的にあがるスタイルのことです」

顧客共創型事業開発をするためには、熱狂的なコミュニティが必要だと濱本さんは説きます。さらに開発を成功に導くための4つのポイントを紹介してくれました。

1つ目は「好きの醸成」で、町工場・商店街をなんとかしたい、などの熱量を持った人が集まることです。2つ目はそこで関係性が生まれることで「関わりが濃密化」していきます。一緒に仕事をしたいと思える仲間ができたところで、3つ目の「課題に対峙」となります。そうすれば4つ目の「解決策の実行」の段階でも、コミュニティの関係性が濃密なので途中で頓挫する可能性が減ります。

濱本「新規事業開発で失敗しがちなのは、課題から入ることなんです。解決したい課題というのは複雑なものが多いので、コミュニティが形成されていないと、途中で“これは無理だ”と匙を投げてしまう場合が多いです。だから長く課題に向き合える仲間、その領域に向き合うことが好きな仲間を見つけるプロセスが重要です。その領域が好きな人が集まってくると、それはいずれ熱狂に変わり、課題解決のスピードが上がる“熱狂コミュニティ”に変化していきます」

前半のまとめ

1、大企業イノベーションにおける3つの罠を避ける
2、熱狂するコミュニティを活用する
この2つを活用することで、イノベーションは加速していきます。そのためにも、AND ON SHINAGAWAをもっと活用してもらう提案をしてくれました。


【後半企画】大企業オープンイノベーション座談会

前半に登壇した濱本さんは引き続き参加をして、ファシリテーター役にはReGACY Innovation Groupの金子佳市さん、その他に、京浜急行電鉄 広報・マーケティング室の坂巻康治さんと、トヨタ・コニック・プロの岩岡弘樹さんが加わって、後半の大企業オープンイノベーション座談会が開催されました。

まずはそれぞれの夢を語ってもらった後に、スタートアップと大企業の違いについて伺いました。

濱本「スタートアップの魅力は圧倒的なスピード。とにかく開発スピードが早いんです。一方で、大企業は店舗数などの圧倒的なアセットを提供できることですね。他にも、スタートアップと比べて大企業はガバナンス面がしっかりしていることが多いので、そこも大企業ならではの強みかなと思います」

金子「私は今、行政なども含めて様々な人と関わらせて頂いていますが、地域によってイノベーションの差が大きいと感じています。地方だからダメとかではなく、本質的な部分で違いがあるのではと思っているのですが、どう思いますか?」

岩岡「地域との向き合い方として、私達のイメージでは街単位で捉えています。地域によって取り組みに凸凹は確かにあるのですが、その要因は何かと考えていくと、先ほど濱本さんが話していた“熱狂するコミュニティ”は大きいと思いますね。そこには魅力的なキーマンがいて、そのキーマンが中心となることで、地域の想いと我々の想いが一致して、イノベーションが進むイメージがありますね」

金子「スタートアップと関係を築く上で、どのようなことを考えていますか?」

岩岡「事業を開発するうえで、尊敬できる存在。ライバルと言うよりも、パートナーとして見させてもらっています。大企業の持つアセットをうまくスタートアップさんに繋げさせて頂いて、世の中に出していければといいなと。お互いの強みを繋げるような、ハブの存在で関わらせて頂けたらなと思っています」

大企業の課題とAND ONへの期待

座談会の後半では“大企業の課題”についても会話が盛り上がりました。

濱本「課題という意味では沢山あると思いますが、パナソニックという観点でいうと、コングロマリットというのがあります。だからこそ、ディスカウントされてしまうってのは、入社してからずっと思っていました。例えば、シリコンバレーっていうのは、あそこは何もなかったからイノベーションが起きたと思うんですね。既存領域のしがらみがないからこそ、攻められる部分はあると思います」

坂巻「先ほどの“既存勢力の罠”というのは私にも響くところがありまして、新しいことに対するアレルギーというのは、鉄道業界だけでなく、どの業界にも存在していると思うんですね。ただ、否定する人がいるのなら、逆に理解してくれる仲間もいると思います。弊社の良い所は社員同士の距離が違いので、話せば分かってくれる人が比較的多いんじゃないのかなとは思いますが……」

と、まさに前半の講義内容である大企業イノベーションの3つの罠に近い話になりました。最後にAND ON SHINAGAWAというコミュニティへの期待を語ってもらいました。

岩岡「スタートアップの方々と出会える場所は増えてはいますが、しっかりと向き合ってくれる大企業がいるというのが、ここの特徴かなと思っています」

濱本「私のメッセージは変わらず、熱狂から面白い事業は生まれると思っています。オフラインの強みは熱量を感じられるところだと思うので、それが可能なこの場所には期待をしていますね」

坂巻「皆様の今日のお話を聞いて、我々は熱を冷ますのではなく、加熱していくブースターを目指す必要があるなと思いました」

座談会も盛り上がり、イベントは無事に終了。最後に参加者全員で写真を撮りました。AND ON SHINAGAWAでは、今回のような熱量のあるイベントを今後も開催していく予定です。


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