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Googleアナリティクスはもう限界?新しい概念「アプリ+ウェブプロパティ」の解説

 この記事は、ウェブマーケティングやウェブ解析を行っていて、Googleアナリティクスを利用している方が、アプリ+ウェブプロパティの概念と必要性を理解し、導入まで進むことができることを目的としています。

概念の理解

 まず、アプリ+ウェブプロパティの概念を整理していきます。ツールの基盤となっているのは、アプリ開発や運用を総合的に支援するツールのFirebaseです。さらにその中でも、FireBase向けのGoogleアナリティクス(アプリのためのGA)をベースとし、ウェブもアプリも横断的に分析可能にしたものが、アプリ+ウェブプロパティになります。図示すると下記のイメージになります。

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では、なぜアプリ+ウェブプロパティが必要なのでしょうか。その理由は、これまでのGoogleアナリティクスの計測に限界が見えてきているからです。Googleアナリティクス計測の限界について、いくつか具体例と共に説明します。


Googleアナリティクス計測の限界①:直帰や滞在時間の考え方

直帰しないのが良いサイトでしょうか?滞在時間が長いのが良いサイトでしょうか?

訪問した1ページのみの閲覧であっても、ページ下部までスクロールして、じっくりと読んでいる可能性もあります。そのようなユーザーは、ファーストビューだけを見て離脱したユーザーよりも、望ましい行動をしてくれています。しかし、現在のGoogleアナリティクスでは、直帰とみなされ、指標としては望ましくない行動をしたと認識されています。

また、Googleアナリティクスの滞在時間の計測方法は、次ページとのタイムスタンプの差で計算されます。つまり、直帰したユーザーは、次ページとのタイムスタンプ差は生じていないため、滞在時間は0秒となります。

このように、1ページのみを、じっくりと読んだユーザーも、直帰とみなされ、滞在時間も短く評価されてしまい、ユーザーの正しい理解には繋がりづらいという問題が、Googleアナリティクス計測の限界の一つになります。

Googleアナリティクス計測の限界②:計測の対象が「ページ」や「セッション」

ではなぜ、直帰や滞在時間のような問題が生じているのでしょうか。その根本的な原因は、Googleアナリティクスの計測の対象が、「ページ」や「セッション」であるからです。当たり前のことを聞かされていると感じる方もいらっしゃると思いますが、ページやセッション単位で計測することが、ユーザー行動を正しく把握できない理由の一つなのです。

例えば、Googleアナリティクスで、「行動>すべてのコンテンツ」を確認すると、ページごとに、PVが多い順に、離脱率、ページ滞在時間、などが合わせて表示されます。これは、一般的なGoogleアナリティクスの使い方の一つですが、そもそもこのデータが本当に必要なのか、本当に有益なのか、という議論をしなければなりません。
これらのデータは、「ページ」に対して、どのくらい表示されたか(PV)、どのくらい滞在したか(滞在時間)、どのページを最後に見たか(離脱)、を計測しています。では、「ページ」の、PV数が多い、滞在時間が長い、離脱率が低いことは、本当に良いことなのでしょうか?

また、これらの計測は、「セッション」をベースにしています。1訪問でCVまで到達することももちろんありますが、複数回の訪問でCVまで到達することも多いと思います。

BtoBサービスを展開している企業のサイトを例に考えて見ましょう。あるユーザーが、下記のような行動を取ったと仮定します。

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1回目:TOP→製品ページ→離脱
2回目:TOP→価格表→離脱
3回目:TOP→事例→選ばれる理由→離脱
4回目:TOP→製品ページ→価格表→事例→離脱
5回目:TOP→事例→よくある質問→価格表→問い合わせ
==

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このような場合、現状のGoogleアナリティクスでは、「選ばれる理由」ページの評価はどのようになりますでしょうか?
「選ばれる理由」は、3回目の訪問で閲覧され、このページを最後に離脱しています。この事実からは、”「選ばれる理由」は離脱されているコンテンツであるため改善が必要”という方針が導かれそうです。

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もう一つ例を出して考えてみましょう。「CVしたセッションで見たコンテンツ」の中には、「事例」「よくある質問」「価格表」が見つかります。これらのコンテンツは、「CVに貢献した」と評価できそうです。

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以上の内容は全く問題なく、皆さんがいつも行われている改善活動といえます。しかし、ユーザーの「より正しい理解」の機会を失ってしまっているという可能性もあります。

というのも、このユーザーは、5回の訪問をして、5回目の訪問でCVしていますが、「この一連の行動」に意味があるのではないか、という考え方もできるからです。

例えば、「選ばれる理由」を閲覧中に、他のタスクが生じて、ページを閉じざるを得ない状況が生まれたとします。その場合、「選ばれる理由」は計測上は離脱されたページとなります。一方、「選ばれる理由」の中に、ユーザーに刺さるコンテンツや訴求があり、それをユーザーの頭の中に残すことができていた可能性もあります。この状態で再度ウェブサイトを訪問(4回目の訪問)していると仮定します。そうすると、「選ばれる理由」はすでに理解しているため、製品の詳細や具体的な料金を確認することに集中ができます。このように仮定すると、「選ばれる理由」の閲覧がユーザーの態度変容を生むキーとなっているのではないかと考えることができるのです。

つまり、「選ばれる理由」を閲覧したことが、4回目5回目の訪問を生み出し、最終的にはCVしたと言えるのではないか、ということになります。

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このように、”ユーザーの一連の行動に意味がある”、と考えることで、より正しいユーザーの理解につながる可能性があります。しかし、既存のGoogleアナリティクスの、ページ単位、セッション単位のデータでは、より正しいユーザーの理解の機会を失っている可能性があると考えられるのです。そのため、既存のGoogleアナリティクスのデータには限界がきていると言っても過言ではなさそうな状況となりつつあります。

では、既存のGoogleアナリティクスの限界を解消するためにはどうすれば良いのでしょうか?先程記載した通り、ページ単位やセッション単位のデータではなく、「一連の行動の中に、鍵になるコンテンツやアクションを探す」ことが必要になります。ではそれに気づくためには、どのようにすれば良いのでしょうか?そこで出てきたのが、新しい概念である、アプリ+ウェブプロパティになります。

アプリ+ウェブプロパティが必要な理由

では、アプリ+ウェブプロパティではどのようなデータを計測することができるのでしょうか。これまで記載してきた問題点を解消するために、アプリ+ウェブプロパティでは、「エンゲージメント」と呼ばれる新たな指標が生まれました。例えば下記のような内容です。

• スクロールの計測
• エンゲージのあったセッション数
10 秒を超えて継続したセッション、コンバージョンイベントが発生したセッションなど
• エンゲージメント時間
ウェブサイトの場合はブラウザ上でフォーカス状態にあった時間の平均値

これらのデータは、既存のGoogleアナリティクスでも、イベントトラッキングを行うことで計測できる部分もありました。しかし、あくまでも補足的な立ち位置であったかと思います。一方、アプリ+ウェブプロパティでは、このようなデータの計測が標準搭載されていたり、そもそもこのようなデータ自体がはじめから重要視されています。その理由はやはり、ページやセッションの計測ではユーザーを正しく理解できないためです。既存のGoogleアナリティクスの計測の対象は「ページ」であり、計測の方法は「セッション」でしたが、アプリ+ウェブプロパティの計測の対象は「ユーザー」であり、計測の方法は「イベント」である、ということが大きな変化になります。先程、エンゲージメントという指標が出てきたというお話をしましたが、クリックやスクロールといったアクションだけが「イベント」ではありません。アプリ+ウェブプロパティでは、先程の例のような、”「選ばれる理由」を閲覧する”こと自体を「イベント」として計測し、分析に応用していきます。

計測の違いを簡単にまとめますと、下記のようになります。
事象自体は同じことなのですが、捉え方が異なります。

これまでの計測:「選ばれる理由」が表示されること(1PV)
これからの計測:「選ばれる理由」が閲覧されること(1イベント)

このように計測することの利点は、先程の例の通り、CVしたセッションには直接的に貢献しているように見えないが、ユーザー行動全体を通してみると、”「選ばれる理由」を閲覧する”ことが重要な行動だった、ということに気づけることにあります。

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計測がイベント中心になる、ということで戸惑われる方も多くいらっしゃるとは思いますが、大まかな理解としては、これからはすべてを「イベント」として計測し、ユーザーの行動にフォーカスして計測や分析を行っていくことになる、と思っていただければ問題ありません。

とはいえ、勘が良い方はここである問題に気づくかと思います。それは、”何をイベントとして設定するのかを設計しておかなければ、何も計測できないのでは?”ということです。これはまさにそのとおりです。何も計測できないわけではありませんが、うまく活用するためには、何をイベントとして計測するかを設計して、正しく設定する必要があります。これについて今回は記載しませんが、覚えておいていただければと思います。次回以降のテーマとしていきます。

一旦、ここまでのお話で、既存のGoogleアナリティクス計測の限界と、アプリ+ウェブプロパティの必要性について理解いただけたのではないでしょうか。

では、今後どのように業務を進めていけば良いのでしょうか?

まず現状では、アプリ+ウェブプロパティはまだ完成形ではありません。また、課金もされません。そのため、まずは導入してみて、触れてみる、ということをおすすめします。設計が必要というお話をしましたが、まだイメージが付きづらいと思いますので、どんなデータが見れるのか、管理画面はどうなっているのか、などを感じてもらうことが最初のステップだと思います。使ってみるうちに、活用イメージが膨らむと思われます。また、現状では、ヒット数などの上限もありませんので、GA360ユーザーであっても導入しておくことをおすすめします。導入してみて、データやツールに触れてみながら、本格的な運用に活かすまでに、用意することや考えておくべきことを整理しておいたほうが良いと思います。

最後に、アプリ+ウェブプロパティの導入についてお話します。

アプリ+ウェブプロパティの導入

①プロパティの作成
まず、プロパティを作成します。Googleアナリティクスを新たに導入するイメージで新規で作成します。下記のように、「アプリとウェブ」という項目が追加されていますので、こちらを選択して次に進みます。

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②データストリームの設定
データ収集の対象を、アプリかウェブから選択できます。ウェブを選択して次に進みます。

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③ウェブサイトを登録
計測対象となるウェブサイトのURLを登録します。標準的なイベントは自動計測できるようになっています。

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④計測タグの確認
タグマネージャー経由で、Googleアナリティクス自体を新しく導入する場合はこちら

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タグマネージャー経由で、すでにGoogleアナリティクスが設置されている場合はこちら

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HTML内に直接、Googleアナリティクス自体を新しく導入する場合はこちら

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HTML内に直接、すでにGoogleアナリティクスが設置されている場合はこちら

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⑤Googleタグマネージャーでの実装
アプリ+ウェブの設定を選択

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画面に従って設定を進めます

イベントを設定する場合はこちら

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⑥実施のレポート画面
いつもと見慣れない画面が表示されています。

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⑦分析画面
データを分析する場合は、自分でレポートを作成します

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⑧セグメント
既存のGoogleアナリティクスとは異なるセグメントが用意されています

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以上が、導入の流れのご紹介になります。ここまでの流れで、一通りの導入ができるのではないでしょうか。普段Googleアナリティクスを利用されている方にとっては、それほど難しい内容ではないかと思いますので、ぜひ進めていただければと思います。

今回は、既存のGoogleアナリティクスの限界と、アプリ+ウェブプロパティの概要についてご説明しました。次回は、アプリ+ウェブプロパティの導入設計について記載する予定です。

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