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良いことたくさんありますように

まず手はじめに、『万葉集』の最後を飾る和歌から。えっ?最初じゃなくて最後なの?という感じですが、巻頭歌にはもうちょっとあとで出てきてもらいます(笑)

新(あらた) しき 年のはじめの 初春の
けふ降る雪の いや重(し)け吉事(よごと) 
 
(巻20・4516)

新しい年のはじめの今日
雪が降っている
新年に雪が降るのは良い兆しだから
この雪が降り積もるように
良いこともたくさん積もっておくれ

天平宝字3年(759年)、因幡の国守(長官) を務めていた大伴家持が新年の宴の席で詠んだ歌です。新年に降る雪は豊作の予兆であり、縁起の良いものとされていました。

2月ももう終わろうとしている今日。正月なんてだいぶん前のことだし、旧暦の正月(今年は1月25日でした) もすでに1か月前のこと…今さら感がありますが、どうしてもこの和歌をいちばんに載せておきたかったのです。

なぜなら、良いこといっぱいありますようにって歌ってるから!

「言霊(ことだま) 」という言葉があるように、日本では古来から言葉には魂が宿ると考えられていました。発した言葉どおりのことが起こるから、言葉は大切に扱われていたのですね。

また、お祝いするという意味の「寿ぐ(ことほぐ) 」という言葉。この字は年賀状などで使われますよね。「言祝ぐ」とも書き、おめでたい言葉を口にすると、ほんとうに幸せが訪れると信じられていました。

「いや重け吉事」と歌うことで、きっとその言葉のとおりに良いことがあるだろう、あってほしい、という願いと期待がこめられた歌。だから、どの歌よりも先に紹介したいと思ったのです。

家持は『万葉集』の編纂者であったため、お祝いの歌を最後に据えることで、『万葉集』を後世まで伝えたいという願いもこめたのかもしれませんね。

あっ。トップの写真はお正月にいただいた和菓子。真っ白な薯蕷饅頭にちょんと赤い点。その名も「えくぼ」。なんてかわいいネーミングでしょう。えくぼがいっぱい、笑顔のたえない年になりますように。

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