ヒー様のこと。

松田翔太くんに粋な羽織を着せて、江戸弁のドSな色男にして、実は豚肉大好き一橋慶喜です!!とやるセンスはまったくもって最高だと思う。

当初、「八重の桜」の小泉慶喜と同じイケメンサイコパス路線かな?と思っていたヒー様でしたが、意外にも将軍継嗣問題あたりで見せてくれた人間としてのまともさから、もしかしてサイコパスじゃなくてゴッシーの皮をかぶった本木慶喜(「徳川慶喜」)の軟着陸路線なの? …と思わせて、再登場で久光を芋と罵倒し倒したあと、暗殺の恐怖からぶっ壊れて二心様になってしまった流れ、最高に面白かったです。

彼は西郷、久光、斉彬とそれぞれに対比される人物で、思いの器としては、西郷、久光とそれぞれに対峙し、プリンスとしては斉彬と対峙する。

斉彬の中にあった、必要とあれば人を本当に踏みにじるような暗黒面が、幕末の動乱に放り込まれたヒー様の中にも生じ始め、やがて幕末の混沌の中心みたいな、ある意味、史実通りの人物になって行くのは、これから成長した堂々とした姿で現れるだろう久光との対比に思える。

それでもヒー様にも救いがあって、最後の最後は「メンツより命」という原点に立ち返るよう用意されているのではないかな。

品川宿の女郎という社会の最下層の女性を愛し、落籍までしたのは、このヒー様のキャラ付けには必要なことで、お芳ちゃんが慶喜の妾になっても「ヒー様」「うちの人」と、言葉遣いを変えずに平民の女でいるのはその辺の目的の表れなんじゃないかなー。

(明治以降、趣味に明け暮れるヒー様の隣にいるのが似合いそうなお芳さんにすでになっていますよね)

というわけで、ロシアンルーレット並みの豪腕で描かれているヒー様だけど、基本的には「西郷どん」はヒー様には優しい大河だと思います。

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