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『ロングデイズ・ジャーニー この夜の涯てへ』昭和ノスタルジーのように映るのは凱里が醸し出す光景なんだな

日本では、ほとんど失われていったアート系の映画。

ATGの低予算でありながらアートを志向する作品の数々を、この映画を観ながらあの懐かしい感覚だけが蘇ってきた。

寺山修司の『草迷宮』『田園に死す』。

ATGではないけれど、押井守の大部分の作品、『スカイ・クロラ』『イノセンス』とか『紅い眼鏡』とか。
森田芳光の「ときめきに死す」「それから」等も想起させてくれる。

中国の凱里市という一地方出身のビー・ガン監督の作家色で彩られていく。

コロナウィルスが発生した武漢市のその先、少数民族自治州だそうだ。
劇中ではガラスケースに入れられたコブラが登場したりもする。
そういう情報を知ると、背景が見えてくるようでもある。

ワン・チーウェンと名乗る女役のタン・ウェイはアン・リー監督の『ラスト、コーション』の女スパイ役で脚光を浴びた人。
1970年生まれらしいが、相変わらず美しく妖しい魅力を放ち続けてくる。
つやのある黒髪と深緑のワンピースが瞼に焼き付いてしょうがない。

この映画は、途中で3Dに替わり60分間のワンシークエンスショットとなる。

映画は終わりの無い夢のようなものでもある。

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