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完治したウサギの斜頸の治療記録

飼っているウサギが、斜頸という頭が傾いて平衡感覚がわるくなる病気になった。聞くところによると、なかなか治りにくい病気のようだが、現在ほぼ完治したので参考のため治療記録を残そうと思う。

概要
発症:2020年1月1日
症状:首の傾き(左)、眼振、平衡感覚がおかしくなって左に回り続ける、段差にジャンプした時によろけて落下する等。
病名:エンセファリトゾーン症か、内耳への細菌感染の可能性(後述)
治療:血液検査の後、上記の2つの病気を念頭に、寄生虫を殺す薬(フェンベンダゾール)と、細菌を殺す薬(抗生物質)を同時投与(病院では注射、家では経口)。しばらくして、サプリメント(後述)を与えた。
治療期間:約一か月
結果:上記症状は消失した。
注意点:よろけてけがをしないように、突起や段差のないソフトケージを用意、もう一羽に移さないためにも隔離した。また、薬と共に、後述するサプリメントがかなり効いた可能性がある。

今回の主役はこいつ

名前:モップ(ももた)
ナントカロップイヤー(ニュージーランド生まれ)

推定4歳
普段からぼーっとしている

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発症

1月1日、夕方5時ごろ、庭で遊んでいたモップが突然ゆっくりと左に体を振り出す。これまでもゆるーいフラフラがあったが、それが大きくなった感じ。頭をなでると我に返ったように体の振りを止める。

夜7時、ペレットをやりに小屋に行くと、体の振りが激しくなっている。目を見開き、自分の身体がコントロールできないことに明らかに困惑している様子。眼球が高速で動く「眼振」なる症状もある。

ニュージーランドのこの時間、しかも元旦(祝日)では、かかりつけの獣医はやっていないので、救急動物病院へ。獣医に見せるために床に置くと、ぐるぐるとその場を歯車のように回りだす。

血液検査を実施。結果は1時間ほどで出た。採れた血液の量が少なくいくつかの検査ができなかったが、エンセファリトゾーン症の可能性が高いとのことだった。

エンセファリトゾーン症とは

簡単に言うと、寄生虫が脳に達して運動神経にダメージを与えることで、首が傾き、体がふらふらになる病気。運動のための指令を出す元になる脳がやられるので「中枢系」という表現をすることもある。

首が傾いてふらふらになることを「斜頸」というが、これは病気の名前ではなく、症状。もう一つ、斜頸を呈す病気がある。それは平衡感覚をつかさどる内耳の細菌感染、つまり内耳炎。さっきの「中枢系」に対し、運動のための刺激を受け取る内耳がやられるので、こちらは「抹消系」という言い方をするようだ。

症状が同じなので、どちらの原因でフラフラしているのかを特定するのが難しいようだが、血液検査で大雑把にどちらの可能性が高いか、ぐらいまではわかるらしい。

治療

フェンベンダゾールというエンセファリトゾーン原虫を殺す薬を経口(スポイト)で、細菌を殺す抗生物質を獣医が注射で投与。

結局、どっちかわからないけどどっちでもいいように薬を二つ与えよう、というシンプルな治療方針らしい。フェンベンダゾールは飲み薬を処方されるので、餌に混ぜるか、注射器型のスポイトで強制的に飲ませなければいけない。最低でも28日間の投薬が必要とのことだ。

抗生物質は経口薬では効き目が弱く、注射が必要なので、しばらく通院。結果として20日間、1日おきに通った。

帰宅後、フェンベンダゾールのスポイトを試すも、大暴れした挙句に吐き出してしまう。ペレットに混ぜても臭いがするのかその部分だけ残す。リンゴを少量すりつぶしたものに混ぜると、最初は警戒したが後から喜んで食べるようになった。

1月3日、ウサギの専門医がいるかかりつけ獣医を受診。治療方針の変更はなし。エンセファリトゾーンの場合、進行すると脳にダメージが残って症状が完治しないことがあるとのこと。ひどい場合は体を支えることができなくなり、食欲もなくなって衰弱してしまう。最悪の場合は、安楽死の選択肢もという獣医の言葉に戦慄する。

帰宅後、室内で様子を見る。フェンベンダゾールの副作用なのか、普段より元気がない。食欲もなく、薬を飲ませるのも大変。薬は1日2回。

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改善

窓際のクッションの上に一日中伏せている日々がしばらく続いた。伏せていても、首が左に傾く。

この「傾き」には2種類あって、一つは上から見て頭が左を向くこと。つまり、左足に鼻をくっつけようとしているようとしては跳ね返るように正面に戻る動きを繰り返すような状態。仮に、「首振りとでも呼ぼうか。

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もう一つは、頸椎が軸方向にねじれていること。顔を正面から見たときに、12時の位置にあった耳が2時の位置にあるような状態。これを「首ねじれ」と呼ぼう。

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歩こうとしても、「首振り」で体が常に左に行こうとするので、バランスを崩してしまう。最初は「首振り」が特にひどく、見ていて痛々しいほどだった。「首ねじれ」は最初は目立たなかったが、徐々に顕著に出るようになった。眼振は、発症から2,3日後には軽快した。

また、以前は簡単に飛び越えていた30センチほどの段差を飛び越えようとした際、狙いが定まらないためかひっくり返って落下してしまった。このため、けがをしないように段差のない環境を用意することが必要だろう。段差の多い外の小屋(軒下のデッキの上にある)から、室内に設置したソフトケージ(下記のようなもの)にモップを移動したのは、このためだ。

投薬を続けてしばらくすると、モップが座ったり伏せているときにはまだ症状があるものの、動き出すと「首振り」が止まるようになった。「首ねじれ」はまだあるが、首をねじったまま、直進できるようになった。常に左を向いているのを見て、首が凝りそうだなーと思い首の両側を良くマッサージしてやる。やたらとおとなしい。

https://youtu.be/hrOza1wxYXQ [show] [show]

モップは、飼育放棄されていたところからレスキューされたうさぎだった。人への警戒心があるのか、触られるのがあまり好きではなかったのだが、性格が変わったようにおとなしくなり、触られるのも嫌がらなくなった。大病をすると性格が変わるという話を聞くが、本当のようだ。

サプリメントが効いた?!

治療を始めて10日ほどの写真。

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相変わらず元気がないように見える。部屋の窓際のクッションが日向でお気に入りの場所になったのか、日がな、そこで寝っ転がっている。元気のなさが、薬の副作用のためか、症状が進行しているからなのかはわからない。少しずつ進行している様にも見えて、焦燥感が募る。なにかいいものはないかとインターネットで探していると、妻が下のサプリメントを見つけた。

うさぎのためだけに開発されたサプリなんてものがあることにも驚いたが、その効果にも驚くことになる。

1月20日。アマゾンで購入したサプリが届いた。さっそく口元に持っていくが、食べない。モップは新しいものに対する警戒心が強く、それが薬を飲んでくれなかった理由でもあるのだが、しばらくしたら食べるようになった。うさぎにもよるが、根気が必要なところだ。うさぎは、常に食べて出さないと死んでしまうという、動物としてどうなんだという致命的な弱点を備えているので、食欲がないときはビュッフェみたいな豪華な状態になる。

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ちなみに、先ほどからちょいちょい写っているが、うちにはもう一羽うさぎがいる。名を「コップ」という。こちらはおてんば娘で、ケーブルというケーブルを食いちぎり、新しいものは手当たり次第に口に入れてしまう。性格もあるのだろう。病気が移らないように、モップの治療中はできるだけ両者を分けていた。モップは上記のソフトケージで、コップは外にあるいつもの小屋で。もともと一緒にいたから今更だが、念のため。

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サプリメントを食べ始めて1週間ほどたっただろうか。明らかにモップの症状が回復してきていることに驚く。首ねじれも首振りも日に日に良くなり、これを書いている2月中旬にはほぼすべての症状がなくなった。段差も軽々とジャンプしている。食欲も旺盛。

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これが、投薬の効果が出てきたのか、サプリメントのおかげなのかははっきりとはわからないが、症状の改善がサプリメントを与えた時期と重なるのは興味深い。

一時は安楽死とまで言われたモップ。こうして元気に走り回るのを見られたのはよかった。もちろん、これはあくまで「うちのうさぎの場合」の話であり、すべてのケースに当てはまるとは言えないし、症状が消失したからと言って「完治」と宣言できるのかもわからない。でも、助かったケースがあることを知るのは飼い主にとって大きい。我々もインターネットで調べて何が起きているのか、どのくらいの期間治療するのか、治る可能性はあるのか、どういうことに注意するべきか、などの基本的な情報を得るのに、他の人の体験記が非常に役に立った。

当たり前だが、治療に当たっては、担当獣医の情報を最優先してほしい。ただ、本稿が少しでも、同じような状況の飼い主の精神的な負担をやわらげる一助となればうれしい。

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2020年7月8日追記:

ももた、斜頸から回復し、元気にしていたが、本日2020年7月8日、安楽死となりました。穏やかに送ることができました。とても悲しいですが、飼い主が悲しみ、ペットが苦しみから解放されるなら、それは飼い主の最後の責任かもしれません。苦しまずに逝かせてあげられたことが救いです。

バイバイ、ももた、ありがとう。いずれ、な。

たくさんの方々からサポートをいただいています、この場を借りて、御礼申し上げます!いただいたサポートは、今まではコーヒー代になっていましたが、今後はオムツ代として使わせていただきます。息子のケツのサラサラ感維持にご協力をいただければ光栄です。