専門分野についての紹介

私は、言語学専攻の大学4年生で、来年度(2023年)から大学院の修士課程に進学します。この noteでは私の専門分野とその分野に魅力を感じた理由を簡単に述べていきます。


今の専門分野

専門は、統語論と語彙意味論です。

統語論は、平たく言うと文に階層構造を規定して、その構造に基づいて、いろいろな言語現象、たとえば代名詞と先行詞の指示関係などが説明されます。

語彙意味論は、その名の通り、語彙(動詞や名詞、形容詞、副詞など)に含まれる意味を研究する分野です。例えば、私の卒論では、壁塗り交替(「ペンキで壁を塗る」は「壁にペンキを塗る」と言えます)が起こる理由を項構造の違いによって説明されると主張しました。項構造というのは、動詞が必要とする名詞句の数と種類を記載したもので、まさに項構造が語彙に含まれる意味を表したものと言えるでしょう。つまり、「塗る」という動詞は項構造の違う2つのタイプに分かれており、その違いによって壁塗り交替が引き起こされるということです。

大学3年生までは哲学が専門分野


以上が私の専門分野の話ですが、私ははじめから言語学を専攻していたわけではなく、元々、分析哲学というものを大学3年生までやっていました。私はとくに心の哲学に関心があり、クオリア(e.g. コーヒーを飲んだ時の独特な感じ)が物理的に説明できるか(原子の振る舞いによって説明できるか)という問いについて考えていました。他にも、メタ倫理学(e.g.道徳そのものは実在するのか?)、規範倫理学(e.g.われわれがなすべきこと・なすべきではないことは何か?)、言語哲学(言語とは何か?)、生物学の哲学(生物学たりうるには?)、科学哲学(何をもって科学と言えるのか)、知識の哲学(認識とは何か?)、形而上学(e.g. 宇宙にあるすべての丸いものがなくなったとしても丸さという概念は存在するのか?)、論理学(妥当な推論とは?)などの分析哲学と呼ばれる分野を満遍なく読書会などを開いて勉強していしました。

専門分野を言語学へ変更


しかし、ある授業がきっかけで専門を言語学に変えることになります。大学3年後期の時に受けた語彙意味論の授業でした。具体的には、影山の『動詞の意味と構文』という本です。この本を読んで、意味連鎖(行為→変化→結果)という概念によって、さまざまな言語現象(自他交替、二重目的語構文、壁塗り構文、結果構文など)が統一的に説明されることに感動しました。意味連鎖というたった一つの概念によって色々な言語現象が説明されることが面白かったのです。もう少し一般化して述べると、表面的には全く異なるように見える文や句でもその背後には抽象的な規則が潜んでおり、それを抜き出して、さらなる言語現象をもとに仮説演繹的に規則が立証されていく過程は実に面白いものだと思いました。これが主に私が言語学に魅力を感じたきっかけです。ここから、院試のために勉強しなきゃいけないということもあり、認知言語学、生成文法、語用論、第二言語習得論、音声学・音韻論と手を出していき、言語学の分野を幅広く勉強していきました。

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