アテネの直接民主主義は、参加するとお金がもらえるデモクラシーだった

「アテネでは貨幣は個人が自由に使える硬貨のかたちをとっていて、商品の購入や報酬の支払いに使えるものでした。貨幣は、水平型社会にふさわしく、自由人が共同して作り上げるポリスを平和裡に運営する手段でした。ですからギリシャでは他の文明におけるような身分や位階制が問題になることはなかった。ここでは社会の問題は初めから富者と貧者、持つ者と持たざる者の問題、とくに富者への借金で債務奴隷になる貧者の窮迫と無権利状態という問題でした」

「その時、立法者ソロンが登場して庶民の債務奴隷化で崩壊寸前になっている社会を一挙に立て直したわけですね。債務一切を帳消しにした。ポリスの司法・立法・行政に参加する権利を一般市民に与え、それで富裕層の横暴を封じ込めることができるようにした。デモクラシーの誕生です。しかも、お金が市民に広く行き渡るように計らった。アテネは直接民主主義で、公務に関与することはすべての成人市民の義務でした。民会への出席とか、すべて市民の義務であって、それに手当を払ったのです。参加するとお金がもらえるデモクラシーだったのです」

「貨幣は政治的な制度でした。経済の道具ではなく、市民の政治参加を可能にし、そのための経済的自立を保証する、経済的奴隷化を予防する、そういうものとして貨幣制度を設計したということですね」

これらの文章を読んでいるとベーシックインカムのことをどうしても考えてしまうけど、そう、関さんも貨幣制度改革とベーシックインカムを論じているのです。引き続き関さんの考えを追って行きましょう。

関曠野『なぜヨーロッパで資本主義が生まれたのか』

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