政府の新しい役割

「政府通貨の場合、政府の課題はできる限り客観的な国民経済計算に基づいて企業経済に通貨を過不足なく供給することであり、それによって企業経済の反映が教育医療福祉など国家の公共サービスに使える富の余剰を生み出すのである。だからここでそうした公共サービスの財源となるのは、過去の企業の収益と家計の所得から税として差し引かれた富ではなく、政府による適切な信用の管理によって新たに生産された富なのである」

「政府通貨の発行は、それが依拠する国民経済計算の公平さ、正確さ、信頼性、そして公共サービスのあり方についてのしっかりした国民的合意を条件とすることになる。ここでは会計ではんく信用の管理が課題なのだから、限られた税収の配分をめぐる党派争いは意味がなくなる」

「政府通貨は結局のところ、純然たる政治の問題である。政府通貨はどんな特殊利益の介入も排して客観的な国民経済計算に基づいて発行せねばならないし、その使途に関しては広範な国民的合意が必要である。社会が無数の特殊利益に分裂していて、この分裂が議会制民主主義のとして制度化されているかぎり、政府通貨の発行は不可能である」

「政府通貨とは経済的方策であると同時に、そうした国民的合意の象徴である。従って政府通貨の可能性は、デマゴギーではない掛け値なしに本物の民主制、人民の自己統治としてデモクラシーは可能かという問いに帰着する」

関曠野「経済のデモクラシーへ」(『フクシマ以後』所収)

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