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自閉スペクトラム症の世界

よく話題に挙げられるが、例を紹介しようと思う。
自分が突然見知らぬ国や地球以外の星に転生して、その国の言語や慣習が分からない状況下に置かれるとする。
すると、私たちも自閉症スペクトラム症の方と同じような行動をとることになる。
●その国や星のことばを聞いても、理解できない。
→ニヤニヤしてやり過ごす、分かった風を装う、じっとしている、会話を避けようとする、ちぐはぐとした応答となる、確認の意味で言われたことをそのまま繰り返して言う(オウム返しのよう)
●伝えたいことがあっても、どうことばにしたらいいか分からない。
ノドが渇いて飲み物が欲しいとき
→どう表現したらいいのか分からないので欲求不満状態のまま立ちすくむ、棚からコップを取り出して見せたり指さしたりするように物で示そうとする、コップがある食器棚の前まで連れて行こうと腕を引っ張る
●これからどうしたらいいか見通せない:予定/地理/食事/仕事/生活習慣など
→落ち着かずソワソワする(体動)、多動、多弁、自由行動が苦痛
●慣れない町、場所
→慣れた場所は安心するので、1度使ったことがある店やトイレを選ぼうとする。
●見知らぬ物を目の前にして、使い方が分からず戸惑う時
→自信がないため使うことに抵抗する、回避/逃避、恐怖、言い訳する、顔を背ける、視線をはずす
→食事に例えると、口にしたことのない初めての食べ物、変な色の料理などは手を出さない。
→食べることを拒否する(偏食)、見た目が気持ち悪いと感じて受けつけない
●その国の人の気持ちや捉え方、価値観が分からないので共感できない。
→過度に緊張したり、無表情になったりする。視線が合わない、合わせようとしない。
●転生後、元の人間とは違うすがたになった場合、身体を意図的に動かすことが苦手となる
・ボディイメージがぼんやりしている:歩いていると対向者に肩がぶつかる、人の足を踏む、よくぶつかったり踏んだりするが本人は気づいていない、ボールなど道具を使うスポーツが苦手、運転が苦手(車庫入れ/車線変更)
・手先の細かい作業をすることが苦手:字が汚い/マスからはみ出す、食べ物をよくこぼす、プリントを半分に綺麗には折れない
●人間時代に興味があったものは見えるが、興味のないものは見えない。
電車や車などの乗り物への興味と博識、ゲーム、数字や文字、標識など
●得体の知れないものは怖い!
他の星で初めて日食やオーロラ、流星群などを目の当たりにすると、”キレイ”と感じるだろうか…”恐ろしい””不吉”など恐怖感を抱く方もいるのでは。

以上。
私の知識と語彙力、想像力の限りなので、まだまだあるだろう。
現実世界で、定型発達/健常発達といわれる層の人たちも、環境や状況によっては自閉スペクトラム症の方々と同様な言動をとったり、とっていた時期もあるのだ。
乳幼児は、成長し世の中の色々を少し認識できるようになる頃から、親をてこずらせる時期がある。認知能力が中途半端なため、不安を強く感じるのだろう。その頃本格的になる歯磨きや耳掃除、目薬、シャワーで髪の毛を洗う、歯科治療、小児科や耳鼻科での診察は、見通しきれないため恐怖に感じて抵抗し、親にとっては聞き分けが悪くなった=第一反抗期、イヤイヤ期だ!と捉える。自閉スペクトラム症傾向が強い子も同様だ。幼児期に自分なりに世の中を認識し始めるが、見通しを持ちにくいうえに親を上手に頼れず(親に依存または親を頼らない)、パニックを起こし始める。今までの決まった手順ややり方に安心を求めようとするため、年齢に合った発達課題をこなしにくい。
自己刺激行動や常同行動も同様に、健常発達/定型発達者といわれる層もよくやっていると思う。貧乏ゆすり、指遊び(ペンをクルクル回す、指の関節を鳴らす)、爪噛み、髪の毛を触るなど、誰でも何かしらは経験あるのではないだろうか。

そんなわけで、環境や状況によっては自閉スペクトラム症の方もそうではない方も似たり寄ったりなのだから、互いに過ごしやすいよう工夫していければいいなと思う。
そうではない方は相手に合わす力があるので、無理ない範囲で合わせていく。自閉スペクトラム症の方は、社会のルールを守れるよう幼少期から学んでいく。
私は療育をおこなう際、いずれは先生(私)の指示に従う関係を確立できるといいなと思っている。この考えには、プレイセラピー重視だったり完全子ども寄り添い型のセラピストの中には反対意見の方もいるだろうと思うが、私としては、社会のルールを守りながら生活していかなければいけない世界で、人の指示に従うことができる力はある方が生きやすいと思うし、先生と生徒というパワーバランスが分かりやすい関係性の中で適切な対人距離を知ってもらうのも大事だと思うからだ。
(もちろん、子どものタイプによっては、友達っぽい感覚でしゃべって関係性を築く場合もあるのだが。)


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