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ポケモンスタンプラリー2019全クリした

まぼろしのような 思い出も すこし
──小林幸子「風といっしょに」より

アローラ!!!ぷにあなごだよ。

 みんなもたくさんポケモン捕まえた?151匹捕まえた君も、まだまだの君も、「アローラの夜のすがた」だけ買ってる君も、ポケモンスタンプラリーに挑戦だ。っていう記事。

 なんかデータ類とか再就職エントリ要素も含めたら6,800字を超す長文noteになってしまった。適宜、時間のある時に読んで欲しい。

限りある命と「生きた証」

 俺は半年前にサラリーマンを辞め、伊達や酔狂でしばらく無職をやってたのだけれど、それも金などが尽きたので再就職することになり、気づけば「やり残したことはないか?」というフェーズになった。

(※無職になった時の記事はこちら。併せて読もう。)

 半年もボンヤリ過ごしてしまった影響で少なからず浮世離れが始まっていて、時間感覚が寿命を持つ生命体から乖離しつつあったので、当然「明日から無職期間は有限です。ちなみに、残り半月程度です。」と言われてもしっくりくるはずがない。

 しかし、刻々と「×」がついていくカレンダーを見ていると形のないそわそわのようなものが胸にこみあげてくることに気が付き、「これが、命に限りあるものの焦り……?」と、感受性経由で定命の者の時間感覚を取り戻した。まだ7月になったというのに雨ばかりだったころの話だ。

 それからというものの「新宿ピカデリーで初回上映から終電まで映画を見続ける」「積んでた「呪術廻戦」を読む」「丸1日かけてアニメを見る」など、最初っからこうしてればよかった感じの生活になり、「やはり生命は限りがあるほうが充実するな」という気づきを得た。あと「呪術廻戦」はみんな読もうな。読んでるか。そうか。

 限りある生命を自覚した定命の者が次に何を考えるかというと、「生きた証が欲しい」ということで、「俺は確かにこの夏、ろくに仕事もしなかったが、元気に生きていた」という証が無性に欲しくなってきた。

 本来なら無職期間で小説とかイラストとかを卒業制作的に作るのが何においても一番なことは百も承知だが、無限の寿命を得た気になってフニャフニャになってたのでそういうガッツも起きず、失望に近い鬱屈を抱えていたところ、今から何年も前の夏のことを急に思い出した。

 いつもの通り暑い夏休み。俺は中学3年だか高校1年だかで、9つ下の妹を丸1日どこかに連れ出して欲しい、というミッションを親から下された。ミッション名は「火垂るの墓作戦」。ネーミングに人の心がない。

 予算が二人で3000円くらいだったろうか。映画行って喫茶店で駄弁る?それは俺が大学生以降だったら出せた答えだ。しかし、ネジの外れた中高生の思いついたアイデアは「ポケモンスタンプラリー、クリアしようぜ」だった。

 結果、惨敗だった。まだ小さな妹を連れ、炎天下で熱されたホームからホームを歩く大変さに、撤退を余儀なくされた。思えば、ミッション名の時点で言外の「無茶なケイカークはやめろ」というメッセージをくみ取れなかった俺の負けだ。「山手線全駅クリア」の達成がやっとだった。

 そして何年も月日が経ち、また、あの余白だらけのスタンプ帳が俺を呼んでいる気がした。理由は、それだけで十分だった。

大人だから計画を立てる

いつもいつでもホンキで生きてる。

 と毎週聞いてた、あのころの俺から何年たった?
 咲かそう、咲かそう咲かそう……情熱の花を咲かそう……ホンキとは何だろう。俺は例えば、限界まで石を遠くまで投げるならば、肩をガチガチに鍛える前に投石機の試作品を作ることだと思っている。つまり、計画を立てて、ちゃんと実行することだ。それは数ある俺の苦手なもののうち、ナンバーワンに君臨し続けている。

 ガムシャラにすぐやる元気がなかっただけ、というのも本当だが、とにかく計画を立てることにした。「実際どれくらい頑張ればスタンプラリー全クリできるの?」という感覚を知るためにも以下のルールでExcelに起こしていった。

■今回のスタンプラリーの方針
・スタンプ(駅の改札の外にある)をすべて押す。
・4時36分の始発に乗り、スタートする
・地元駅から1番遠い駅に行き、戻りながらスタンプを押す
・各駅15分滞在予定 (※この目算のせいで後で色々狂う)
・既に押した「川崎」「蒲田」「渋谷」「市ヶ谷」「新宿」を無視

→始発~終電までで、43駅中、29駅クリア可能

1日じゃ、無理なんだな……とうなだれる。
仕方ないので、2日間の計画を、下記の通り立てた。

【1日目】全19駅:23区"外"を回収
休日おでかけパス(2,670円、首都圏全部行ける)
・2日目の「都区内パス」のエリア外の全駅
・千葉→牛久→蓮田→八王子→大船→羽田空港という修羅の道
・始発から夜9時くらいまで乗りっぱなし
【2日目】全19駅:23区"内"を回収
都区内パス(750円、23区内のみ)
・錦糸町→赤羽→西荻窪→東京
・消化試合(と思われたが……)
・所要時間は計算していないが、半日くらいだろう

※43駅中、5駅別の用事で埋めたので、上は38駅分の計画。

「休みの日は子供がスタンプ帳に群がってそう」という思い込みから平日に決行したが、よく考えたら海の日より後にやったので普通に首都圏の小学生は夏休みだった。むしろ休日にやればラッシュの心配もないので、働いてる人でも土日に気合入れてやればコンプはいけると思う。身もふたもない話だが、わざわざ貴重な土日休みをポケモンスタンプラリーに使うかどうかだけだろう。

もちもの

・スタンプ帳(必須)
 今回、スタンプ台設置駅が結構限られているうえ、スタンプ台がある駅しかスタンプ帳を置いていない。またターミナル駅だと部数の関係か駅員に「スタンプ帳ください」をしなくてはならないのが、既にハードル。ひっそり置いてあるのを見つけるか、勇気を出すか。俺は勇気を出した。

・行程表(必須)
 Excelで作った、行く駅のリスト。プリントアウトするのが面倒だったので、スクリーンショットした画像を適当に見返したり、見返さなかったりした。

・アプリ「Yahoo!乗り換え」(必須)
 すべての行動の指針。何時に何番線から乗り、どこ駅で降りるなどの大半の知的判断を担当。Yahoo!乗り換え様が「カラスとかいう白い鳥w」と言ったらカラスは白い鳥で、「エルフの村で異端の邪教が蔓延しているらしい」とこぼしたら兵を率いてエルフの村を焼きに行くが、私鉄を使うルートをサジェストしてきた場合だけは、JRのみ使用するルートを再検索する。

・水分(必須)
 ないと死ぬ。都度買って切らさないようにしていた。1日目は時間も長かったので、結局3リットルくらい何かしら飲んでた。

・公式サイト(任意)
 改札が複数ある駅は、どこを出たところにスタンプ台があるか分からないので、なるべく降りる前に設置場所一覧を調べる。中盤から鼻が利いてきて大体の設置場所が予測できる気がしてくるが、気のせい。

・妖怪ウォッチワールド(任意)
 ポケモンスタンプラリーのお供に妖怪ウォッチのソシャゲとな!GPSで移動距離を測ってくれるのだ。面白いゲームだと思うのだが、今一つ周りでプレイヤー人口が伸びない。伸びない理由もちょっとわかる。(バトルが面倒)

※リリース直後に書いた妖怪ウォッチワールドの記事はこちら

クリアデータ

■ガバガバ計画
 計画を立てるときの条件として設定した「1駅15分滞在」は想定時間がガバガバになる原因になってしまった。「千葉」や「大宮」といった大きい駅ならばともかく、改札が一つしかないほとんどの駅の滞在時間は大体5分程度だった。
 この辺の計画をもっと緻密にすれば、「1日で全スタンプ制覇」も可能かもしれない。実際、俺が力尽きただけで1日目はあと4時間、スタンプは23区内を中心に10数個程度だったので、途中で寝過ごした分などガバガバ要素を加味すると可能なラインだと思う。だれか検証してください。
 以下、数字系のデータ。

■かかった時間:
・1日目……4:50~19:50(15時間)
・2日目……15:30~17:30(2時間)
※別の用事で駅に行って押したスタンプを加味すると、トータル20時間ないくらい。

■かかったお金:
・切符代 3,800円(2日分の周遊きっぷ+ゴール駅までの電車賃)
・飲食 3,000円くらい?水筒買えば節約できた。

■移動距離
・1日目……約450km
・2日目……約 50km

■歩数:
・1日目……約20,000歩
・2日目……約 8,000歩
 →痩せそう。(やせません)

感想1:虚無と馴れ合う

 まず、寝坊して始発を逃してしまった。実はシミュレーションがてら分刻みでスケジュールを立てていたが、開始する前にご破算になり、駅順だけなぞって時間は都度調べることにした。そもそも出発前に2時間くらいしか寝てない(???)ので、以降1日中寝不足が俺を苛んでいた。ネブソークはやめろ。

電車乗る→寝る→起きる→降りる→スタンプ押す→スマホで次の電車調べる→電車乗る→寝る→……

 ↑の繰り返しにより、早々に作業感覚。俺は電車を乗り降りしてはスタンプもたまに押すマシンと化した。ちょっと郊外に出たくらいでは線路際の景色は大きく変わらず退屈だったので、スマホでなんか読んだり、ちょっとゲームやってウトウトしてるともう次の目的駅。思っていたよりテンションが上がる要素がなかったので、虚無感が首をもたげた。

 思えば、結局このチャレンジを一人でやることにしたのは、この虚無感、あるいはテンションが落ちて我に返り「もう帰って涼しい場所で各々のお気に入りの冷たい飲み物でも飲んで解散にしようぜ」ってなるやつに対抗する勇気がなかったから、というのはある。

 例えば3人とかで行ったとして、誰か一人でも「もう帰ろうぜ」って言い出したら、もう「大人が休日にやるレジャー」としてのスタンプラリーは終わりだ。何か常軌を逸した「続ける意味」を、尻でも口でも何処からでもいいからヒリ出して何とか続けるか、帰るかの二択になってしまう。

 一度発生した虚無は人数"倍"ではなく、人数"乗"で増えていく。大人しくてスタミナがあり、ある種の狂気じみた情熱を共有できる友人をもう少し当たればよかったが期間もなく、結果的に一人で虚無と対話し、最終的には虚無と馴れ合うことができた。

 虚無と馴れ合う、というのはルーチンを受け入れて、いいサイクルに持っていくということ。「乗る/降りる/押す」のリズムが出来てくると、じわじわと増えていくスタンプに心を支えられ、何とか進めることができた。叩けば響く。和太鼓的なセラピー効果があるかも。……ないかも。

感想2:全駅制覇の景品

 ところで、全駅制覇の景品、なんだと思う?ちなみに、6駅達成の報酬はパスケース。結構しっかりした素材の、ピカチュウのパスケースね。じゃあ言うけど、全駅制覇の景品はスタンプ帳がぴったり入るクリアファイルでした!おいおい、なんで全駅制覇の景品のほうがショボいんだよ!と思うでしょ?俺も思う。多分なんかマーケティング的ななんかの会議で決まってるんだろう。

 どちらかといえば、東京駅の地下にあるスタンプラリーのゴール地点で恥ずかしげにスタンプ帳を出したときに、係のお姉さんに「お~!!全駅達成ですね!!」みたいに言ってもらった、あの瞬間こそが景品って感じがする。本当にありがとう、お姉さん。

 色々虚無感がどうとか言ってたけど、やっぱりスタンプ帳が全部埋まるのは何とも代えがたい嬉しさがこみあげるものだ。「これをやろう」と決めたことを、十全に成し遂げることの嬉しさ。

 無職になってからというものの、目先の自分のことばかり考えていればよくて、それもすごく幸せだった(友人には「老後みたいだ」と言われた。老後、チョー楽しみっすね……)んだけど、何か気合を入れて計画して何か一つの事を成し遂げるとか、そういうのを全然やってなかったな、とも思った。たかがスタンプラリーなんだけど、そういう意味でやって良かった。

 ああ~~もっと、こういうの、創作とかでやってればな~~~~ちゃんとしたものを計画立てて作ってればな~~~~みたいなことも、考える。本当に反省している。無職になった時の記事でも書いたけれど、やっぱり職のあるなし、時間のあるなしに関係なく、「やった奴だけが成し遂げる」というだけだったのだ。

未来へ

 はい、今日が7月30日で、スタンプラリーの開催期間が8月25日までです。

 途中も書いたけど何だかんだ苦行であることには変わりないので、気軽に「やろうぜ!」とは言い難いものの、今からでもやろうと思えば出来るよ。という話でした。お盆休みの期間の土日とか、どうだろうか。人少ないよ。

 「なんかちょっと気合入れれば、面白い事って色々あるっすね」みたいな風に思ってくれればいいなと思う。

じゃあ、また。

 早々に再退職エントリーを書かないで済むことを祈るばかり。

 以下、どうも記事全体が長くなっちゃったので切り出した雑感を二つ。おまけなので、読んでも読まなくても。

おまけ1:ユーザー層について

 駅によってはスタンプ台の前に列ができていて、どこに行っても俺は浮いていたのだが、俺以外に並んでいた人たちは、大きく分けて、以下の2パターンだった。

 (1)子連れママ
 (2)スタンプ帳複数持ちの外回りおじさん
  ※子供にスタンプ帳を押し付けられている?

 かつて俺がやっていた「火垂るの墓作戦」みたいなことを、ママサンたちは毎日のようにやっているんだろうなあ、としみじみした。サラリマンが複数のスタンプ帳に押してるのは色々と不可解だったが、たぶん子供の分……そうあれかし、と願っていた。

 ただ、俺みたいな大人が乗り放題パス片手に回ってる姿もちらほら。ゴール駅(では全駅達成スタンプを自分の手で押すのだが、俺が押している間にも他のいい大人が全駅達成スタンプを押してゴール景品をもらっていて、なんかショックだった。(ショック受けなくてよくない?)

 思えば「ミュウツーの逆襲」モチーフのスタンプだし、「タケシ」とかポケモンじゃない人間のスタンプが実装されたのは20年ぶり(Wiki調べ)らしい。 リバイバル的な雰囲気→大人がやるのを想定→大人は無茶苦茶だからすぐ全駅制覇とかする→全駅制覇の景品、ショボくしとくか……だったらやりきれないな。俺の妄想だけど。

おまけ2:スタンプ台の駅員コメント

 JRのスタンプラリーをやったことがある人には馴染みが深いかもしれないが、スタンプ台には駅のスタッフからのコメントが書いてある。

 過去に開催された「ガンダムスタンプラリー」や「キン肉マンスタンプラリー」ではスタッフの世代が噛み合ったのか、スタンプになっているキャラのベストバウトを挙げたりしていたが、今回のポケモンは子供向けとして書かれているのを差っ引いても、やや淡白な印象。

 殆どの駅が「ねっちゅうしょうに きをつけよう」とか「とくないパスを つかおう」「ゆずりあってね」みたいな話しか書いてなかったものの、印象に残った駅も何駅かあったので挙ておく。

・牛久駅(ギャラドス)
「さいしょは みんな コイキングです。がんばって、どりょくして、つよいギャラドスに なれるのです。どりょくしないで、しんかは できません。みんなもがんばって、ギャラドスのように つよくなれ!」
・上尾駅(ゼニガメ)
「ゼニガメだけど うみがない あげおえきへ ようこそ!スタンプラリーのはしっこで おりかえしちてんだけど、ちょっとの あいだくらいは えきのちかくを たんけんしてみてね!」
・神田駅(フシギバナ)
「かんだえきのキャラクターはどこからどうみても「フシギバナ」にしかみえない。でもじつは「コピー」のフシギバナ!ホンモノはどこのえきだ?もうみつけたひとも、これからのひとも、スタンプいっこゲットだぜ!」
・東京駅(ミュウツー)
「ポケモン だいすきなみんな、ようこそ、とうきょうえきへ!ルールをまもって、スタンプは あつまったかな?しょうひんを ひきかえたら、おうちにかえって しゅくだいだ!ゆめを おおきくもって、きみならできるよ!」

 やっぱりなんか真面目な人が多いんだな、駅員って……と思った。やれ努力してギャラドスになれだの、宿題やれだの……それでもテキストで書き出すと、ゲームのメッセージっぽくて味わい深いから不思議だ。うるせ~~~~とは思う。俺はでかいコイキングだし、宿題はない。

 また、神田駅の「それミュウツーにも同じこと言えんの?」感が非常によかった。「そういうコンセプトのスタンプラリーだったんだネ」という気持ちと「命にホンモノもコピーもあってたまるか!劇場に行け!」の真ん中の気持ち。

以上です。

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