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おしゃべりスマホ充電器

 WiFi使い放題のカフェに行く。
カウンター席に座ると目の前にコンセントがあり「スマホ充電器」と記してある。
見渡すとカウンター席全部にそのコンセントがついている。
隣の席を片付けている定員に
「これ使ってもいいの?無料なの?」と聞くと
「はい、無料です。でもコンセントが外れやすいので差し込んだらそのまま手で押えていて下さい」と言う。
それじゃ全然お得感ないじゃん、と思ったがバッテリー切れになりそうなので使う事にした。
確かに店員の言う通り、手を離すと充電コードがポロリと外れてしまう。
少し充電できればいいか、と思いコードを左手で押さえ右手でコーヒーを飲んだ。
するとどこからか
「昨日カレー食べたんだ」
と声がする。
驚いて振り返ってみるが誰もいない。
「おとといはラーメン!子供っぽーい」とまた声がした。
誰かのいたずらか?と思いテーブルの下を見るが誰もいない。
気味が悪くなって帰ろうと思い充電コードを抜こうとするが、あんなに外れやすかったコードがなかなか抜けない。
声が「へー木曜日は青山のビッグでパンケーキ!ミーハー」と大きな声で叫んだので、店内にいる客が一斉にこっちを見た。
声は続けて
「思ったよりふわとろ。塩バターキャラメルソース絶品じゃん!」
と私がインスタに投稿したコメントを読み上げた。
私は恥ずかしさのあまりうつむいた。
顔が真っ赤になり汗が噴き出すのを感じた。
恐る恐る顔を上げ辺りを伺うと、その「声」が私のインスタのコメントを読み上げるたび店内の客たちはスマホに向かって忙しく指を動かしメモをとったりしていて、「今度行ってみよう」とか「そうそう確かに味薄かった」とか、謎の声が読み上げている私の投稿にいつしか店内は盛り上がっているのだった。




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