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小倉あん
2021年2月20日 00:20
恋をしなさいと父は言った。君はますます輝いて傷ついた心の痛みも君を輝かせる。恋なんてしなくていいよと母は言った。恋をしたらお前はお前でなくなるお前はどんどん傷ついてそして誰かをどんどん傷つける。西向きの埃っぽい部屋で冬の陽に当たりながらコーヒーを煎れる父を見る震える白い指から香りが立ち登る。けたたましい声鵯が窓ガラスの母の影を横切る庭に向けられた母の鋭い目は