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某総合商社の接待から考えたこと。【イケてる社会人の条件】

こんばんは。あんどーなつです。
私事なのですが、私は最近、接待で使われる高級レストランでホールのバイトを始めました。
今回は、そのアルバイト先で遭遇した某総合商社の接待でのある出来事と、それに関して考えたことを書きます。超個人的な意見です。

私が高級レストランでアルバイトを始めたのは、卒業旅行やら引っ越し費用を貯めたいという現実的な理由に加えて、IT企業以外の社会人のおじさんを知りたいという理由からでした。

私はIT系の企業に絞って就活をしていたので、おおよそ私の知っている社会人はIT系のおじさんです。特にベンチャー気質の会社を中心に見ていたので、チェックシャツにデニム、ステッカーの張られたノートパソコンを片手に11時に出社するような人たちが多いです。

インターンを始めてから、自分の知っている「オジサン像」の偏りが酷いことに気が付き、危機感を覚えました。
というのも、就職後、私が相手にするのは超大企業のおじさんで、超大企業のおじさんは真っ黒なスーツにネクタイ、印鑑のたくさん押された書類を片手に9時に出社するような人たちだからです。

インターン生の私が話すのもおこがましいですが、データ分析会社にデータ分析を依頼できるのは、財力のある超大企業のおじさんです。それも、データ活用に積極的な企業のおじさんは多くなく、「最近AIとかデータ分析ってよく聞くから。うちでもなにかできないかと思って」といって紙媒体のデータをよこしてくるようなデータのリテラシーが高くないおじさんである場合も少なくありません。

これは私にとって衝撃でした。今まで関わってこなかったタイプのおじさんを相手に商売を行う必要があることを知ったからです。
「彼を知り己を知れば百戦殆うからず」ということで、超大企業のおじさんの生態を知るべく、接待で使われる高級レストランでバイトを始めました。

週に2~3回、ホールの仕事をしながら、接待でやってくる超大企業のおじさんの観察はなかなかに充実しています。まだ数か月しか経っていませんが、外資コンサル、総合商社、メガバンク、製薬会社、自動車メーカー、航空会社、官僚、スポーツ選手など色々なおじさんたちを観察できました。

数々のおじさんを観察しているうちに、イケているおじさんとイケてないおじさんの違いが徐々に言語化できるようになってきました。そのきっかけとなった出来事をふまえて、イケてる社会人の条件をまとめようと思います。

前置きが長くなってしまいましたが、今回お話したいのは、就活生の多くが憧れるダイヤのマークの某総合商社の接待での出来事です。

某総合商社の接待は、ある雨の日に行われました。その日は朝から強い雨が降り続いていて、夜になってもやむ気配はありませんでした。

そんな中、2人の外国人の方を連れて、某商社のおじさん4人がレストランを訪れました。来店時は特に変わった印象はなく、いつも通りの接待だなーと私は思っていました。

事が起きたのは、おじさんたちが個室に入ってから10分程度たった後、最初に注文された生ビールをサーブし終えた後のことでした。店の電話が鳴り、たまたま受付付近にいた私がその電話をとりました。

電話をしてきたのは某商社の幹事を務めるおじさんの秘書の方でした。
「今日は雨が降っているので、接待が終わる時間に合わせてタクシーを2台用意してほしい」という内容でした。接待が終わる時間が厳密に分からないため、タイミングを見計らって店からタクシー会社に電話してほしいとのことでした。

電話するくらいなら接待を行う高級レストランたるもの引き受けますが、店の立地上問題がありました。店は某ホテルの中にあり、タクシーを停める場所はホテルの車寄せしかありません。ホテルの車寄せはホテルの管轄で、ホテルは車寄せが狭いことを理由にレストランからの要請でタクシーを待機させることを断っていました。おそらく、ホテルには私の店の他にも複数のレストランがあるので、レストランからのタクシーの待機を引き受けると、あまりに多くのタクシーが並んでしまい、ホテルの利用客が入場できなくなることを危惧しているのだと思います。

そのため、私はその要望を断りました。しかし、秘書の方は譲りません。いかに今回のお客様が大事であるか、雨の日にタクシーを捕まえることが大変かを述べ、どうしても用意してほしいと述べます。

しばらくの間、たぶん5~10分程度だったと思いますが、用意してほしい・できませんの押し問答が続きました。手に負えないと感じたので、私は電話を店長に代わりました。

店長も同じ内容を説明し、電話越しにジェスチャーを交えてまで丁寧にできない理由を話していました。しかし、秘書の方は食い下がらず、いったん電話を切ったうえで幹事のおじさんに、店がタクシーを用意しないということを伝えたようです。

それを知った幹事のおじさんが個室から出てきて、私に店長を呼ぶようにいいました。店長と幹事のおじさんが話始め、ときに秘書との電話を交えて、20分。店長がホテルの人に掛け合って、どうにか2台だけホテルの車寄せにタクシーを待機させてもらうことで話がつきました。

幹事のおじさんは満足げに個室に戻りました。店長は急いであちらこちらのタクシー会社に電話をかけますがまったく繋がりません。接待の終了時間に間に合わせられるか分からないとこぼしながら電話をかけ続け、やっとのことで2台を手配していました。

そんな中、1時間半。某商社のおじさんたちは値の張るワインをボトル3本あけ、よくしゃべり、よく笑いながら、コースのメニューを召し上がりました。デザートまで出して、食後の飲み物をサーブしたら終わりという時、再び幹事のおじさんが個室からでてきました。

受付のあたりにいた私に、
「君なら話わかるよね。これからホテルのバーで飲むことになったから、タクシーのはなしは忘れてくれ。店長にもよろしく」
といって、お手洗いに向かわれました。

私は急いでそのことを店長に伝え、お手洗いから帰ってくる幹事のおじさんを店長と待ちました。店に戻り、店長を見つけたおじさんは、
「これからホテルのバーで飲むことになったから、タクシーのはなしは忘れてくれ。」
と再び話し、個室に戻っていかれました。

店長はその場では「左様でございますか。承知いたしました。」と言っていましたが、バックヤードにもどると一目散にホテルとタクシー会社に電話をかけ平謝りし、受話器を叩きつけるようにして電話を切っていました。

その後すぐに、某商社のおじさんたちは会計を済ませ、ホテルのバーへと向かわれました。私は店長と一緒に、おじさんたちを見送りましたが、謝罪の言葉は一言もありませんでした。

その後、秘書の方からの謝罪の電話があることを、私はほんの少し期待していたのですが、店の電話がなることはありませんでした。


この日、バイトを終えて、もやもやとした気分を吐き出したくなった私は、別の総合商社に就職した先輩に連絡し、事の顛末を話しました。

先輩は黙って最後まできいてくれたものの、
「うん、よくあることだね。」
と特に感情のこもらない返事をかえすだけでした。

この出来事で私が感じたのは、理不尽さでした。自分のワガママを叶えるために、レストラン以外にホテルとタクシー会社を巻き込んでおきながら、巻き込んだ自覚がないところに私は非常に理不尽さを感じました。

この出来事に巻き込んでしまった責任は、店がとるしかありません。この一件で、店はホテルからもタクシー会社からも信頼を失いました。店長が長年築いてきた信頼が、ほんの1時間で壊されるのは見ていて気の毒でした。

加えてショックだったのは、この当事者が総合商社のおじさんだということです。総合商社は、普段、複数の企業をとりまとめてプロジェクトが円滑に進むように心を砕いているはずです。そのため、どこか1社でもワガママをいう会社があると、その影響は複数の関係者に及び、その責任は調整役が取らなければならないことが痛いほど分かっているはずです。

普段、自分たちがされたら最もイヤなことを、相手に無自覚に行っていることに私は驚きを隠せません。もしこの出来事を起こしたのが総合商社でなかったら、このnoteを書かなかっただろうと思います。

総合商社の人からみれば、もっといえば社会人になれば、もしかしたら飲食店では、今回の出来事は「よくあること」なのかもしれません。
ですが、それを「よくあること」で流してしまっていいのでしょうか???

世間知らずの尻の青い学生が何をいっているのか、と思われるかもしれませんが、少なくとも私は、今回の出来事を「よくあること」で流すような社会人にはなりたくありません。

なぜなら、この出来事を起こしたおじさんを最高にイケてないと思うからです。イケてないと思う理由は2つあります。

1. 目の前の相手の気持ちを想像できないから
2. 目の前にいない関係者を考えられないから

1. 目の前の相手の気持ちを想像できないから

某総合商社のおじさんの場合は、明らかに店長に迷惑をかけているにも関わらず、謝罪をしなかったうえに、気持ちを逆なでするような言葉遣いをしたことから、かなり極端な例かもしれません。

しかし、目の前の相手を不快にさせないという言葉に置き換えて考えてみると、それを行える社会人は決して多くないと思います。

・レストランに到着するのが15分以上遅れるのに、同伴者に連絡をいれない
・食べる速さを相手に合わせられない
・5杯以上飲んで、もう飲みたくなさそうにしている相手に対して酒をすすめる

上記は店にいらしたお客様が、接待の相手に実際に行っていたことです。どれもけっして大事ではありませんが、接待の相手がムッとするような行動だと思います。小さなイライラも積み重ねれば、怒りの火種になりえます。

2. 目の前にいない関係者を考えることができない

某総合商社のおじさんは、ホテルとタクシー会社にも迷惑をかけています。それを自覚していないのか、分かっていても無視したのかは定かではありませんが、目の前にいない相手に対する謝罪もありませんでした。

目の前にいないのだから謝りようがない、と思われるかもしれませんが、イケてる社会人ならば人づてにでも謝罪や感謝の言葉を伝えようとすると私は思うのです。

そう考えるのは、接待で訪れた某自動車メーカーのおじさんのとても素敵な言動を目にしたからです。そのおじさんも接待で店にいらっしゃいました。コースの中盤、困った顔で個室からでてきて、店長に話かけました。

なんでも、接待の相手がどうしてもカレーが食べたいらしいので、カレーをだしてもらえないか?と相談しにきたのです。店では、コースでもアラカルトでもカレーを用意していません。店長はキッチンにカレーをつくる材料があるのかを確かめ、特別にカレーを提供することにしました。

カレーを召し上がった接待の相手は上機嫌でお帰りになり、その接待は無事に終わりました。お客様を見送りにいった某自動車メーカーのおじさんは、わざわざ再び店に戻ってきて、店長に再度お礼を言っていました。

おじさんは
「今回は接待の相手の要望をきいてくださってありがとうございました。急なお願に対応してくださったキッチンの方にも、重々お礼を伝えていただけますか?」
とキッチンのスタッフにまで、感謝の言葉を伝えていました。

これがイケている社会人のあるべき姿だと私は思うのです。
目の前にいる相手だけでなく、途中で関わってくれた人を想像し、感謝を伝えられるのは、とても格好いいと思うのです。

飲食店のみならず、お客さんのいるビジネスでは、私たちが人間である以上、キライだ・イヤだと思った相手に懇切丁寧に接することは難しくなります。ですから、相手に、自分に良い印象を持ってもらう必要があります。

そのためには、まず自分から、「相手の気持ちを考え」「見えないところにいる関係者を想像して行動する」ことが必要になってくると思います。これをスムーズに、自然とできることが、イケてる社会人の条件なのではないでしょうか?

「相手の気持ちを考え」「見えないところにいる関係者を想像して行動する」ことは、本来ならできて当たり前のはずです。
当たり前のことを当たり前にできる、これがイケてる社会人になるために最低限必要なことなのかもしれません。

今後もレストランでのバイトは続けるつもりなので、イケてる社会人の条件を逐次アップデートするつもりです。何か思うことがあったら、またnoteを書きます。

~Fin~

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