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WOWOWが救世主 Footballがライフワーク Vol.3

目が覚めたのは、4時15分にセットしたアラームより早かった。テレビの大画面に最高峰のフットボールが戻ってきてくれた幸せを噛みしめた時間は、衝撃とともに忘れ難い記憶になった。Round of 16に突入したチャンピオンズリーグ、グループステージを突破した強豪同士の対戦は、大会の山場だ。当代の欧州各国を彩るクラブが競う8カード・計16試合。かつては同一週に集中開催されていたが、2週に分散された現在、1日あたりの試合数が4から2に縮小されたことで、よりじっくり愉しめるようになった。国際的な開放性と交流に富んだフットボールの魅力を満喫できるという点でも、もっとも胸の高鳴るステージだ。

バルセロナとパリSGの大一番は、4季前にファーストレグを0-4で大敗したバルサがセカンドレグでさらに1点を失いながら6点を叩き出した奇跡の大逆転以来の再戦。2021年に入って国内リーグでは無敗のバルサだけに今回も好勝負を期待したが、カンプ・ノウを独壇場と化したのはフランスの怪童だった。ハットトリックの離れ業は2018年のロシアワールドカップでフランス代表として2得点したアルゼンチン代表戦の再現のようでもあり、当代の王座はいよいよ、キリアン・ムバッペのものとなったのだろうか。

2020年代にもなって、この感動を味わえない危機に瀕する時が来ようとは、思いもよらなかった。放送よりも通信が主要メディアになったトレンドが波及し、スカパーでのチャンピオンズリーグの放送が終了した時、常に時代に乗り遅れてきた私は、最高のコンテンツがテレビのサイズと画質で観られなくなったことを憂いた。メディアが部屋の居間から個人のてのひらへ移行していく様が、私にはレストランがファストフード店へ変容していくように感じられ、チャンピオンズリーグというとっておきの"ご馳走"が、"おやつ"に成り下がったかのような印象を拭えなかった。開始に遅れ「追いかけ再生」するとライブ配信が終了した時点で映像がストップしてしまうし、リアルタイムで観なければ得点シーンにチャプターがつくキーモーメント機能によって試合展開が読めてしまう。いつまでも馴染めないDAZNに決定打を浴びせられたのは、予告も無くチャンピオンズリーグの配信を打ち切られたことだ。

顧客獲得の際は切り札として喧伝しておきながら、手放しても料金を下げないとは、暴挙である。視聴できる唯一の手段となったUEFA.tvのアプリをインストールしてみたものの、英語のみの実況は仕方ないとして、フルタイム放送されるのは一部の試合で、対戦カードとともにスコアまで大々的に表示されるため、ライブ中継を見逃せば結果を知らずに観ることは不可能という、重大な欠陥を抱えた代物だった。フットボール不遇の時代へ逆行するかのように「視聴難民」に陥ったことで、国内での放映権を獲得してくれる救世主の登場を祈る想いで待ち望んでいた。だからこそ、加入者に配信されたメールで放送決定の吉報を受け取ったとき、帰宅途中の電車のなかで思わず握りこぶしをつくった。

開局30周年を記念する特別番組の冒頭、生放送の段取りを変えてまでお礼のメッセージを述べてくれたのは、スペシャルゲストの明石家さんまさん。DAZNに裏切られ、今シーズンの視聴が困難になった日本のファンの一人として、お笑い怪獣の粋な代弁に拍手を送りたくなった。放送はユベントスとのイタリア勢同士の決勝戦をミランが制したシーズン以来18年ぶり、日進月歩にして栄枯盛衰の世界はその間に様変わりしたが、高画質放送という相応しい環境に戻ってきてくれたことを、心から嬉しく思う。個人的には今年で加入5周年。歳月は全体の6分の1に過ぎないが、この恩を忘れず、WOWOWとはずっと契約していたい。

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