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夢はないけど欲ならある

将来の夢は何ですか?
仕事で成し遂げたいことは?

わたしたちは小さい頃から大人になっても、将来どうなりたいかを尋ねられつづける。

一般常識的に考えてあまりに突飛で大きな夢は、子どもの頃なら「まあ!たくさん努力しなくちゃね」程度ですむかもしれない。
でも大人になると「そりゃ無理だよ」「やめといたほうがいい」と否定される。

かといって「夢なんてとくにない」と答えれば
「ないってことないでしょ?」「自分と向き合えばきっと見つかるはずだ」とか励まされる。
まるで夢を持たないことが良くないような言い方である。


眠っているあいだに夢を見る日もあれば見ない日もあるように、将来の夢だってあってもなくても良いはずだ。
それに将来の夢に正解も間違いもないはずだろう。
人を大量に傷つけたいなど、サイコな夢だとちょっと問題ではあるが。

夢を持つほうが好ましいのかもしれない。
だからといって「持たないからダメ」とは言いすぎじゃないか。未だにそういった風潮である気がするけれど。


川下り型のフォレスト・ガンプの夢は

先日、映画『フォレスト・ガンプ』をはじめて観た。
1994年の作品だが、未だに色褪せない名作として知られる。

※ここから先は映画のネタバレを含みます。未視聴の方はご注意ください。


キャリア形成の方法として2パターンがあげられる。
自分が目指す夢・目標に向かって行く「山登り型」
明確な夢・目標はないけれど目の前のことに真剣に取り組みながら力をつけていく「川下り型」

フォレスト・ガンプは川下り型だろう。
大学生の彼はジェニーから将来について聞かれたとき、「ぼくはずっとぼくだよ」と答えている。

フットボールも
軍隊も
卓球も
エビ漁りも
とくに目指したわけではなく、まじめに川を下っていたら行き着いた。

エビ漁りは夢じゃないか?と疑問を抱くかもしれない。
わたしは違うと思う。
エビ漁りはバッバとの約束だから実現させたと解釈した。

ジェニーと一緒になることは?
ジェニーとともに在ることは、フォレストにとって夢ではなく欲求に近かったのではないか。

フォレストにとってジェニーは逃げることを教えてくれた恩人であり、心の支えである。
ジェニーが殴られる姿、悲しむ姿はフォレストにとって耐え難い。
だから夢というよりは「ただ一緒にいたい、自分にとって大切な存在を守りたい」という欲求と表現したほうが、わたしはなじみやすい。


ところで夢と欲って何が違うのだろう。
これはあくまでわたしの考えだけれど、
夢はなかなか手が届かないもの、理想。
欲はもっと差し迫った、今手に入れたいもの。

「モデルのような体型になりたい」が夢なら、
「でも食べたい」は欲だろう。


走りたいから走るし、つかれたから家に帰る。
フォレストにあるのはきっと夢じゃなく「今」だけだったし、欲求に忠実だった。
フォレストはほかの誰でもなくフォレストで、激動の時代のさなかにいても、シンプルに自分の大切なものを大切にしているだけだったのではないか。

欲求に従ってみるのもいいじゃない

フォレストについて「本当はこうしたかったのに、うまくいかなかった」という描写が(少)ない。

フォレストの前に姿を表しては消えていくジェニーに再会するたび「一緒にいよう」と告白するのだが、ぜんぜん実らない。

それでもフォレストは「うまくいかなかった」「失敗した」とは言わない。
(心のなかで思っていたかもしれないけれど)

…フォレストの欲求はシンプルだし、欲求に従って一瞬一瞬「やりきっている」からじゃないか。


わたしたちはどうだろう。
「失敗してしまった」
「最近うまくいかないことばかりだ」

これって裏返すと「本当はこうしたかった」があるからこその発言だ。
でも人に気を遣わなきゃいけないし、立場とか、自分をぐっと抑えなきゃいけないときもある。

3年走り続けて、テレビでも取り上げられ、フォロワーも増えたフォレストは突然「つかれたから家に帰る」と言って走るのを終わりにした。
わたしなら「そろそろ走るの終えたいけど、フォロワーどうしよう」と多少は考えてしまう。


たとえ夢がなくても、欲求にはもうすこし正直に従ってみても良いのではないか。
ダイエット中でも、たまには食べたいものを思い切り食べてみたって1日でリバウンドはしないだろう。

親の目があるから、周囲の目があるからと抑圧してばかりではなく。
ひとりゆっくりする時間がほしいなら、ひとりで出かけてみる。
出かけるのが難しいなら、お風呂でちょっとゆっくりしてみるとか。

夢がなくたって「幸せでありたい」という欲求があればじゅうぶんではないか。
「不幸でありたい」と欲する人は稀なはずだ。

わたしも幸せでありたい。
「ずっと幸せでありたい」という夢でもあり「今幸せでありたい」という欲求でもある。

幸せはその時々によって変わるだろう。
あるときは穏やかであることが幸せかもしれないし
またあるときは刺激的な毎日が幸せかもしれない。

今のわたしにとっては
まったりとリラックスして晩酌を楽しむ時間が幸せだ。


夢を必死に探すより
目の前の幸せを懸命に追いかける日々、悪くないんじゃないか。
今日も晩酌が楽しみだ。

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