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ほころんで繕っての繰り返しでも

頭にラップを巻かれた状態で今この文章を打っている。
2ヵ月とすこしぶりに美容院にやって来た。
カット・ブリーチ・カラーの3時間コース。

きれいなショートヘアを維持するためには本当はもっと頻繁に手入れすべきなのだろうが、いかんせん髪を切ろうが染めようが、お披露目する相手がいない。
出かけるといっても近所のコンビニかドラッグストアが大半だ。
おしゃれする張り合いがない。


「よかったらどうぞ」
そう言って目の前に差し出された2冊のファッション誌。

服にも流行りにも興味がないため、いつもはやんわり会釈して雑誌には目もくれず、スマホでクライアントへの連絡やWeb記事を読んで過ごす。

ただ今日はちょっと手に取ってみようという気になった。
noteに書くネタが見つかればラッキーだ。

バサッバサッと大雑把にめくっていくと、スキンケアの特集に目が留まる。

わたしは化粧にも興味がない。
ところが今は乾燥がひどい季節だ。以前の赴任地は海が近かったためにそこまで気にならなかった。
ここは山のほうが近く、風の切れ味の鋭さったらまるでかまいたちだ。

残念なことに顔の皮膚は乾燥によりウロコのような模様が浮いている。
メイクやスキンケアにまったく興味のないわたしでも「これはさすがに」と感じるレベルだ。

そういうことで最近は朝晩のスキンケアを多少ていねいにおこなっている。
その甲斐あってか、肌の調子はこましにはなったと思う。
結果が出ると嬉しくて、継続しようと思える。

しかし。今度は部屋がガサガサだ。
ブラックフライデーで買った卓上加湿器の空き箱が、LDKのテーブルから申し訳程度に本棚の上によけられ、もはやホコリをかぶりつつある。

仕事も契約・交渉がうまく進まない。
なんかこう、歯車がちぐはぐで噛み合っていない感じがある。
あるいは滑りの悪くなったガラス戸のように、布をくってしまったファスナーのように、動きがぎこちない。


なにかがうまくいけば、なにかがうまくいかない。
こっちの綻びを繕えば今度はあっちがまた綻ぶ。
永遠に完成しないサグラダ・ファミリアだ。

ぜんぶがうまくいくことなんて、きっとないんだろうなあ。
やるせないものだ。
と同時に、もし「完璧」が訪れてしまったら、それはそれでちょっと寂しかったりもするんだろう。
「完璧」になったら、あとは綻ぶだけだから。

「今の完璧を失いたくない」と、逆にしんどくなるかもしれない。


いい感じに色が入りましたねー。
美容師さんから声がかかって顔を上げる。

いやーこんな色になるはずじゃなかった。
思ったよりも、だいぶ暗い。
きっと一瞬、顔がひきつってしまったはずだ。

でもまあ、髪色は時間とともに見事に抜けていくし、ここがうまくいかなかったぶん、きっとどこかがうまく動きはじめるはずだ。


今年はじめての「良いお年を」を交わして美容室を後にした。

12月とは思えないぬるい風に、
切りたての軽くなった髪がそっとそよぐ。
ガラスのドアに反射して映る自分の表情は、心なしか明るく見えた。



今日も読んでくれてありがとうございます。
あなたのちょっとした綻びは、なんですか?

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