「やらなきゃ」は伝染る
わが家のゴミ出し担当は夫である。
出勤のついでにゴミ袋を指定の場所に放ってくるだけではなく、ゴミ箱からゴミを集めるところからだ。
ただでさえ忙しい平日の朝、たいして多くないとはいっても複数のゴミ箱をまわってゴミをまとめ、口をしばって集積所に持っていく。
それから自転車置き場へUターンして、自転車に乗って出勤するのだ。
本当は新しいゴミ袋をゴミ箱に設置するところまで所望したいのだが、それは酷だろう。
飲み会の翌日となると寝坊しがちであり、ゴミ出しが怪しくなる。
不機嫌そうに支度をしながら「ゴミ出さなきゃ」とイラついた口調で誰に向かって言うでもなくつぶやいている。
こうした出勤間際の夫がいう「◯◯しなきゃ」が癇に障ることは、けっこうある。
それは「余裕がないから代わりにやっておいてほしい」ということかな?
それなら「ごめん、やっといて」って頼めばいいのに。
わたしもわたしで意地悪なので、頼まれなければやっておかないこともある。
それに「察してくれよ」はずるいとも思う。
コミュニケーションで自分が省エネしたぶん、相手の消費エネルギーが増える。
面倒でもちゃんと言葉にして伝えたほうがいい。
元凶は自分だったかもしれない
時計の針はまわって、時間は日が暮れたあと。
仕事でPCに向かうわたしは徐々にそわそわしはじめる。
夕飯つくらなきゃ
いやその前に洗いものからしなきゃ
ちょっと待って、クライアントに返信しとかなきゃ
やば!たまご買いに行かなきゃだった!
え、今日何日だっけ?あの番組録画しとかなきゃ!
頭のなかは、しなきゃ、やらなきゃ、must、have toが途切れることのない列をなして行進している。
なんだかもう、Webサイトを開いたときに表示され、消してもまた別の場所に表示され、スクロールしてもずーっとついてくるうっとうしい広告みたいに。
ああ、ひょっとして元凶は自分だったのかもしれない。
そういえばうちの母親も「しなきゃいかん」をよく言う人だ。昔から。
打ち消そう、やらなきゃを
正直、やらなきゃいけないことなんて、人生においてそうはない。
極論、仕事をしなくたって今すぐにどうこう困ることはない。
カードの支払日までにお金が入っていればいいのだ。
あるいは最悪、食費が尽きるまではなんとかなる。
いや食べていけなくなったら最悪、実家に戻る手もある。
頭を下げてお金を借りたらいい。
そんなこととんでもない!と理性が働くから、やる気が起きなくても働くのである。
夕飯つくらなきゃ
いやその前に洗いものからしなきゃ
ちょっと待って、クライアントに返信しとかなきゃ
やば!たまご買いに行かなきゃだった!
え、今日何日だっけ?あの番組録画しとかなきゃ!
こんなのは取るに足らないことである。
ごはんをつくらなくたって、コンビニでなんとかなる。
洗いものしなくたって、冷食でなんとかなる。
クライアントへの返事も別に、今すぐする必要があるだろうか。
たまごがないなら、たまごを使わないものをつくればいい。
録画を忘れたってだいたい配信で観られる。
つい口をついて出る「◯◯しなきゃ」は、たいていやらなくてもどうにかなる。
めちゃくちゃ乱暴なことを言えば、大ケガしたり捕まったり、命がなくなったりしないなら、そんなに切羽詰まってやらなきゃいけないことなんてない。
「やらなくてもまあ、死にゃあせん」というやつだ。
とっさに出てしまう言葉を言い換えるのはなかなか難しい。
でも、それって本当にやらなきゃいけない?という問いかけは今後自分にしていきたい。
あ、ごめん、そろそろ晩酌しなきゃ。
これは必要。
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