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フェルメール、絵が上手い『フェルメールと17世紀オランダ絵画展』

芸術の秋なので美術館に行ってきました。
開催を知ってからずっと観に行きたかった。
『フェルメールと17世紀オランダ絵画展』

やっぱり事前に少しだけでも知識を仕込んでおくと、解説のパネルや作品自体の理解の仕方や楽しめる深さが全然違う。
そう思ってざっくりと以下の書籍のオランダ絵画あたりを読んでから今日は向かいました。

こちらの本、2年ぐらい前のちくま新書セール時に購入したもので、すでに読んだことがあるものなのですが、特に海外の絵画を観ることが好きな人はこの本を読めばさらに美術館が楽しい場所になるし、美術館とか楽しみ方がわからない…という人もぜひ読んでみてほしい。
もともと美術館が好きなタイプだったのだけど、こちらの本を読んでから次の特別展はいつだろう?と思うようになった。
今回のオランダの絵画に関して言えば背景に海洋図が描かれている絵がけっこうあるのだけど、それはオランダが海外貿易で経済を築いて、それに従事している一般市民も裕福になっているからだとか、その前提があってお金を持つようになった市民が画家に依頼し、家の中に絵を飾るようになったから、描かれている場面もマリア様やイエス・キリストのような宗教画ではなく、ありふれた風景を描くようになったとか。
こういう知識を得るだけでも美術がぐんと楽しくなる。

ーーーーーーーーーーー以下展示物について思いきりネタバレありますーーーーーーーーーーーーー

今回の目玉は言うまでもなくヨハネス・フェルメールの『窓辺で手紙を読む女』だ。

絵に描かれたただの壁の下にキューピッドが描かれていることがわかり、長年修復していてそれが完了したのが2021年9月。
ようやくフェルメールが描いた本来の姿を今年、日本で公開したという流れだ。
この『窓辺で手紙を読む女』の解説の展示を読んでいてとても胸が苦しくなった。
本来キューピッドが描かれていたであろうところに塗り重ねてキューピッドを消したのはどういう目的か。
説は色々あるらしいが解説パネルに書かれていたのは、現在この絵が収蔵されているドレスデン国立古典絵画館に収められた当時はフェルメールの絵に美術的な価値がなく、当時他のすでに有名で価値がある画家の作品に見せるためではないかという説が有力らしい。
もう、これはあまりにも悲しいと思う。
私は二次創作とは言え、一応創作をしている立場である。
もし自分が同じような経験をしたらと思うとお腹のそこのほうに大きい氷をごろんと詰め込まれた気分になる。
もちろん当時はすでにフェルメールは亡くなっているのだけど、画家として創作者としてこれほど悲しいことってなくない…?
二次創作に手を出したために思わぬダメージを喰らった。

とはいえこのキューピッドが現れたことで絵の意味が違うものになったらしい。
今回のように絵の中に絵を描く手法は画中画と言われていて、その描かれている絵に画家たちはメッセージを込めたのだそう。
今回の『窓辺で手紙を読む女』の画中画であるキューピッドは足元で仮面を踏みつけている。
この仮面は欺瞞などを表していて、キューピッドは愛の象徴。
つまり偽善や嘘なんかに打ち勝つのは誠実な愛というメッセージが絵に加えられたのだと解説パネルに書かれていた。
その意味が加わることで女性が読んでいる手紙は明らかに恋文だとも。
そう考えて絵を見ると色々と想像が膨らむ。
オランダは貿易が盛んだから、もしかしたら夫や恋人がちょうど仕事で滞在している国から手紙を送ったのだろうかとか。
ちょっとひねくれた考え方をすると、この女性は仕事であまり家にいない男性の浮気を疑っていて、そこに手紙を受け取って嬉しいというより安堵しているのかもとか、逆に女性側が他の男性といい感じになっていて寂しいからと気持ちが流れそうになっているところに手紙がきて、やっぱりこの人じゃなきゃと確信するとか。
さらにさらにひねくれると、もしかしたら、この人女性自身が誰かの浮気相手で忍ばなければいけない恋愛をしているとか!
これだけ1枚で色々考えることができるというのがフェルメールの絵のすごさだと思う。
彼の射程範囲の長さと広さが痛いほどわかる。
もう当たり前で、何を言ってるんだっていう話なんだけど、絵が上手いんだよな…!
これだけ見る側に妄想の余白をくれるのって、描いた場面に過不足がないからだと思うんだよね。

そしてフェルメール以外にも同時代のオランダ画家の絵が展示されていて、静物画の展示もあった。
果物についた水滴とかがリアルで写真かな?と思うぐらい。
絵画のツヤや水滴って光が集る部分に白や明るい色を持ってきて描いていることが多いから、それを確認したくてぎりぎりまで近づいて観て観たんだけど、あまりにも絵が上手でなかなか自分の脳がそれを絵だと認識してくれなかった。
どこにどういう絵が使われているというのことがわからなくて焦った。

結局ポストカードやクリアファイルと図録も買ってきたのでまた眺めてニマニマします。
他のグッズは買えないけれど、上記に貼ったリンクで図録を取り扱っているネット書店がわかるので図録だけでも欲しい人はぜひ。


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