見出し画像

物語を読み解くカギはいくらあってもいい『物語のカギ/渡辺祐真』

私は物語が好きだ。
それは物語によって救われた経験や励まされた経験があるから。
こんな気持ちを抱えているのは自分だけではないということを知ることができたから。
それは自分がそこにある物語を読み解いたから得られたことでもあり、読み解くためのカギを持っていたからでもある。
でも世の中にある物語の数は膨大で、その物語の数だけカギが存在する。
私はもっと物語を読みたい、読み解きたい。そう思ったからこの本を手に取った。

読書という旅を豊かにするガイドブック。物語の基本的な仕組みから、もっと深く読むための視点、自分の人生経験を投影してみる個人的な方法、能動的な読みの工夫まで、物語をもっと味わえるようになる「カギ」を紹介する。【「TRC MARC」の商品解説】
本の魅力をわかりやすく伝える書評動画で人気のYouTubeチャンネル「スケザネ図書館」。
その配信者である著者が、文学だけでなくマンガや映画まで幅広い「物語」へのあふれる愛を語りながら、より深く味わうための目のつけどころ=「カギ」をわかりやすく解説します。
小説・詩歌・マンガ・映画など幅広いジャンルを対象に、『走れメロス』、『アンナ・カレーニナ』といった名作文学から『呪術廻戦』(マンガ)、『ドライブ・マイ・カー』(映画)など近年の人気作まで、多種多様な作品をピックアップ。
それら具体例を紹介しながら紹介する「カギ」は、「語り手を信頼するな!(『日の名残り』)」、「比較・変遷をたどれ!(歌人・俵万智の作風の変化)」、「元ネタを探ろう(『ピーターパン』と『約束のネバーランド』)」など。
著者自身が物語の面白さに目覚めた経験談を交えながら、様々な角度から「物語」の楽しみ方を案内します。
ふだんあまり本を読まない人や、まだ読書に慣れていない中高生にこそ読んでもらいたい1冊です。
【目 次】
序章 なんで物語を読むのか? 物語を味わうってどんなこと?
はじめに
第一章 物語の基本的な仕組み
第二章 虫の視線で読んでみる
第三章 鳥の視点で読んでみる
第四章 理論を駆使してみる
第五章 能動的な読みの工夫
おわりに【商品解説】

honto商品紹介

渡辺祐真さん(以下スケザネさん)は、じゃあ物語とは何ぞや?というところから解説をしてくれている。
なるほど物語ってこういうものか、そう理解させてくれたうえで、すでに世の中で親しまれている名作に触れつつ物語を読むためのカギを解説してくれている。
そのなかで私はこれは…!とツボを突かれたところがあったのだが、多いので2つだけ紹介させてもらいたい。

わからないことに耐えようーネガティブ・ケイパビリティ

『物語のカギ』p41

序章のところなのだけど、ここではわからないことに耐える能力=ネガティブ・ケイパビリティについて書かれている。
人間はわかりたがる生き物だが物語を読み解くためにはわからないことに耐え、考え抜くことが大切であると説いているのだけれど、正直ここは読んでいて一番「痛い痛い!」となりました。
私は自分で言うのもあれなのですが知的好奇心がかなりある。
すぐにネットで調べてしまうし、知りたいことが載っている本を探して読む。
これどういうこと?っていう疑問を放っておかずにいられないのである。
だからこそ物語に関してもこれってどういうこと?と思うと前のページを読み返す。
そしてこういうことか、なるほどね!と着地点に降り立ちたくなるのだ。
わかったふりをしてはいけないというスケザネさんの言葉がめちゃくちゃ沁みました。
物語に対して傲慢になってはいけない。
わかることを諦めず、わかったふりにならないように。
もっとネガティブ・ケイパビリティを育てていこうと思いましたね…。

もう一点は第二章から。

いや説明してくれればいいじゃん!

『物語のカギ』p137

なんで文学はストレートに説明してくれないのか。
これに対する答え(物語のカギの理由)をここでは解説している。
いまはわかりやすいことが比較的求められている。
わかりやすいことが正義で、それに人は食いつく。
これはまあ現代人が忙しいとか娯楽コンテンツがたくさんあるとか色々理由はあると思うのだけど文学にまでわかりやすさが求められていることに暗澹たる気持ちになることがある。
私は趣味で二次創作の小説を書いている。
そのため趣味を創作としている人たちの悩みや疑問を解決するためのサイトとかにも出入りをしているのだけれど『もっと自分の小説を読んでもらいたい、どうすればいいか』という相談をけっこう目にする。
すると回答は決まってこうだ。
『平易な文章でわかりやすい内容にする』
せ、切ねえ…。
時代の流れだとわかっていてもわかりやすさが求められるの、切ない。
先述した通り、私はわからないことがあるとわかりたくなってくるタイプである。
そのために色々と調べたり、考えたりすることが大好きなのでこういう『わからない文学は求められない』という事象を目にすると胸が苦しくなる。
もっとわかりづらいことに寛容になってほしい。
これもある意味ではネガティブ・ケイパビリティへの耐性の低さなのだろうか。
スケザネさんがここで書いていたように、自分のことでさえ正確に理解できないとかわかりやすさに慣れてしまうと人の気持を推し量ることは難しいというようなことが知られてほしいと思った。
物語を読み解き、わからない感情を想像することは他者へのまなざしを優しいものにするのだと思うから。

こういう本の読み方に関する本を読むと、読書欲みたいなものがむくむくと首をもたげてきますね。
いま図書館から借りた本が6冊あるので早速取りかかります。
本を読みたいけど読み方がわからないとか楽しみ方がわからない人はぜひ手にとってみてください。


この記事が参加している募集

読書感想文

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?