見出し画像

映画館と映画と2021年

2021年は本当にたくさん映画館に足を運んで、今までにないくらいいろんな映画を楽しんだ。
スマホ依存気味のぼくには丁度いいデジタルデトックス時間であり、
現実から離れられる瞬間でもあったわけです。

たぶんこんなに映画を観る一年はこの先もなかなかないんじゃないかと思うから2021年は映画で振り返る。

といっても2021ベスト10みたくまとめてしまうのももったいないので、こんな映画たちを観て過ごしましたよって感じで書こうかと。
絞りきれないんですよ。はい。

画像1

重なる

「それでも生きていく」みたいな映画がとても好きなんですよ。
2020年は「mid90s」 や「minding the gap」にとても救われた一年で、その流れがそのまま続きまして。
少しでも自分と重なるところ(重ねたいところ)があると没入せずにはいられなくなって、その状況でもなんとか生きていく筋書きに心を強く打たれるわけです。

おひとり様上手の独身の恋愛を描く「私をくいとめて」では、おひとり様上手でもアラサーでも、その事実を自虐しなくたって最高に楽しんで生きていけることを改めて教えてもらい。

主人公が自ら望んで流浪の生活をする「ノマドランド」では、周囲に要らぬ心配されながらも”自分はこれでいいんだ、この生き方を選んだんだ”とする考え方に安堵させてもらい。

ヤクザから足を洗ってもなかなか剥がれないレッテルにもがく「ヤクザと家族」「すばらしき世界」では、人を見るときに無意識に通してしまうフィルターを感じて。そのフィルターが自分を含む誰かを傷つけてきたのかもしれないと気づいて。

突発性難聴を患うもなんとか前に進もうとする「サウンド・オブ・メタル ~聞こえるということ~」では、”こんなはずじゃなかった”現状をなんとか進めなきゃって行動していく主人公を見て自分も人生を進めなきゃと急ぎたくなって。

お互いに素直になれない3兄妹がトラブルを越えて手を取りあう「ローラとふたりの兄」では、会話の多くない自分と兄が将来主人公たちと同じ状況になるかもなと期待と不安を抱えたり。

自分と完全に一致する設定の作品は自分が題材にならない限り生まれないけど、
部分的に自分と重ねるように解釈すると映画の伝えたいことが自分に向けられているように錯覚できるんですよ。都合のいい見方です。おすすめ。
多くの映画にありがたいパンチラインをもらいました。

画像2

確かめる

人に期待しないからなのか怒りをあまり感じることのない性質でして。 
自分にちゃんと怒りの感情が備わっているか確かめるように社会問題を取り扱う作品を観るんです。
問題とされてる事象にちゃんと違和感を憶えて、適切に怒りを感じられることになんとなく安心してしまうんです。
実話をもとにした作品も、ノンフィクションも、フィクションも問題をとても丁寧に取り扱う作品が多くて、まんまと憤慨しながら劇場を後にしてました。

ジェンダーの問題を取り上げながらエンタメ要素もしっかり持つ「プロミシングヤングウーマン」「最後の決闘裁判」「ラストナイトインソーホー」。
こういった主題の作品がドキュメンタリーやドラマのジャンルだけでなく、コメディやホラーの枠でも作られることは理解の後押しになるのではと楽観的に希望を感じております。
3作とも時代設定は違えど、近い問題を扱いつつぞれぞれの事象は現代にも通ずるところが殆どで、やるせなさを感じたり。

コレクティブ 国家の嘘」はルーマニアの医療汚職事件を追いかけたドキュメンタリー。身近にも似たような問題があり得るなと。
ドキュメンタリーなのに、インタビューのシーンが無かったな。当事者の生活の近くから撮り続けたからこその臨場感だったのかな。

モーリタニアン 黒塗りの記憶」「ダーク・ウォーターズ 巨大企業が恐れた男」も、巨大な闇と戦う実話をもとにした作品。
MARVELシリーズでハルクを演じているマーク・ラファロが孤独に大企業に立ち向かう姿はシンプルにかっこよくて、これも立派な英雄だなと。被害を受けた人々からすると本当に英雄なんだろな。

怒りを遥かに越えて呆れたドキュメンタリー「SNS -少女たちの10日間-
3人の女優が12歳の少女に扮してSNSを開設/運用する実験。チェコの映画ではあるが、作中で起きていることはSNSが普及している国であれば発生することだと容易に想像できました。
とにかく酷な描写が多くて、割とよくいるであろう男子大学生が聖人に見えるほど。SNSのDMなんてのは匿名(厳密には匿名でない)かつ閉じられた会話なので想像だにしないことが多く起こっているんだなと。

世に溢れている問題を映画を通して感じ取れるのは間違いなくラッキーな環境なので、これからもこの環境を活かして諸々に怒りを憶えていきたいですね。
もちろん、制作側の視点に偏った撮られ方をしてることを忘れないようにしながら。

画像3

思いを馳せる

ほぼほぼドキュメンタリー作品の主役にはしばらくハマる。裏側というか、その対象の周辺の諸々を知るとどうしても気になってしまって、鑑賞後もしっかり興味が続くんです。

特に印象に残ってるのは公立中学校の2年生の3学期に密着したドキュメンタリー「14歳の栞
35人クラス全員に丁寧に密着している。誰かを主役にする作り方でなかったのはとても嬉しかった。
自分のあの頃を思い出させられるし、当時教室にいたあの子の裏側を覗いてしまった気もしたりして。
おそらく公立の学校だけど、この映画の制作にあたって多くの関係者の良心を前提にした努力があったんだろうなと想像できる。とにかく関係者全員にありがとう。

言わずとしれた売れっ子シンガー、ビリーアイリッシュの密着「ビリー・アイリッシュ 世界は少しぼやけている」もこれもこれで素敵なドキュメンタリーだったな。憧れのジャスティン・ビーバーと電話つながった瞬間はひとりの少女だったし、家族に支えられながら生きている感じはライブや音源だけではわかり得ないことだったし、彼女も人間なんだと改めて認識しました。観賞後しばらくBad Guy feat. Jastin Bieberを無限ループ。

人メインのドキュメンタリー以外に、美術館・絵画にスポット当てたドキュメンタリーも面白くて。「ルーブル美術館の夜 ーダ・ヴィンチ没後500年展」誰もいないルーブル美術館をダ・ヴィンチ展に尽力した学芸員さんにプライベートガイドをしてもらうような作品で、オンライン展覧会とは配信とはまた異なるとても贅沢な鑑賞体験でした。世界最高額で落札された作品を追いかける「ダ・ヴィンチは誰に微笑む」はもうドキュメンタリーと思えないくらい関係者たちの欲が露わになっていて、まさしく”事実は小説より奇なり”な作品でした。

ドキュメンタリーじゃないにしても、もしかしたらこういう世界は実在するのかもなと思いを馳せるのも楽しくてですね。

恋愛を越えた繋がりを感じた「少年の君
純度の高い愛情と恋愛が似ているようで異なっていると思ったり、同じ直線上にあるのかもと思ったり。この関係を表現する適切な言葉はまだないのかもなと思ったり。

平野 啓一郎さんの「分人」という概念を知ってから、場ごと相手ごとに変わる自分を許容してきて、けども変わるそれぞれの自分間で矛盾が生まれたらどうなるんだろう。そんなことを考えた「由宇子の天秤
プロとして職を全うしようとする主人公と家族の過ちを隠しきろうとする主人公、分人が真反対の行動をとってしまうときの葛藤はたぶん自分にもあるんだろうな。

自らの体を提供して、芸術作品となった男のお話「皮膚を売った男
おもしろ設定の作品だなと思っていたら、事実に基づいた脚本のようで。芸術家ヴィム・デルボアが2006年に発表した「TIM」という作品がもととなっているそうな。
タトゥーを芸術作品としたら、その売買は人身売買にならないのか。難民や貧困に苦しむ人を作品に使うのはどうなのか、人権はどうなるのか。
アートの悪い意味で曖昧なところと、いろんな制度の隙間を縫っていける自由さの両方を実感して。これからはNFTに始まるデジタルアートがこうやって現行制度などをあざ笑うように話題をかっさらいそう。

画像4

浸かる

上に書いた作品たち以外にももちろん最高の映画はたくさんあって。心地よく世界に浸るのもやっぱり楽しい。

関わる人たちへの敬意はもちろん、職として映画製作に関わる人全体への敬意と賛美が溢れてて心地よかったのが、「映画大好きポンポさん
表からは見えないところで作品を支える数々の職業。演者だけでなく、他のどの職も必要なんだと改めて実感。たぶんこの作品自体も作中で描かれた方法で作られてるんだろうな。そうであってほしい。

”偶然を描く”ってすごい難しいことなのではと「悪なき殺人」「偶然と想像」を観て気づいた。基本的に人為で意思を持って作られる作品の中に、偶然を忍び込ませて、さも「恣意的ではないですよ」って顔をさせてる。
現実にありえそうでありえない絶妙な偶然を見せてくれるから劇場を出てからどこかにそんな偶然ないかなと期待してしまってみたりしちゃったりして。

たぶん2021年に観た作品の中で最長上映時間だった「ドライブ・マイ・カー
いつのまにか3時間が過ぎていたことにただただ驚かされました。SFやアクションみたいに大きく画面が動いたり、どでかい特効があるわけでもないのに、思いのほか早くエンドロールが流れてきたと思ったら3時間経ってた。不思議。どっぷり引き込まれてたんでしょうね。この作品を観るために90分ドライブして劇場へ行った体験も併せてよかったですね。

画像5

映画館たち

多拠点生活をしているので、訪れる映画館の数も必然的に増える。前に住んでいたところの最寄りが109シネマズだったこともあり、今もメジャーどころはだいたい109シネマズで観るようにしています。ポイントが貯まる貯まる。

ミニシアターだと、名古屋の伏見ミリオン座によく通ったな。ミニシアターの中でも比較的スクリーンの数が多いのでほとんど困ることはないかな。
リニューアルできれいになったし、アクセスも良いし環境は○。
なにより伏見ミリオン座の1階トイレにはこれまで上映してきた作品のポスターやら記事やらの切り抜きがびっしりと貼ってあって楽しい。(男子トイレだけかも)
トイレの壁だけでしばらく楽しめそう。

伏見ミリオン座1階トイレの壁の一部
見覚えのある作品もいくつか

あと印象的だったのは長野県塩尻市にある東座
外壁にある「東宝映画」とか「松竹映画」とかの看板から時代を感じる。ピンク映画の劇場が隣接している。どうやら映画通には知られた劇場みたい。
劇場内は自由席で、小さいスクリーンに音のこもった古いスピーカーの雰囲気がなんとも。平日昼に知らないおじちゃんとスクリーンを独占してみた「アナザーラウンド」はしばらく忘れないだろうなあ。

東座1が通常の劇場で東座2がピンク映画の劇場

2021年に映画館で観た映画一覧

すべてのタイトルに公式サイトへのリンクを貼ってます
気になる作品はぜひなんとかして観てみてくださいな

01. ルーブル美術館の夜 ーダ・ヴィンチ没後500年展
02. 私をくいとめて
03. 花束みたいな恋をした
04. ヤクザと家族
05. すばらしき世界
06. あの子は貴族
07. シン・エヴァンゲリヲン劇場版
08. ノマドランド
09. 14歳の栞
10. 21ブリッジ
11. ミナリ
12. 街の上で
13. るろうに剣心 最終章 the Final
14. SNS -少女たちの10日間-
15. ジェントルメン
16. くれなずめ
17. アメリカンユートピア
18. クルエラ
19. るろうに剣心 最終章 the Beginning
20. ベルエポックでもう一度
21. Mr.ノーバディ
22. ビリー・アイリッシュ 世界は少しぼやけている
23. JUNK HEAD
24. ゴジラVSコング
25. ライトハウス
26. ブラックウィドウ
27. 竜とそばかすの姫
28. プロミシングヤングウーマン
29. イン・ザ・ハイツ
30. 少年の君
31. サマーフィルムに乗って
32. 名もなき歌
33. フリー・ガイ
34. ザ・スーサイドスクアッド ”極”悪党集結
35. 孤狼の血 LEVEL2
36. シャン・チー テンリングスの伝説
37. ワイルド・スピード ジェットブレイク
38. 映画大好きポンポさん
39. ドライブ・マイ・カー
40. マスカレードナイト
41. クーリエ 最高機密の運び屋
42. コレクティブ 国家の嘘
43. 007 no time to die
44. アナザーラウンド
45. プリテンダーズ
46. サウンド・オブ・メタル ~聞こえるということ~
47. DUNE 砂の惑星
48. 最後の決闘裁判
49. モーリタニアン 黒塗りの記憶
50. 燃えよ剣
51. エターナルズ
52. 皮膚を売った男
53. 由宇子の天秤
54. リスペクト
55. MONOS 猿と呼ばれし者たち
56. ダ・ヴィンチは誰に微笑む
57. Dear Evan Hansen
58. ヴェノム レット・ゼア・ビー・カーネイジ
59. 悪なき殺人
60. ラストナイトインソーホー
61. ローラとふたりの兄
62. キングスマン ファーストエージェント
63. ダーク・ウォーターズ 巨大企業が恐れた男
64. 偶然と想像

以上、64作

いやあ、たくさん観ましたね。。。
とても幸せな1年でございました。

2021年よりも前に見た作品、配信で観た作品の諸々もあるので気になる方はぜひfilmarksの方もチェックしてみてくださいな


いろんなことを考えながらクリームソーダ飲んできます。