マガジンのカバー画像

『カテゴリー論』アリストテレス

5
オルガノン著作群の一つ。
運営しているクリエイター

記事一覧

主述関係の四つの型〈アリストテレス『カテゴリー論』第7章-2〉

主述関係の四つの型〈アリストテレス『カテゴリー論』第7章-2〉

「SはPである」は一般的な命題の形だが、これはSとPという二つの概念から構成されている。両概念は組み合わせられることによって関係をもつ。僕はその関係には四つの型があり、それは、両概念の準ずる全称命題と特称命題の真偽、両概念各々の周延関係によって区別されると考えている。

アリストテレス『カテゴリー論』第7章では、概念間の種々の関係を扱うが、それらの関係はお互いに均質的なものではなく、上の区別を念頭

もっとみる
関係的なもの〈アリストテレス『カテゴリー論』第7章〉

関係的なもの〈アリストテレス『カテゴリー論』第7章〉

アリストテレス(6a30-40?)によれば、「何かに対する」「関係的」と言われるのは、

そのものが「他のものの・他のものより」という仕方でまさにそれであるところのものであると語られるもの或いは

他の何らかの仕方で「他のものとの関係において」そう語られるものとされる。例えば、「Aはより大きい A is bigger」は、AはA以外の何か“より”大きいことを言い、また「Aは二倍大きい A is t

もっとみる
種差、差異特性、差異〈アリストテレス『カテゴリー論』第3章〉

種差、差異特性、差異〈アリストテレス『カテゴリー論』第3章〉

今回は僕がアリストテレスの概念の中で一番注目している「種差(差異特性)」の概念を紹介する。ではまず本文を引用しよう。3章は短いので全文を二回に分けて引用する。

一方のものが他方のものについて、それを基に措定されたものとして述定される場合には、その述定されるものについて語られる全ての事柄が、さらに、その基に措定されたものについても語られることになる。たとえば、特定のある人間について人間が述定され、

もっとみる
述語と属性、存在するものの四分類〈アリストテレス『カテゴリー論』第2章〉

述語と属性、存在するものの四分類〈アリストテレス『カテゴリー論』第2章〉

この回では、あるものが述語であるか否か、属性であるか否かによって四つに分類されるとするアリストテレスの議論を見ていく。

まず、述語についてだが、ものごとには述語になれるものとなれないものがある。「動物」は「人間は動物である」といった仕方で述語になれるが、「ソクラテス」や「東京タワー」といった特定の個人や個物は述語になれない、という具合にだ。いやいや、「プラトンの師匠はソクラテスである」というふう

もっとみる
一義的、多義的、派生的〈アリストテレス『カテゴリー論』第1章〉

一義的、多義的、派生的〈アリストテレス『カテゴリー論』第1章〉

まず、アリストテレスによる表題の語の規定から見ていく。ref.岩波全集12頁(1a1-10)

「同名異義的」と呼ばれるのは、名称だけが共通であり、その名称に対応した、事象の本質を示す説明規定は互いに異なるものである。「同名同義的」と呼ばれるのは、その名称が共通であるとともに、その名称に対応した、事象の本質を示す説明規定も同一であるものである。「派生名的」と呼ばれるのは、他の何かからそれの名称に対

もっとみる