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リサーチ3. 脱炭素×画像解析〜サステナブル資本主義を実現するPachama〜

2050年までに実質ゼロの温室効果ガス排出を目指すパリ協定、気候変動による金融危機を警告するグリーンスワン報告書、気候変動政策の科学的根拠を提供するIPCCなど、持続可能な社会を作るための様々な取り組みが行われています。
ヨーロッパでは、大企業や機関投資家に非財務情報の開示が義務付けられる動きも見られます。

これらの取り組みを推進する上で注目されているのが、気候変動に取り組むイノベーション分野であるClimate Techです。

日本では2023年10月に東京証券取引所で、二酸化炭素(CO2)の排出量を取引するカーボン・クレジット市場が始まりました。
国が認証するCO2削減分の「Jクレジット」が取引され、これによりClimate Techの発展が期待されています。

※ 経済産業省HPより

今回は、衛星画像解析を活用して、森林の健康状態や二酸化炭素(CO2)吸収量をモニタリングすることで自然保全を促進するPachamaという海外スタートアップを参考にClimate Techの可能性を考えます!

▶︎技術活用が進むClimate Tech

Climate Techは次々と新しい技術の活用が進んでいます。
代表的なトレンドは下記です。

①CO2排出量の可視化
例)センサーを活用したモニタリングシステム、AIやビッグデータ分析を活用した予測モデル(活動量 × 排出係数)など

②カーボンオフセットのマッチング
例)CO2排出の相殺のマッチングアルゴリズム、クレジット認証など

③CO2削減の直接解決
例)再生可能エネルギーの普及や省エネ技術の導入、燃料電池車の開発など


従来の資本主義の固定観念、既得権益から変革すべく、Politics(政治)、Economy(経済)、Society(社会)、Technology(技術)、それぞれの環境変化が著しく、新たなルールメイキングがなされている中で、サステナブル資本主義としてビジネスを成立するために、さまざまなClimate Techの企業が台頭してきています。

▶︎Pachama

サステナブル資本主義の難点は、それを実践するメリットを動機付けることにありますが、各企業が脱炭素に対して責任感を持たせるためのマーケットプレイスとして注目をされているスタートアップの一つがPachamaです。

Pachama は、2018年にアルゼンチン出身のディエゴ・サエズ・ギル氏によってサンフランシスコで創業されました。
ディエゴ・サエズ・ギル氏はPachamaを創業する前に、旅行者が自分に合った冒険旅行を見つけるためのオンラインプラットフォームStride Travelを創業されていたシリアルアントレプレナーです。

森林の保全と復元を目的に、信頼性の高いカーボンクレジット市場を成立させることで、多くの企業や人が森を守るためにお金を投じ、そこに正当な経済インセンティブを生み出すことができるサステナブル資本主義の実現を目指しています。
推進しています。

それを実現するためにテクノロジーが衛星画像解析によるトレーサラビリティとモニタリングに技術的な強みを有してます。
マーケットプレイス上で、どこの国/地域のどのプロジェクトのカーボンクレジット購入するかを選択できますが、その地域の現状を画像やデータで確認することができ、どれだけ森林破壊が世界的に、または特定の地域でどれだけ進んでいるかを考えることができます。
独自のネットワークを築き、マーケットプレイス上では世界で150以上もの森林保全プロジェクトを扱っています。

※ PachamaのHPより

森林の健康状態や二酸化炭素(CO2)吸収量を三次元データを機械学習によって解析し、カーボンクレジットの対象となる森林が回収したCO2量を算出することで、プラットフォーム上で企業が森林保護プロジェクトに寄付し、カーボンクレジットを購入することができる仕組みを構築しています。
カーボンクレジットを購入する企業は、例えば、Microsoft、Shopify、セールスフォース、ソフトバンクといった大手企業がありますが、カーボンクレジットの信頼性が重要であることに対して、技術的な保証を実現できることがプラットフォーマーとしての機能を果たすことができています。
テクノロジーの優位性を効かせるために、OpenAI、Microsoft、FacebookなどのAI技術者などを集め、一時は数万人が応募したということで話題になったたから、採用力が群雄割拠となっているClimate Techの中でも競争優位性になっていると考えられます。

※筆者作成

2023年12月にはシリーズBの追加調達を経て、累計8,800万ドル(約120億円)の資金調達を果たしています。
Kickstarterやビジョンファンド、Lowercarbon Capital、アマゾン、Y Combinatorなどが投資されています。
世界中で企業活動において社会の公器としての脱炭素経営が必須となるルールメイキングが進む中で、Pachamaは錚々たるグローバル企業から期待を受けているのです。

▶︎まとめ

日常生活や経済活動ではCO2の排出を避けることは極めて難しいことです。
だからこそ、排出量に見合った削減活動を促進することが重要となります。
一部の善意のある人だけの社会貢献意欲だけでは何百年と培われた既存の資本主義の思想は変えることができず、損得勘定が発生してしまい、サステナブルではありません。
新しい仕組みを生み出すイノベーションが不可欠です。

地球の限りある資源を守り続けるために、サステナブル資本主義を実現し、テクノロジーの活用によって新しい経済活動を促進するClimate Techの発展に要注目です!

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