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#31 「愛」を愛する。

この、noteのはじまり。

すぐに決まってすらすら書けるときもあれば、
なーにを書こうかな……と全く進まないときもあって、今日は完全に後者。

ぐるぐる考えて思いついたことを
書いては消してを何度か繰り返したものの、
どれもしっくりこなかったので
今回は諦めて、本題に入ってしまうことにする。




さて。

人の名前によく使われる人気の漢字といえば、
何を思い浮かべるだろう。

男の子なら、「」とか「」とか。
女の子なら、「」とか「」とか。

時代や性別など、括り方によって
そのランキングは変わるものだと思うが、
今回は、とあるひとつの漢字を取り上げたい。



」。

音訓や意味は、説明など不要だろう。

それはもう、昔から、
特に女の子の名前において絶大な支持率を持つ漢字。
明治安田生命が発表する名前ランキング
「人気の漢字ベスト25」2022でも、この漢字が堂々の1位(女の子)を獲得している。

以前は「あい」と読んで用いるのが主流だったと思うが、今は①ぶった切りして「」と読むのがほとんど市民権を獲得したくらい浸透しており、
「愛(あ)」を使った名前がむちゃくちゃある。

「あ」という響きは非常に人気が高い一方、
あてる漢字が「」「」など限られていた中で、字義も良い「が急激に勢力を伸ばしたのだと考えられる。


さてそんなわけで今回フィーチャーしたいのは
「愛」の読み方についてである。

この大名前多様化時代、
人気になった漢字はもともとの音読みや訓読みなどに捉われない、自由な発想のもと読みがあてられることが往々にしてある。

当然「愛」も例に漏れず
私が名前収集をしている中でも、こんな読ませ方をするのか!と驚くことが度々あったので、
改めてその多様な読ませ方をまとめてみることにした。

多数を占めるのは女の子の名前だが、
当然ながら男の子の名前における使用例もある。





たくさんの愛

まず、辞書に載っている読み方から整理していこう。

🩷音読み アイ
🩷訓読み いと(しい)・(い)・(でる)・まな
      お(しむ)・かな(しい)・いつく(しむ)

いくつかの辞書の情報を総合すると、
上記のような感じになる。

これに加えて、名乗り読みもまとめたい。
名乗り読みとは、音訓読みとは別に名付けの際にのみ使用される読み方のことで、
辞書にも、音訓とは別個に記載されている。

🩷名乗り読み あきさねちかちかし
        つねなりなるのりひで
        めぐみめぐむやすよし
        より

はっきりとした定義があるわけではないので
辞書によって多少の誤差はあるが、
まあ、だいたいこんなところだろうと思う。


これらを踏まえた上で、
過去に集めた名前たちを漁ったところ、
100パターンを優に超える多様な読ませ方に出会うことができた。

さすがに全部を書くことはできないので
いくつかにジャンル分けして
その一部を紹介していきたい。

ちなみに例に挙げる名前は、
女子の場合()男子の場合〈〉としている。



🩷ぶった切り

まずはシンプルなぶった切りから。
そのほとんどが①ぶった切りに該当するが、
②後ろ残しぶった切りの場合もある。

】……… い     例:乃愛(のあ)
】……… あ     例:愛織(いおり)
いつ】…… いつくしむ  例:愛輝〈いつき〉
いと】…… いとしい   例:愛羽(いとは)
】……… い     例:美愛(みう)
】……… しむ    例:七愛(ななお)
かな】…… かなしい   例:愛大〈かなた〉
】……… でる    例:愛依(めい)
】……… る     例:彩愛(あやな)
】……… さ     例:愛音(ねね)
】……… り     例:結愛(ゆの)

ぶった切りの例は枚挙にいとまがない。
「愛(あ)」はもうとんでもなくたくさん使われているし、他も珍しいものはひとつもないと言えるくらい、かなり高い頻度で遭遇する。


🩷部分読み

続いては、⑥部分読み
こちらはパターンが4つ(実質1つ?)しかないので、全て紹介する。

こころ】…… 愛→  例:愛(こころ)
ここ】……… 愛→  例:愛奈(ここな)
】………… 愛→  例:真愛(まこ)
】………… 愛→  例:愛結(みゆ)

「愛」のまんなかの「心」の部分だけを読む。
決して多いわけではないが、確実に一定数存在している。
「こころ」と読んだ上でさらにぶった切ったりなんかもしているので、やや高度かもしれない。
なお、「心(み)」は名乗り読みである。


🩷二度読み

続きまして、⑧二度読み
ふたつの読み方をくっつけて読ませ、ますます難易度と自由度が上がる。

あな】… い+まな    例:莉愛(りあな)
さと】… ね+いしい  例:千愛(ちさと)
めい】… でる+あ   例:愛咲(めいさ)

「さと」はかなり珍しい読ませ方だと思うが、
「あな」や「めい」は最近の子どもの名前ではわりと散見される。


🩷外国語読み

次は、⑩外国語読み
ある意味、どシンプルな読ませ方である。

らぶ】…… 愛=Love  例:愛翔(らぶは)

この例の名前、「翔」を⑥部分読みして「は」と読ませていることも手伝って、
いわゆる"キラキラネーム"感は強いかもしれない。
しかし、ど直球に「愛(らぶ)」という名前は極めて稀であり、その派生──ぶった切って【】と読ませるものの方がとても多い。
その例に、咲愛さくら)・愛々らら)など。


🩷ン置換

5つ目、㉔ン置換
これもパターンは限られているが、それなりに見受けられるものだ。

あん】… あい→あん  例:愛奈(あんな)
のん】… のり→のん  例:花愛(はのん)

当たり前に「ン置換」と呼んでしまっているが、かなり自由な読ませ方だ。
「愛」に限らずさまざまな漢字で㉔ン置換は行われているので、どこからどんなふうに広まっていったのか、不思議なものである。


🩷特殊な読み

これまでの5ジャンルは私が作成した名前の分類に則って書いてきたが、こちらは少し異なるのて、ひとつひとつ説明していきたい。

あや】……… 地名    例:愛乃(あやの)
】………… 地名    例:紗愛(さえ)
かなさ】…… 沖縄方言  例:愛(かなさ)
めご】……… 東北方言  例:愛(めご)
わい】……… 熟字訓?  例:香愛(かわい)

まず、「あや」は宮城県仙台市の「子(あやし)」という地名から採ったと考えられる。

「え」は言わずもがな「媛(ひめ)」の「え」で、これは他とは異なり、昭和の頃から用いられてきた読ませ方だ。
「愛(あ)」のぶった切りなんかより、名付けにおける歴史があるものだろう。

続く「かなさ」と「めご」は、
それぞれ沖縄と東北の言葉で「愛おしい」などといった意味を持つ。
オリジナルの読ませ方や当て字というわけではないが、なかなか珍しい。

そして「わい」は、「可い(かわいい)」から採られたものだろう。
「可愛い」は熟字訓か連声なのかと思ったが、どうもただの当て字らしいので、ハテナをつけた。


🩷出どころ不明な読み

そして、最後。
私の分類に当てはめれば㉙説明不可能になるものだが、いくつかあったので一部を紹介する。

がく】………… 例:愛斗〈がくと〉
つぐ】………… 例:愛実(つぐみ)
はる】………… 例:愛嘉(はるか)
ほの】………… 例:愛香(ほのか)
れん】………… 例:華愛(かれん)

これだけ全く読めないように読ませているって
他の漢字では、あまり見られない。
「愛」という漢字の人気が高まりすぎたゆえの、レアな現象なのではないだろうか。




……というわけで。

今回は100以上の中から、厳選して32パターン
愛の読み方」を紹介した。

こうして一覧にすると毎度のことながら、
漢字や名前の可能性や多様性に驚かされる。

それが良いのか悪いのかというのは
もちろん一概には言えないけれど、
まあ少なくとも今回紹介した読ませ方の名前たちは当然実在するのであって、
それらを是とする考えは決して少数派ではない。

いつもいつも同じような、
代わり映えしないまとめになってしまうのだが
言いたいことはずっとひとつで、
名前って面白いよなあー! これだけ。



だいすきを、コツコツと、いつまでも。

それでは、また次回。





※上記の名前は、誰でも閲覧可能なネット上に載っていた名前です。

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