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なにやってんだよ、アイツ。

おはようございます。

少し前、今日は嫌な事があった。と唐突に言われた。
その続きが気になったが、その先をスラスラと彼は言わなかった。

「言わなきゃ分からない」

私はそう彼に伝えた。
嫌な事があったと伝えるという事は
彼はその物事を誰かに話し消化したいと思っているからだろう。

「友達が自殺した」

思っていたよりも重い内容だった。
そりゃあスラスラ言えないわな、と腑に落ちた。

「そうなんだ」とだけ返した。

「まだ22歳だよ、なにやってんだよアイツ」

あー、本当。なしてんだよアイツ。
その人の事なんて何も知らないけれど私も心の中で同じように呟いた。
そして思い出す。
生きる為に死ぬんだ、という自分の言葉を。
私は彼にその言葉を伝えなかった。
それが正しいと思った。
この言葉は自殺を肯定しているように捉えられる。
だけど決して、そういう訳では無い。
けれど、それを補足として加えたとしても意味は無い。
アイツは最後自分の命を終わらせる為に最後の力を振り絞って死ぬ為に生きただろう。

彼は忘れたいと言った。

忘れる必要はないと私は思った。
忘れられる訳が無いのだから。
彼とアイツは高校時代の友達だ、住む場所も今は違い多分だけど、全然会っていなかっただろう。
アイツの死は巡り巡って知らされたのだろうか?
それとも、真っ先に知らされたのだろうか?
どうしてアイツは死んだんだ?

会ったこともない私はアイツの死の真相なんて分からない。
知る権利もない。
そして必要もない。
私が彼と出会っていなければ、アイツの死なんて何も知らずに生きていく。
ただ、どうしてだろうか。

「なにやってんだよ、アイツ」

という言葉がなんとなく忘れられない。
その問いに、答えられる人は誰もいない。

会ったことのないアイツが私の心のほんの少しを占領した。
胸がギュッとなる。
私はその気持ちのまま、何事もないように過ごしていく。
忘れようともしない。
ただいつかは忘れてしまうだろう。
人身事故の影響で電車が大幅に遅れ
イライラする人、その裏で悲しみにくれる人
色んな物語がある事を毎回想像するけれど
生まれてから何度人身事故で電車が止まったのかの正確な数字が分からないように
会ったことのないアイツの死は知らぬ間に埋もれるだろう。
冷たいようだがそういうものだ、なんて思う。

なにやってんだよ。

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