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参照点依存のせいで絶対にお年玉がもらえるサイコロを振れなかった姪っ子の話

新年あけましておめでとうございます。
今年も学んだことを日常生活と趣味に絡めてアウトプットしていこうと思う私です。
元日は家族を連れて私の実家に帰ったのですが、そこで面白い事がありました。
前回投稿した損失回避性と関係が深いお話なのですが、皆さんは参照点依存という言葉をご存じでしょうか?
例えば手元に1万円があります。この1万円の価値はいくらだと思いますか?
そんなもん1万円に決まってるだろうと多くの方が思うはずです。
しかしこの参照点依存を知っているとそうとも言えなくなってきます。
今回は私の姪っ子がなぜ絶対にお年玉がもらえるサイコロを振れなかったのかを行動経済学の観点から見ていきましょう。

お年玉がもらえるサイコロを振れなかった姪っ子


私が家族と共に実家に帰ると姉の家族と弟(独身)も帰ってきていました。
家族団らんの時間です。
そしてお正月なので子供たちにはお年玉を配るのですが、弟のお年玉の配り方は少し変わっています。
まずサイコロを用意します。それを子供たちが順番に降っていきます。
そこで出た目の数字×1000円がお年玉としてもらえるというルールです。
つまりもらえる額は1000円~6000円まで幅があります。
これはぜひとも6の目を出したい所です。
私の子供はちょうど1歳になったばかりでまだサイコロを振れないのでゲームからは除外されます(なんでやねん)。
3人いる姉の子供たちは張り切ってサイコロを振ります。
まず甥っ子その1がサイコロを振ります。

何がでるかな♪何が出るかな♪

なんと6の目が出ました。満額です。おめでとうございます。

次に甥っ子その2がサイコロを振ります。

何が(略

なんとまたしても6の目が出ました。二人続けて満額です。

労せず6000円を手にしていく子供たち。

最後は姪っ子の番です。満額が続いた後なので変なプレッシャーがかかります。おそらく二者連続ホームランが出た後打席に入る打者の気持ちでしょう。
3者連続満額が出るかと思いながら見ていると・・・

なかなかサイコロ振らない姪っ子。

何やらサイコロを振るのを嫌がっています。

何故嫌がるんだ。君の利得は最低でも1000円。サイコロを振れば絶対にお年玉が手に入る。どの目も出る確率は1/6だ。何を躊躇することがある。

姪っ子「嫌や・・・」

という事が正月早々にあったわけです。
何故彼女はサイコロを振らなかったのでしょう。
もちろん前の二人が満額を出した後のプレッシャー的なものはあったと思いますが、なぜそれをプレッシャーと感じるのでしょうか。
行動経済学で考察してみましょう。

サイコロを振れなかったのは損失回避性と参照点依存のせい


行動経済学にはプロスペクト理論というものがあります。
プロスペクト理論とは不確実な状況下での人間の意思決定を理論化したものです。
その中の心理作用として「損失回避性」と「参照点依存」があります。
今回の姪っ子にはこの心理が作用したのではないかと考えられます。

損失回避性。人間は損が大嫌い

人間は得をする以上に損をするのが大嫌いな生き物です。
10000円をもらった時と10000円を無くした時を想像してみてください。
10000円を無くした時の方がショックが大きい気がしませんか?
どちらも同じ10000円なのに。
損失の心理的な痛みは利得を得た時の2.25倍と言われています。
10000円を失ったショックは25000円を得た喜びでやっと同等となります。
損失回避性については前回で記事にしていますので良ければそちらもご覧ください。

参照点依存でものの価値は変わる

参照点依存とはものの価値は絶対的なものではなく、状況や環境によって変化する相対的なものという考え方です。
例えばあなたが職場でボーナスとして8000円もらえたとしましょう。
利得は8000円です。嬉しいですね。
ではその後同じ働きをしたにも関わらず、あなた以外の人には10000円が配られていたとしましょう。
どうでしょう?なんだか2000円損した気分になりませんか?
実はこの瞬間にあなたの中での損得の基準は0円ではなく10000円になっているのです。
そして8000円もらったあなたは本来得したハズなのに10000円と比べて2000円損をした気分になってしまいます。
損をした時の心理的ダメージは利得の時の2.25倍です。
他にも7万円のカーナビは高いと思っていても、500万円の車を買った時には
7万円のカーナビもオプションで簡単につけてしまったりします。
この場合参照点は500万円です。

姪っ子の脳内を想像してみた

上記を踏まえてサイコロを振れなかった姪っ子の脳内を想像してみましょう。
姪っ子がサイコロを振る前に甥っ子その1と甥っ子その2は見事6の目を出し、6000円をゲットしました。
この時点で姪っ子の脳内での参照点は6000円になっていたと考えられます。
自分も6を出さなければ甥っ子たちよりも低い金額しかもらえない。
6の目が出る確率は1/6。逆に言うと5/6の確率で6以外の目が出る。
そうなると自分だけ損をしてしまう。
損をするのは嫌だ。
この心理状態から姪っ子はサイコロを振るのをためらったと考察できます。

まとめ



私はバイクが趣味でサーキットに通っています。最初はヘタクソでタイムも遅かったのですが、通っているうちに少しづつ上達していきタイムも削れてきました。今では最初よりも10秒近く速く走れています。
上達を実感できるとやはり嬉しいものですね。
しかしながら上には上がいるもので、私が10秒縮めたそのタイムよりもさらに10秒近く速く走る人たちがいます。
これを見ると私が苦労して縮めたそのタイムも遅く思えてきます。
これも参照点依存の一つと言えるかもしれません。
ただ私はサーキット走行に関しては「自分との闘い」という思いがあり、
比べるべきは他人ではなく過去の自分だと思って走っています。
周りと比べるとどうしても一喜一憂してしまう事があります。
時には他と比べない自分の中での絶対的な価値を持っていてもよいのではないでしょうか。

みんな違ってみんないい的な・・・ 違う?

賽は投げられた

さて、サイコロを振れなかった姪っ子ですが、その後意を決してサイコロを振りました。

その結果は・・・

何と6の目が出ました。見事満額です。
湧き上がる歓声。飛び上がる姪っ子。短時間で18000円を失う弟。
3人連続で6の目が出る確率は1/216なので新年からおめでたいです。
もしかすると姪っ子がサイコロを振れなかったのは単純に注目されて恥ずかしかっただけかもしれませんが、私的には行動経済学の理論が説明できたのでよしとしましょう。

因みに18000円を失った弟はさらに「これを3人で分けろ」と言ってテーブルに10000円札を放り出していました(うちの子供忘れてね?)。
独身貴族はいいですねぇ。
まぁその後お金が足りなくなって母親に借りてましたけど。

おわり。

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