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何故逃した魚は大きいのか

皆さんこんにちは。バイク以外にも釣りを趣味としている私です。
釣りをしているとたまに大物が掛かります。
テンション爆上がりでよっしゃー!という気分になりますが、足元まで寄せてもう少しというところでライン(釣り糸)を切られてハイさようなら。
気を取り直して!・・・と行きたい所ですが、どうしても逃げられた魚の事が気になり、家に帰ってからも「あの時あぁしていれば、こうしていれば・・・」等と考えてしまいます。
まさに諺にもあるように「逃した魚は大きい」のです。
釣りに限らず皆さんの日常生活にも思い当たることは多いのではないでしょうか。
限定品を買おうかと迷っている間に売り切れてしまい悔しい思いをする。
食べ放題で張り切っていたのに体調が悪くほとんど食べれなかった。

何故このような事が起こるのでしょうか。
今回は行動経済学の視点からこの現象を解説していきます。
日常生活にも役立つ内容なのでぜひ最後までご覧ください。

人間は損失を極端に嫌う


ズバリ結論から言いましょう。人間は何かを得る(利得)よりも失う(損失)事に対して心理的ダメージが大きいからです。
逃してしまった魚=損失であり、逃した魚は実際よりも大きく感じてしまうのです。
例えば以下のようなゲームを仮定します。

「50%の確率で1万円をもらえるが、50%の確率で1万円を失う」

どうでしょう。皆さんはこのゲームに参加しますか?
恐らく参加しない人の方が多いと思います。
確率はどちらも同じ。期待値も同じです。
ですが人間には損失回避性があり「1万円もらえる確率」よりも「1万円を失う確率」の方に注目してしまうのです。
これは行動経済学におけるプロスペクト理論で説明されています。
以下で少し詳しく見ていきましょう。

プロスペクト理論とは

プロスペクト理論は1979年にダニエル・カーネマンとエイモス・トベルスキーによって展開されました。
プロスペクト(prospect)という英単語は、「見込み、展望、期待」という意味で、不確実な状況下での意思決定モデルの一つです。
プロスペクト理論の中では損失回避性以外にも様々な特徴が解説されていますが、今回は損失回避性にのみに言及します。

プロスペクト理論の要「価値関数」


上の図は価値関数と呼ばれるプロスペクト理論を説明する上では欠かせない関数です。
縦軸に効用、横軸右側が利得、左側が損失です。
利得が増えると効用が増加、逆に利得が減る(損失が増える)と価値効用が減少します。
注目すべきは0地点からの変化です。利得が増えた場合よりも損失が増えた場合の方が効用の下がり方が急になっています。
詳細な計算式は難しいので(私が覚えられないので)割愛しますが、価値関数では利得よりも損失の方が約2~2.25倍大きいという結果が出ています。
つまり1万円の利得と1万円の損失は同等ではなく、1万円の損失は2~25000円の損失に値します。

日常に潜む損失回避性


ここでは身の回りに潜む損失回避性を見ていきましょう。

限定商品

損失回避の典型例となるのが限定商品です。
「期間限定」「地域限定」「数量限定」等々様々な限定がありますが、
どれもこの機会を逃すと買えない=損失であるという心理が働きます。

現状維持バイアス

人には変化を求めず現状維持を選択してしまう傾向があります。
転職をした方が良いと感じていながらなかなか行動に移せない。
加入している保険の内容を見直すことなくそのままズルズルと継続してしまう。
変化を選択した結果損をする可能性がある。それならば現状維持を選択しようと無意識に考えてしまうのです。

サンクコスト

サンクコストは埋没費用とも呼ばれます。
焼肉の食べ放題で出来るだけ元を取ろうとしてしまう。
進行中のプロジェクトが上手くいかない事が判明したが今まで投資した費用がもったいないと感じてしまい中止できない。超音速旅客機コンコルドが有名な例です。
一度支払ってしまった費用、または支払うことが確定している費用に執着してしまうのです。

返金保証

通販番組などで「購入後商品に満足いただけなければ全額返金します!」と謳っているのを目にすることがあります。
消費者は購入した商品が思っていたものと違い損をするリスクを抱えていますが、返金保証とすることで損をすることなく安心を担保し購入につなげていくという方法です。

まとめ


知っている事で冷静になれる

損失回避性は行動経済学でよく紹介される理論の一つです。
今回はごく一部を紹介しましたが、皆さんの日常の中でも思い当たる節があったのではないかと思います。
経済学では人間は常に合理的な選択、行動をするという前提があります。
同じ商品であれば価格の安い方を、同じ価格であれば効用(性能や品質)が高い方を選ぶとされています。
ですが実際は違います。私たちはしばしば感情で行動し選択をします。
価格は高いけれど好きだから買う。他にもっと品質のいいものはあるけれど、紹介してくれたあの人を応援したいから買う。
というように私たちは感情によって非合理的な購買行動を行うのです。
損失回避性はまさに感情面での行動です。
感情で物を買うことは決して悪いことではありません。
しかし今回紹介した損失回避性を知っている事で冷静に考え、無駄な出費を減らす事が出来るのではないでしょうか。
この買い物は本当に必要なのか。損失回避性が働いているのではないか。

この記事が皆さんにとっての逃した魚の大きさを冷静に見極められる一助になればと思います。

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