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今日ときめいた言葉79ー「独裁者のいない全体主義」

2023年9月30日付 朝日新聞 「近代日本メディア史 Ⅰ & Ⅱ」(著者 有山輝雄氏 メディア史研究者)についての書評からー

「独裁者のいない全体主義」ーこの著書にある言葉だそうだ。日本社会を的確に表現している言葉ではないだろうか。すごく納得してしまった。

「この国に独裁者はいない。しかし政権がきめたことが、たとえ少なからぬ人が首をかしげても、さしたる騒ぎにならず浸透していく。メディアはそんな社会を醸成してきた主要な仕掛けではないのか」と、この言葉を評者は解説する。

だから「もともと新聞や放送は、『基本的に政治権力の意向を伝達するメディアとして作られてきた』ということが、メディアの歴史をつづったこの大著から読み取れる」とも評している。

この本の著者は、

「モノ、技術、組織としてのメディアの実態がわからないと、近代、現代の仕組みは見えてきません」

さらに、

「新聞社ジャーナリズムが民主主義の担い手だったというのは新聞関係者たちの勝手な神話である」

と書いているそうだ(この言葉に評者は、立つ瀬がないと書いている)

「不都合な過去を直視しなければ未来は開けない」と著者は言っていると言う。

(だが、この言葉どれほど言われたことだろう。いまだに向き合うことを忌避する政治家。何が彼らをそうさせるのか)

1918年言論弾圧のあった年。朝日新聞だけでなくメディア全体が沈黙し、通り過ぎるのを待つだけだった。そんな過去を顧みる必要があると評者は書く。

だがそれは単に過去の出来事なのではない。つい直近でもメディアは、長い間不都合な事実に目を向けてこなかったのだから。私たち市民の知る権利は奪われ続けている。

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