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「愛の不時着」 ソ・ダンという女性についての勝手な考察ーその言動から検証してみる

(タイトル写真は、25ans.jpから転載)

『はじめに』


このドラマの中でどうしても好感がもてなかった人物がいる。リ・ジョンヒョクの婚約者ソ・ダンという女性である。

彼女について寄せられている感想、投稿、コメントの多くは、可愛いい、少女のよう、プライドが高く、不器用、強い女、でも嫌いになれないなどなど。好意的なものが圧倒的に多い。

このドラマの中では、リ・ジョンヒョクやユン・セリに比べて、彼女についての人物像や内面の描写がほとんどない。

そのために彼女の人物像が演じている女優の印象に引かれて語られており、あまりに単純化されている気がするのだ。

私は言葉に強い関心を持っている人間なので、ドラマの中でときめく言葉=言動に出会うと、これがドラマを見ることの最大の醍醐味だし、そんな言葉に共感できたことは人生最大の喜びじゃないかと思っている(大げさ、かな😅)

それ故、私がソ・ダンに対して好意的な感情が持てなかったのは、おそらく彼女の言動と振る舞いにその理由があるのではないかと思うのだ。だから、ここでは映像の中の彼女の言動と完全版(以下、脚本)の記述に焦点を当てて、彼女の人物像を検証してみたい。

多くの投稿が評しているように、彼女は少女のようでプライドが高く不器用な女、はたまた「高貴な人」なのだろうか、と。


『ダンとジョンヒョクの関係』

「ダンがジョンヒョクに惚れたのは、中学時代ジョンヒョクがバスケットボールでゴールを決めた瞬間」と脚本に記されている。彼女はその思いをずーっと胸に秘め婚約までこぎつけたようだ。縁談がまとまり留学先のスイスにジョンヒョクに会いに行くのだが、当のジョンヒョクは全く自分を認識していなかった。

残念な対面の後も、滞在中ジョンヒョクは一貫してダンに無関心。不愉快な思い出としてダンには記憶されている。

第16話婚約が破談になった後、ジョンヒョクに会いに行き、スイスで持っていたジョンヒョクのカメラを手渡しながらこんなことを言う。

「スイスまでわざわざ会いに行った自分に、ジョンヒョクが無関心だった理由が分からなかった」と。

だが理由は明白だ。彼はダンに好意を持っていなかったからだ。ダンは、そんな事は十分承知の上でこう言ったのだ。そして「自分に起こる出来事は理由が分からないことばかりだもの」なんてちょっとぶりっ子ぶっているけど、これは結果的に破談になるに至った一連の不愉快な経緯に言及し、その結果を招いたジョンヒョクをやんわりと追いつめているのだと思う😤


スイスでの数々のシーンは、どれもダンのことなど全く眼中にないものばかり。写真ばかりとっていた(フリをしていたようにも見えたけど🙄?)。ジョンヒョクという人は、自分の心の中が隠せない人なんだなあと思う(第4話エピローグ、セリにいつまでも見取れてしまっているシーンなど、ダンのことなどお構いなしだった(笑))


そんな今までのジョンヒョクの不快な態度に(恐らく破談になった腹いせも込めて?)皮肉の一つも言って、溜飲を下げたかったのだろう。

だから「このカメラを捨てようと思った」とか、「10年間婚約者だったんだからそのくらい許されますよね」なんて、憎たらしいことを言ったのだろう。

ジョンヒョクは苦笑いしていたが(いつもの彼女らしい強気な物言いだと思ったに違いない)。 ダンからふっと意味ありげな笑みがこぼれたが、彼女の言動は冷ややかだった。

そして「スイスで私に無関心だった理由」(英語訳だと”the reason you refused to look at me back in Switzerland “ 脚本は「スイスで私を見なかった理由」どちらの翻訳が韓国語に近いか分からないが英語訳はきつい)は、「そこでセリに出会ったからであり、すべてはそこからはじまっていたのだ」と。

カメラにおさめられたセリの映像を発見したことで、「こうなることは運命で決められていたのだ」みたいに結論づけた。いや、そう結論づけたかったのだと思う。傷つけられた自分のプライドを取り戻すために🤔(全ては運命で決められていたことだった、と思うことで自分を納得させるために。北朝鮮でも運命は恋愛の重要な要素なのだろうか⁉️)

だから「ジョンヒョクが初恋の人で、彼をずっと好きだった」なんてことも明かさなかったし、彼の前では最後まで強気のままだった。

本心を明かすには、彼女の心の傷はまだ生々しくて、癒えていなかったからではないだろうか?そんなダンの前で、ジョンヒョクの態度がぎこちなかったのは、やっぱり苦手なタイプなんだろうなと感じた😅


『ソ・ダンの失意、そして運命の二人ユン・セリとリ・ジョンヒョク』

スイスで出会った時点でも、それ以降もジョンヒョクの気持ちは変わることはなく、やはり好意は持てなかったのだろう(第14話セリに会うまでは誰も愛さなかったのだから・・・・・)。

第7話病室で、ジョンヒョクはダンに結婚できないと告げる。その時の会話は、日本語訳では:

「好きでなくても結婚はできる。でも他の人が好きなまま結婚はできない。」
(かなり曖昧な表現)だが、英語訳は、もっと明確に彼の本心を表現している。

“I thought I could marry you even if I had no feelings for you” “but I don’t think we can get married if I have feelings for someone else”

脚本は「君を好きでないまま結婚することはできると思っていました。」「でも、他の人を好きなまま結婚することはできないと思います。」


未来を夢見ぬジョンヒョクは、淡々と結婚を受け入れようとしていた。しかし、セリと出会い、セリを愛していることに気づいたことで、他の人を愛したまま結婚することはできないと思い至ったのだろう。

「君を好きでなくても結婚できると思っていた」は、愛を知らなかったこれまでの自分だったらそうできたと、正直な胸の内を明かしたのだろう(この言葉は、初めに「だますつもりはなかった」と言ったことへの、彼の釈明だったと思う)  

だが、言われた方はずいぶん傷つく言葉だ。「他の人が好きなので結婚できない」と言われるより、ずっとイタイ言葉だと思う😡(ジョンヒョクに悪意はなかったと思うが、そこまで正直に明かさなくても😰と、言われた方は思うだろう)

だから、ダンは「だまされる」という言葉にすごく反応していた。「天下のソ・ダン⁈」のプライドにかけて、「だまされる⁈」などという言われ方は断じて受け入れられないことだったろうから。その上「自分を好きではなかったこと」をストレートに告げられて、屈辱感で心は深く傷ついたことだろう。ダンはジョンヒョクに、

ここを去って行く人だから、ときめいて愛と勘違いしているのだ。そんな感情は彼女が去ってしまえば消える。私にときめかないのは、結婚がきまっているからだ。彼女を好きでも構わない。私たちの結婚に変動はない。

と激しく怒りをぶつけて出て行く。

(ダンを好きではないというジョンヒョクの感情はこれからも変わらないだろうに🥺それに、ジョンヒョクのセリに対する愛は、会えなくてもそばにいなくても変わらないものなのに🤷‍♀️)


ダンにしてみれば自分の10年間を全否定されたようで、悔しい思いだったろう。ジョンヒョクから結婚はできないと言われた後も、母にその事実を隠し、結婚準備を進めていた。彼女にとっては、もはや2人の間に愛があるかないかなど問題ではなく、ただ妻の座を手に入れることに執着していたのだと思う。


悔しさ、屈辱感、執着心がそのような行動に走らせていたのかもしれないが、第13話でジョンヒョクがセリを守るために、ソウルに行ったと聞かされる時までジョンヒョクを諦めてはいなかった。いや諦めきれなかったと言った方がいいか。


第9話でジョンヒョクが収監されている営倉に呼び出された時でさえ、「結婚式が近いのにまだ他の女のことを気にかけている」と非難し、「結婚式までここにいればいい。結婚式で会いましょう」と執拗に結婚にこだわった発言をしている。

(すでに結婚はできないと告げられているのに・・・。閉じ込めてまでも結婚すると言い放つ、その執念😱しかし、ここまで言ってしまったら相手の心はますます遠ざかるばかりだろうに)

この対面で、彼はダンには全く無関心だった!ただただセリの安否だけ(それを確認するために呼び出したのだから・・・)。こんな屈辱的な扱いを受けても、彼女はまだ彼と結婚することを望んでいたのだろうか?🤔😨

ダンは、絶望的な気持ちだったと思う。だが、彼の思い通りにはさせないという
意地が、彼女を突き動かしていたのではないか。彼女からは、彼の心を自分ではどうすることもできない悔しさと苛立ち、もはや憎しみさえ感じる感情が伝わってきた。

だから、ジョンヒョクが、「自分を後悔させるために父に助けを求めたのか?」「それで父がセリを拉致したのか?」とダンに問いただした時、ダンは、

「ええ、殺したわ。もういない。だから諦めて」

と激しい言葉をぶつける。ここでジョンヒョクは、ダンの通報を受け父親がセリを拉致したのだと確信する。


ダンは、その言葉通り、セリが殺されることを想定して通報したのだろうか?もっと言えば、殺されることを望んでいただろうか? 

ダンの本心はわからないが、少なくとも、どんなことをしてでも2人を別れさせたいと思っていたダンであれば、嫉妬と執着心そしてセリに対する憎しみから、そんな思いがよぎっても不思議ではない。

ひたすらジョンヒョクを取り戻したいと思うあまり、自制心をなくし「殺したわ」などと軽々しく口に出せてしまう。「だから諦めて」と吐き捨てるように言った彼女は、なんとも浅はかで愚かな女に見えた。が、何度もジョンヒョクに拒絶されてきた彼女の悲痛な思いが伝わってくる😔


だが、すぐにダンは、自分のこの衝動的な激しい言動が、ジョンヒョクに怒りと絶望を与えたことを実感する。ダンに向かって、ジョンヒョクは怒りに満ちた表情で、次のように言う。

「父に伝えろ。もし彼女を傷つけたら、1人残った次男まで失うと。必ず伝えろ。」

ジョンヒョクもその時、セリが殺されるかもしれない、いや殺されてしまったかもしれないと考えていたと思う(だから再会した時、第9話「生きていたんだ」(脚本)と安堵する彼の表情と涙がそれを物語っている。)

「セリを救ってくれたジョンヒョクのお母さんに感謝です」🙇🏻父親とその部下の会話からセリの生死は、紙一重だったことがうかがえるから。


ジョンヒョクは「結婚できない」とダンに告げて以降、ダンが前述のように、執拗に結婚について言及し、彼を非難しても、「結婚はできないと言ったはずだ」などと反論したりせず沈黙するだけだった。

それは彼としては、せめてもの礼儀だと思っていたからなのだろうか。それとも、セリのことだけが心配で、ダンの話すことになど関心がなく、聞き流していたからなのだろうか?

直接的な言葉でダンを傷つけてはいないが、彼女に言ったこの言葉「次男まで失う」は、彼女の心に残酷に響いたはずだ。その言葉には、自分ではない人(=セリ)を命がけで守ろうとしているジョンヒョクの強い思いが込められていたから・・・。


この時、ダンは怒りに任せて吐いた自分の言葉(「ええ、殺したわ・・・」)が、ジョンヒョクにどれほどの衝撃を与えたか、理解できていただろうか。ジョンヒョクが、兄の死後「誰も失わない人生」を強く心に誓って生きてきた人だと知っていたら、その言葉を言うことにためらいを感じたはずなのに・・・。

いや、彼女は知っていた! ジョンヒョクは、第8話「世界で一番好きだった人(兄)」を守れなかったことを悔やみ、苦しみ、死んだほうがマシだったと彼女に言っているのだから。

それでもダンは、自分の思い通りにならない怒りを抑えられずに、こんな言葉を彼にぶつけた。彼女の思慮の無さ、未熟さ、無神経さ。ただ結婚という己の願望にだけ固執して涙している。

営倉での対面以降、ジョンヒョクがソウルから戻り、破談になるまで2人は会うことはない。ジョンヒョクはセリを帰国させるために前哨地に入り、結婚式は延期となる。

ジョンヒョクの母のはからいでしょう。セリと息子ジョンヒョク、二人の愛し合う姿が彼女の心を動かしたのでしょう。命をかけて1人の女性を救おうとしている息子は、もはやかつての冷たい息子ではなかったから(再び息子の心を閉ざさせてはならないと思ったはずだ) 

困惑する夫の前で、さりげなく息子を食事に誘う母の姿は、息子の行為を容認すると言う意思表示にも思えた。母の思いが伝わってくる素敵なシーンだった。


「婚約者である娘にも告げず前哨地に入り(でもダンは結婚はできないとすでに言われていたのに・・・)、何の説明もなく結婚式が延期された」とダンの母が苦言を呈している

ジョンヒョクの母はひたすら低姿勢で謝罪していたが、相手側からの破談申し出に安堵していたと思う。もう親のしがらみに縛られずに、息子の望むように生きて欲しいと思っていただろうから。


『ここからは、ダンの内面についての私の勝手な考察ですージョンヒョクとセリの心情を検証しながら』

ダンにはNAIVE ナイーブという形容詞が合いそうな気がする(これを英語のネイティブスピーカーに言ったら頬っぺた引っ叩かれるそうだから、ネガティヴな言葉である。)

つまり「世間知らず、無知な、未熟な、幼稚な」と言った意味合いで、「世間を知らない未熟な人」のこと(日本人は繊細、傷つきやすいと言ったポジティブな意味で使っているが本来の語義とは違うので要注意)。


ダンという女性は、彼女の叔父さんが第3話、

「10年たってもこの子の強い(生意気な)性格は変わっていない」

と言っているように、自分自身の内面を見つめ直したり、他者との関係などに深く心をくだいたりする事もなく、生来のお嬢様気質(第9話脚本「友人を引きつれたお姫様」とある)のまま、成長したのだろう。

それ故、他者を思いやることなど気にもかけず、自己中心的な考えのまま今日に至ったのではないか。だから自分の高飛車で不躾な言動が他者を傷つけたり不快にしていることに気づけない。他者への配慮や思いやりのある言葉遣いなどのソーシャルスキルが身についていないことを自覚していない。


時として感情が抑制できず内包している稚拙さが言動にあらわれてしまう(例えば、第7話ク・スンジュンに2人のときめかない関係を指摘された時に声を荒立てたように)


気の強さと不躾なところは母親譲り?第6、7話でのダンの母の品の無い言動や無神経で、目に余る振る舞いで、ジョンヒョクの母を不快にすることしきり‼️この母がダンの人格形成に大いに影響を与えたと推測する。人は悪くないのだろうが、軽率で、ともすると身勝手な判断をしたり、公平さを欠く人物だ。

自分の娘が美貌と財力を兼ね備えているのが自慢で、多くの男を惑わしてきたと誇らしそうである。しかし人間としての内面の豊かさとか品性などには関心がなさそうで、他者を不快にする言動をしていることに母娘共々鈍感だ。

負けず嫌いで、友人に対する娘の敵愾心を積極的に煽ってさえいる。娘もうれしそうに同調していた。この母にしてこの娘あり🤔🤔ダンがどんなにきらびやかに装っても、彼女の言動に品のなさ、傲慢さが現れてしまう、母親のように。


この母の考えは、弟・ダンの叔父さんから絶えず軌道修正されている(「大げさだ」とか「ダブルスタンダードだ」などと言われたりして) 彼はものの見方がフェアな人物だと思う。ダン母娘には貴重な存在だ。


ダンは、心の中ではジョンヒョクの愛を得たいと強く願っていたのだろうが、その思いを素直に彼に伝えられない。と同時に、ジョンヒョクの冷淡な態度から自分に好意を持っていないことを敏感に感じ取っている。そのジレンマからかジョンヒョクの前では、彼女の言動はいつもとげとげしく、横柄で不快だ。そんな態度がジョンヒョクの心をますます遠のかせる。

               ※ ※ ※ ※ ※

思い込みでウキウキした気分でいられたダンが、第5話の衝撃的な出来事を境に不安と不信と怒りに苛まれるようになる。10年も経っているのに、彼に愛されているという確信が持てないダンであれば、その心の動揺はいかばかりか。


ダンと遭遇して押し黙るジョンヒョクに代わり、セリが彼との関係や自身について饒舌に説明する。が、ダンの吐き捨てるような言葉*「関係ありません」にその場が凍りついた。

*この「関係ありません」という日本語訳には違和感を感じる。英語訳では”I don’t care”となっている。これは相手にマイナスイメージを与える=不快にさせるほどの強い表現である。これを日本語に訳したら「どうでもいいわ(そんなこと)」ぐらいになるだろうか。

この表現の方が文脈的にも、あの場の雰囲気を伝えるのにも、ピッタリくると思うのだが(韓国語を素直に翻訳するとそうなるのだろうが、ちょっと違和感を感じる表現だと感じた・・・)。ジョンヒョクの硬い表情と気まずい雰囲気から察するに、キツくて不快な言葉だったはずだから。

              ※ ※ ※ ※ ※

明らかにセリもジョンヒョクも表情が曇った。セリは、こんな気まずい状況に敏感な人だ。すぐさま、ジョンヒョクとダンの沈黙を笑顔で取り繕おうとして、

「私は家に帰ります。きちんと送ってきて」 

と言って逆方向に立ち去ろうとする。ジョンヒョクは咄嗟にセリの腕を取って、自宅前まで連れて行く。

この時ジョンヒョクは、不安に駆られたのだと思う。セリがどこかに消えてしまいやしないかと。さっきセリが迷子になったことやこの後一人残されることを思って・・・。

だから「ここが君の家だろう。出歩いたりせずにきちんと戸締りを」と強く念を押すことで、セリに注意を喚起し、自分の不安を払拭したかったのだろう。そのあと「すぐ戻る」と言った時は、怖いくらい真剣な表情だった。


彼はセリが気がかりだったのだ(後で分かることだが第9話、セリをかくまった時から彼はセリを守り通すと決めていたのだから。第6話でも「見えるところにいてくれ、そうすれば安全だ」と思わず漏らしてもいる。そして体を張って銃弾から彼女を守った


ジョンヒョクからは、その場にいたダンへの気遣いは全く感じられなかった。彼女の心だって激しく動揺していただろうに・・・。明らかにダンの不躾な言動がジョンヒョクを不快にさせたのだと思う。だから彼の思いは自ずと、傷ついたであろうセリに向けられたのだ、と思う。

ダンは、このスキンシップとセリを諭すように言ったジョンヒョクの言葉に相当ショックだったはずだ。婚約者である自分よりも、2人の距離がずっと近そうに見えた。そしてバックミラーを長いこと見つめる彼の姿にも、大いに不安がよぎったことだろう。


これ以降ダンのジョンヒョクに対する言動は、一層不躾で高飛車なものになる。もはや、以前のような気持ちで彼には向き合えなくなってしまったであろうから(「こじらせキャラ」と称した方がいたが、すごく納得!)

一方、残されたセリは、捨てられたようでみじめな気持ちだったろうが(脚本)、ジョンヒョクのあの真剣な眼差しがその思いを少し軽くしたのではないだろうか。「すぐ戻る」と言う言葉もうれしかっただろう。

だからすぐに戻らなかったジョンヒョクに全身で怒っていた😡それがすごく可愛いかった😍きっとジョンヒョクもまんざらでもなかったと思う、あの38度線、いや、缶😍


ところでダンは、この10年ジョンヒョクの抱えている苦悩に気づき、寄り添おうとしたことがあったのだろうか。彼女の自己中心的な内面を想定すれば、人を思いやる意識も余裕もなかったであろうし、そもそも3回しか会っていなければ、分かるはずもなかっただろう。

彼女は、ただ自分が愛されることだけにしか関心がなかっただろうから。初恋とはそのようなものらしい。

だから、兄を亡くしたジョンヒョクの苦しみを知っていながら(第8話)、自分の感情を抑制できず、第9話「殺したわ。だからあきらめて」などと言えてしまう。 ダンが彼の良きパートナーになるには、エンパシー(他者の感情や経験を理解する能力)がなさすぎたし、他者を思いやる優しさに欠けていた。

ジョンヒョクという人は多くを語らない人として描かれているが、感情が手に取るようにわかる人だ。彼の隊員達も評しているように、根が正直で、本心を隠せない。ダンに対しては、常に態度が硬くて無表情。彼女に笑顔を見せたシーンは見当たらないし、一貫して冷淡な態度である。セリに対する態度からは想像もできない。

思い出してみてください。第5話ダンを平壌に送った後の別れのシーン。彼女を無表情に見つめるジョンヒョクの眼差し。

かたや、キャンドルを掲げてセリを探し回り、見つけた時の心憎い一言

「今回は香りがするロウソクだ。合ってる?」

そして優しさ一杯の微笑み。セリは間違いなくときめいたと思う。ダンを「好きじゃない」ではなく、むしろ「嫌いなタイプ」だったのではないだろうかとさえ思う🥺

ダンは、スイスにジョンヒョクを訪ねた時点で、彼が自分に関心がないことにすでに気づいていた(第16話「私に無関心だった」と言っている。第4話ジョンヒョクも「1回あっただけで親しくなれない」なんて言っている。セリとは急速接近だったのに。) 

さらに10年間で7回しか会っていないという現実(うち2人だけであったのは3回だけ。脚本には第5話ジョンヒョクは何回会ったかも知らないとある) また第3話叔父さんから「彼からお前のことは一切聞いてこない」と言われるなど、2人はいい関係になれそうにないという予兆は沢山あった(第7話ク・スンジュンに言われるまでもなく)

だが彼女はそんな予兆に気づきはしても、その現実を認めたくなかったのだろう。なんと言っても初恋の人なのだから。どんな事があっても結婚したいと望んでいたはずだ。

第7話ク・スンジュンとの会話に、ダンの幼稚で浅薄な内面がよく表れているー結婚すれば全てが解決すると思っているナイーブな内面が・・・。

第7話で結婚式の日取りをク・スンジュンに聞かれ、うれしそうに答えていた。この時、私にはこのダンの笑顔が不思議だったし、大いに違和感を感じた。

 何故なら、まず、この日取りを決めた席の前に、二人の間で交わされた冷た
  い会話があったからだ。

     「だから仕返しです・・・」!!!

  このダンの不快な言動に対して、ジョンヒョクは傷つける言葉は使っていな
  いが、ニコリともしないで、畳みかけるように言った言葉。

                「約束したろ?やるべきことは協力すると。協力するよ。他にはない
     か?言ってくれ。」

     (”I promised to cooperate with you on things that need to be
      done. I’ll cooperate. Is there anything else I need to do?
       Tell me.  I’ll do it”)

  近寄り難い冷ややかな雰囲気が伝わって来る。ダンを追い詰めるような言動
  に二の句が継げず、立ち去らざるを得なかったダン。何か言いたかったけど
  言えなかった(と脚本にある)

  そのすぐ後、日取りを決めた席でのジョンヒョクの表情は、ダンが不快感を
  抱くほど冷たかった(脚本第6話)。彼の母親でさえ、息子の冷たい表情に気づ
  いていたぐらいだ。後になってダンの母親も回想している。


だから、婚約者があんなに冷たい表情で結婚の日取りを承諾したことに対して、不快感を感じたのに、どうしてうれしそうにしていられたのかと。

いやそれよりも、10年も経っているのに二人の間には硬直した冷たい雰囲気しかなく、会話も成り立たないほど少しも打ち解けた関係になれていないことに、ダンは疑問、不安、不信感を持たなかったのだろうかと。こんな状態で結婚することに何の懸念も抱いていなかったのかと。

第6話「結婚の日取りが決まってうれしいだろう」と尋ねる叔父さんに、「日取りが決まってうれしいのは、私だけかしら」なんて答えたのは、冷たい表情だったジョンヒョクへのイヤミだろうか。恐らく?(その程度にしか感じていなかったということだろうか?)


だからジョンヒョクの家の前で、いそいそと髪を直して媚態を作り、ウキウキしているダンの様子を見た時、

「この人、やっぱり何にも感じてないし、可哀想なくらい何にも分かってないんだなあ」と思ってしまった。

明らかに、自分の思い込みでしか物事を見ていない。第3話伯父さんとの会話「私の帰国を知っているのに行かないのも変でしょ・・・」に、それが端的に表れている。

「知っているのか?お前のことは何も聞いてこないから言ってない」

と伯父さんに言われるまで、自分の思い込みに気づいていない・・・。中学時代に抱いた彼への思いが、一方的な思い込みだったように(第8話中学時代のダンをジョンヒョクは全く認識していない。お互いを知らなかったと言っている)

だから結婚を拒絶された時は、相当の衝撃だったはずだ。青天の霹靂とはまさにこの事だと思う。1週間前に日取りを決めたばかりなのに😱 しかし、

第7話「君を好きでなくても結婚できると思っていた」とまで言われて、結婚を拒絶されても(大抵、この時点で終わったと思うものだが・・・)、「彼女を傷つけたら次男まで失うと父に伝えろ」と言われても、結婚が延期されたのは「好きな人を帰国させるためだった」と知らされても、「君のは愛ではなく、執着心だ」と諭されても、ジョンヒョクとの結婚を諦めてはいなかった(と思う⁈)

だが第13話で「セリを守るためにソウルに行った」と聞かされた時、ダンは涙を流す。そこで流した彼女の涙の意味は、何だったのか・・・・・?

→ 第7話病室で、ジョンヒョクにぶつけた自分の思いが、全てくつがえされ、それらの思いは自分の勝手な思い込みだったことに、気づいたからだろう・・・。

ー「セリが去ってもジョンヒョクの彼女への思いは消えなかった」、「セリへの愛は錯覚じゃなかった」、「自分にときめかないのは結婚が決まっていたせいではなかった」

ー「(彼女を守るために)自分の身に何か起きても仕方がない(第8話)」という彼の思いは本物だった。セリを守ろうとソウルまで行ったジョンヒョクの思いの強さを知ったことで、自分の一縷の望みが断たれたことを悟ったからだろう。


彼女もここに来て、残酷な事実を知らされ、やっとジョンヒョクを諦めたのだろう。ここまで事実を突きつけられないと諦められなかった彼女の彼に対する執着心もすごいが、その後思い込みから解放されると、立ち直りも早い。さっさとク・スンジュンに乗り換える、その変わり身の速さもすごい!!!散々コケにしてきた男なのに・・・・・。

                                                   ※ ※ ※ ※ ※

そんなダンと比べたら、セリはジョンヒョクの心が理解でき、彼の抱えている悲しみを癒すことができた女性だった。

第5話「間違った電車が時には目的地に運んでくれる」

こんな素敵な例えで、ジョンヒョクの悲しみに寄り添うセリの感受性と深い思いやりの心。自分の苦しい半生があってこそ他者をよりよく理解できたのであろう。そして、その苦しかった自分の過去さえ、電車の例えで笑い飛ばすセリの精神力。そして、

「私が去った後もあなたには幸せでいて欲しい」のセリの一言。

ジョンヒョクが魅かれてしまったのも無理はない。歯を見せて笑ったジョンヒョクが素敵でした❣️セリが言ったこの言葉に対しては、第9話の別れのシーンで、ジョンヒョクがセリに返している。

「・・・・決して孤独にはなるな。・・・・僕がいるから。いつまでも幸せでいてくれ。それが僕の願いだ」と。

セリとの出会いがジョンヒョクに与えたインパクトは、強烈だったはずだ。ジョンヒョクは初めて出会った時からセリに惹かれていた。ダンに接する時のジョンヒョクと同じ人物なのかと疑ってしまうくらい。どんなに無関心を装っても彼のセリへの思いは隠せなかった。

だからセリも、そんな彼の優しさに、たびたび感激している。

そっと差し出された一杯の水、「怪我はないか」の一言と優しい眼差し、市場で買ってきたたくさんの品々、ハンカチで髪をしばる行為、自転車でのお迎え、おいしいコーヒー、豆もやしのスープ、アロマキャンドルを掲げてのお迎えなどなど。それより何より、家の前で別れたはずが、二重警護でついて来て自分を守ってくれたりと。

ダンは、いわゆる母親が決めた結婚をして母の思いに応え、夫に愛される人生を送りたいと思い描いていたのだろう。すでに結婚できないと言われているのに、第8話どんなことがあっても婚約者と結婚し、誰よりも幸せに暮らすから心配しないでと、母を慮って嘘をつく。

(自分の母親のことは思いやれるのに・・・。ダンには、身近な人へのシンパシー=共感はあっても、他者を思うエンパシー=他者の心情を理解する能力、がなかったということだろう。未来の夫になる人の心も理解できずに、ただ結婚という願望に取り憑かれていただけなのではないか)

一方、ジョンヒョクの母はこの結婚に乗り気ではなかったと思う(第5話)。夫が一方的に日取りを決めたことにも不満があったろうし、なによりも心を閉ざした息子がずっと気がかりだったはずだ。そして、あの時の息子の冷たい表情が気になった。

「息子はこの結婚を望んでない」と感じたのだろう、母親の勘で❣️

ダンは、あの意地悪そうな女友達と同じように、この年で結婚できていない女は人生の負け組みたいな価値観=伝統的結婚観を持っていたのだろう。

だからジョンヒョクとの結婚式が延期になった時、結婚できなかった自分に向けられた女友達の優越感に耐えられず、ク・スンジュンを迎えに来させ、みんなに見せつけることで自分の面子を保ったのだろう。

そこまでして彼女が守りたかったものは何か?今更つぶせない勝気な女の体面か🤷‍♀️こんなところが「愚かな女」に見えてしまう。多くの視聴者が「憎めない」と言う寛大な気持ちにはなれない。ク・スンジュンには可愛い女に思えたのだろうが・・・。

それにしても、ダンの女友達はダンに対してなぜあんなに意地悪なのだろうか(嫌っているとしか思えない。ダンの不幸を喜んでいるようにも思えるー脚本) ダンも負けず劣らず意地悪な女ではあるが。

これはダンが友達と友好的な信頼関係が築けていないことの証であろう。彼女は友達から愛されて来なかった。

こんな交友関係からは、優しさとか思いやりとかは醸成されない。彼女の言動に温かみや親しさや優しさを感じないのは、こんな人間関係の中で生きてきたためでもあるのだろう。だからク・スンジュンにかけられた言葉は、キツくても優しさがこもっていて、頑なだった彼女の心に届いたのだろう。


自分自身の未熟さや高慢さに気付けず、他者を理解し、思いやれないダンーーー

ー第9話「彼女より私が先に好きになったのに、ダメなの」と真剣に言えてしまうナイーブさ。ク・スンジュンに「バカだなあ」と言わせるほど愚かに見えた。でも彼には可愛い女に映ったのだろう。

ー第5話「恋愛が抜けているわ。結婚するんだから恋愛しないとね。協力してね」 (英語訳だと”We should love too. Please cooperate.” )

恋愛をこんな形で表現する彼女のセンス。恋愛はしようと思っても出来るものではあるまいに。相手に対する配慮が全く欠落している。

ー第6話 平壌ホテルで権力を使ってジョンヒョクの部屋番号を聞き出す高圧的で人を見下した態度。そのあとのジョンヒョクへの言葉「だから仕返しです」

(嫉妬と怒りにかられて吐いた不快な言動に対して、彼から返ってきた冷たい返答。元はと言えば、自分の言動が自分を不快にしたのに。そのことに思い至っていない)

ー第6、7話 ホテルや店の従業員への横柄な物言い(激情にかられた自分の醜い振る舞いが見えていない)    

ー第5話 おばちゃん達への無礼な返答。初対面の人へのせめてもの礼儀と思いやりさえ示せない大人げなさ。    

ー第13話 悩みを抱えた他者に寄り添うエンパシーの無さ。そんな彼女が放つ一言一言に、驚きと不快な表情を浮かべていた舎宅のおばちゃん達(ク・スンジュンが思わずフォローしたほど、いたたまれない雰囲気だった😱) ーーーー

                 一方、

孤独感を抱え1人で戦って起業し、自分の地位を築いてきたセリーーー

内面の豊かさが多いに異なる。経営者として経済活動をするには、人間を理解する能力が絶対必要だ。だから他者の心情が理解できるセリには細かい心配りができる。

ー第4話酷評されたドレスの作り手への気遣い。

ー第5、6話ジョンヒョクとダンの気まずい沈黙、第9話ジョンヒョクを叱責する父親への取りなし。空気を読んで、緊張した状況を解消しようとする気配り。

ー中隊員やおばちゃん達の心をつかんだ心憎い言動。第4話誕生会での「きれいな人の隣には座りたくない」や「私より年下?」は傑作だった。一瞬にしてヨンエさんの心をつかんだ。

ー第5話ジョンヒョクがダンを送って平壌に去った後、ビールを持ち寄ってセリを慰めるために集まった彼女達。セリだからこその厚意だろう。

ーセリが北朝鮮を立つ前に彼女達に残したカードには、セリの誠実な心情が綴られており、それに彼女達は涙した。そして、セリが彼女達を思って発売した化粧品「恋しさ」にも。どこまでも、セリの他者に対する温かい思いが感じられる。

セリの魅力は、もちろんジョンヒョクの心もつかんだ。船渡しの港に向かう車の中で(第3話)。

「もう会えないかしらね。」「アフリカにも南極にも行けるのに、よりによってあなたはここにいるのね」

出会って数日なのに、セリの思いがこもったグッとくる表現だった。それに対して、「お互いさまだ」と言った時のジョンヒョクのいい表情。ちなみ私は英語訳の方が気に入っている。

“It’s a shame that you live here”とセリが言うと
“It’s a shame that you live there.”とジョンヒョクが返す。

それに比べ、同じ車の中での会話なのに(既出)、第5話ダンの「結婚するんだから恋愛しないとね。協力してね。」 に対するジョンヒョクの驚いた表情と押し殺したような声のトーン。「努力するよ」の一言。背筋が凍ったのではないか。

「ジョンヒョクとダンは似ている」というコメントを目にしたが、私にはそうは思えない。ダンの感性はかなり荒削りだと感じる。彼女の所作にもそれが表れている。

ジョンヒョクという人は、繊細な内面を持った人だと思う。彼の数々の言動にそれが現れている(俵万智さん言うところの「はにかみと思いやり」の人である)。

ダンの前記の発言に対するジョンヒョクのショックを受けたような表情。彼の感性から言ったら「興醒め」して固まってしまったんだろう、きっと😱そんな彼だから、言動に繊細さや思慮のないダンを好きにはなれなかったのだろう(ジョンヒョクの母もダンの母に同じような感情を抱いていたのではないだろうか)


幼くして人の顔色をうかがうような暮らしの中で、セリの心は早くに大人になることを余儀なくされたのであろう。ダンには可哀想だが、内面が成熟していたセリにはジョンヒョクのことがよく分かっていたのだ。

第4話ジョンヒョクの昇進を大佐夫人に頼む時のセリの会話:

「見た目は誠実そうだが社会性がない」とか「尊敬心でいっぱいのくせにうまく気持ちが表現できない」とか。

数日しか経っていないのに、すでにジョンヒョクの性格の核心をとらえている。

言い得て妙な表現で、うまく取り入っている。なかなかの洞察力👍日常を共にしたことから沢山の気づきもあっただろう。恐らく彼が母胎ソロであることも感じ取っていたかも(第8話「やっぱり、、、」)❣️

さらに悲しみや孤独を知るセリの深い思いやりの言動がみんなを惹きつけたのだろう。もちろんジョンヒョクも。彼女の素直な言葉と何よりも機知に富んだ言動がジョンヒョクをときめかせ、閉ざしていた彼の心を開いたのだろう。魅力的なセリのリードがなければ、2人の関係は進展しなかっただろう(2人の関係性においては、セリが主導権を握っていたと思う)

                                                   ※ ※ ※ ※ ※

感情をむき出しにしている自分にも気づけず、他者の心に寄り添う言葉も言えず、エンパシーのないダンでは、ジョンヒョクの心を手繰り寄せることはできなかったのだ。第7、8話でかわされる「守る」という言葉が端的にこのことを示しているーーー

「私も婚約者を守るためにどんなことでもするつもりです」

ダンのその言葉の本音は、「セリからあなたを引き離すためにどんなことでもするつもりです」ではないだろうか?どんなに真剣に言っても、他の女に自分の婚約者を渡してなるものかと言う嫉妬心と、彼に万一のことがあったら自分が不利益を被る(結婚できなくなってしまう)という彼女の思惑が、透けて見える。

ジョンヒョクの「セリを守る」とは、その言葉に込められた思いが全く違う。彼のその言葉には、自分に何が起きてもそれを受け入れるとの固い覚悟があり、その行為は、完全に利他的である。

だから、ダンは自分の思いが彼に受け入れられないと分かると、今度は「きっと後悔する」と脅しにかかり、保衛部に通報しようとさえする。さらに、ク・スンジュンには「彼が死のうとかまわない」とまで言う。

こんな彼女が「婚約者を守る」などと真剣そうに言っても、ジョンヒョクの心には全く響かない。そして、そんな浅はかな言動をしている自分の愚かさにも気づかない・・・ここが一番決定的で可哀想なところだ❗️

それに対し、第7話帰国しなかったことをジョンヒョクに責められても、その場では何も言わなかったセリ(「あなたを救うために残った」と言ったら、彼の心に負担を与えてしまうから・・・)。

だから看護師に自分がセリに救われたことを知らされた時、セリの思い、優しい気遣いに彼の心は揺さぶられた。そのあと「私だって帰りたかった。でもできなかった。私も一度くらいあなたを守ってあげたかった」と泣きはらした顔で明かされた時、ジョンヒョクはこらえていたセリへの思いが抑えられなくなった。

『言葉というのは、真の思いに裏打ちされたときに、生き生きと相手に伝わるということだろう


ダンの悲劇は、ナイーブで自己中心的な自分自身を自覚していなかったことに加え、他者を理解し思いやる能力がなかったことだろう。彼女の全ての言動が、それを物語っている。

図らずもセリが漏らした(ジョンヒョクが)彼女には惜しい」の一言は、2人のその後を暗示していた。


セリは現代の女性達が憧れる1つのロールモデル(強さだけでなく優しさも併せ持つ自立したデキル女性として)たりうるが、外見がどんなに美しくても、ダンには温かい人間性、洗練された感性と言語感覚を感じない。

もっと真摯に、謙虚に、自分の内面を磨いた方がいい、と思う。「柔よく剛を制す」ー率直で、しなやかなアプローチの方が高飛車な言動よりずっと人々を惹きつける!

好きな人の前で素直に振る舞えない、自分をうまく表現できない、優しく接しられない、挙句の果てに振られてしまったダンに、多くの視聴者は共感を覚えるようで、ダンを支持する声は多い。

でも、ダンのような人物が職場のチームとか同僚にいたら、どうだろうか?対等に彼女自身と向き合ったら。思慮のない言動で不快にさせられるくらいなら、私は彼女とは距離を置きたい。

以上がダンについての私の考察である。どうしても大勢の方々の意見に同意できなかった自分の思いを書いてみた。さて、ダンという女性は、多くの人が言うように「少女のようで、プライドが高く、不器用」な女性だろうか⁉️はたまた「高貴」という表現は彼女にふさわしいだろうか?

私には「稚拙で、虚栄心が強く、思慮の足りない、品性に欠ける(もっと言ってしまえば言動に繊細さとセンスがない)」女性と言った表現の方がしっくりくるのだが

※(2022年5月加筆)

一年立って、ふと思いついたこと。現実の状況から言ったら、ダンは婚約して10年も待たされて、挙句の果てに「好きな人が出来たから結婚できない」なんて言われて振られた可哀想な女の立場だ。そんな仕打ちをするジョンヒョクはひどい男であるはずなのに、ちっともそう感じさせないのは、なぜか?

「こじらせキャラ」のダンの評価については、ジョンヒョクのひどい仕打ちを考慮してあげないとフェアじゃないかもしれないな、なんて思った次第である🙇‍♀️。

恋というのは、一旦相手の心が離れてしまったら、その恋は終わりになる。どんなことをしても相手の心を取り戻すことはできない。だが頭でわかっていても、その思いを断ち切れない。そこが人間の悲しさだ。

でもダンの場合は、初めっから、ジョンヒョクにその思いがなかった、いわゆる片思いで、相手が心変わりしたわけではない。だから彼とは初恋と言えるほどのときめきを味わうことはなかっただろう。ク・スンジュンが初恋の人と言える人だろう。


『ダンとクスンジュン』

第13話ジョンヒョクがセリを守るためにソウルに行ったと聞かされたあと、ク・スンジュンに乗り換えるダンの変わり身の速さ‼️多くのコメントには、2人の恋が可愛くて素敵とあるが、これも私には感情移入できなかった点である。

ク・スンジュンは、そもそもセリが好きだったんじゃないのか。

セリがク・スンジュンの下心ありありの誘導に引っかからないで、本当によかった。元はと言えばク・スンジュン自身が引き起こした問題なのに、セリを利用して助かろうとした身勝手な男だ(そもそもジョンヒョクが撃たれたのだって彼のせいだ。それをまんまとセリの問題にすり替えて引き離そうと試みる)😤 

結果は、セリのジョンヒョクへの愛が打ち勝った😍ク・スンジュンの言っていることは正論だろうか。

本当の目的「自分とダンの利益」のための悪意ある言葉だ。完全に利己的な言動である。ジョンヒョクを愛しているセリの心理を利用して、諦めさせようとした卑劣な心理誘導である。さすが詐欺師❗️

でも最後は、自分が使ったのと同じ手口(愛する心を利用されて)で、命を落とすことになると言う皮肉。ジョンヒョクの協力要請に不承不承応えて、セリを救ったこととジョンヒョクのソウル行きを手伝ったことが、せめてもの罪滅ぼしだろう。

「ジョンヒョクが去ったのは、自分に魅力が無かったからなのかと、ちょっと自信を無くした。」と言うダンに、ク・スンジュンは「彼が去ったのは、君に魅力がなかったからではない。」と言って慰めていた。

が、実際ジョンヒョクにとって彼女は魅力的ではなかったはずであるから、いつものク・スンジュンのようにもっと正確に言ってあげるべきだった。ダンのためにも。

ダンは、すでに結婚できないと告げられていた訳だから、ここで謙虚に自分を見つめ直すいいチャンスだったのに:

「ジョンヒョクのような人物に何故自分は愛されなかったのか?」
「ジョンヒョクが求めていた女性とはどんな人なのか?」
「そもそもジョンヒョクとはどんな男性だったのか」
「ダンはジョンヒョクをどれほど理解していたのかーダンにそんな意識も心のゆとりもあったとは思えないが」

結婚願望に取り憑かれ、単に恋に恋していただけではなかったのか」とか。
この一言にに尽きると思う。

ダンは、ク・スンジュンが言う「可愛い」とか「魅力的」とか「スッピンでもきれい」とかいう表層的で甘ったるい褒め言葉に満足し、さんざんコケにしてきた男にすんなり乗り換えてしまう

(彼女の内面の幼さから言ったら自然な流れなのかも知れない。長きにわたり、こんな言葉も言われずにきた彼女にはうれしい救いの言葉だったのだろう。だから彼女にとって、絶対ジョンヒョクでなければならない理由などなかったのだ)

ク・スンジュンも自分の目論見が失敗したら次に切り替える、その変わり身の速さ。それぞれの目的のために協力し合ったものの失敗に終わったら、あっさり恋愛関係に進んじゃうというすごく短絡的な展開。

「敗者は結びつく」と言われるが、私にはどうも釈然としない。ま、百歩譲って恋に落ちるとはそんなものなのかもしれないが、10年の恋も一瞬にして塗り替えられてしまうもんなのだ(そうやって失恋の痛手から立ち直ることもできた!)

最後が悲劇的な結末になったために、視聴者からは多くの同情を得ることになったのだろうが、好きな人の死を前にして、ダンはやっと素直な言葉が言えた。愛の言葉は出し惜しみせず伝えれば良かったのに、セリのように❣️第6話空港へ向かう別れのシーン。

「あなたと違って、私は恋しくなると思う。時々思い出すと思う。いえ、何度も」「でも私達連絡も取り合えない。それが残念だわね。」「握手じゃなく、抱きしめてよ。最後なのに。

この時のジョンヒョクは自分の思いを閉じ込めたままでした。それはジョンヒョクの愛情表現の形です。元の世界に戻っていくセリの心に自分への思いを残させたくなかったからです。だから自分のことは忘れろとまで言う。でもセリは言うべきことを言葉にして伝えたのです。こんな風に言えるセリの勇気、素直さ。素敵です。

ダンは、彼の死の直前になってやっと本当の気持ちが言えたけど、ずいぶんと心残りだったことだろう。押し殺していた思いを伝えきれないで・・・・・。彼女にはこんな詩を捧げたい。

ー「最後だとわかっていたなら」ー

(略)

あなたは言わなくても
分かってくれていたかもしれないけれど
最後だとわかっていたら
一言だけでもいい・・・「あなたを愛してる」と
わたしは 伝えただろう

たしかにいつも明日はやってくる
でももしそれがわたしの勘違いで
今日で全てが終わるのだとしたら、
わたしは 今日
どんなにあなたを愛しているか 伝えたい

若い人にも 年老いた人にも
明日は誰にも約束されていないのだということを
愛する人を抱きしめられるのは
今日が最後になるかもしれないことを
 
明日が来るのを待っているなら
今日でもいいはず
もし明日が来ないとしたら
あなたは今日を後悔するだろうから
 
微笑みや 抱擁や キスをするための
ほんのちょっとの時間を
どうして惜しんだのかと
忙しさを理由に
その人の最後の願いとなってしまったことを
どうして してあげられなかったのかと
 
だから 今日
あなたの大切な人たちを
しっかりと抱きしめよう
そして その人を愛していること
いつでも
いつまでも 大切な存在だということを
そっと伝えよう
 
「ごめんね」や「許してね」や
「ありがとう」や「気にしないで」を
伝える時を持とう そうすれば
もし明日が来ないとしても
あなたは今日を後悔しないだろうから

(「最後だとわかっていたなら」ノーマ・コーネット・マレック/ 訳 佐川睦からの抜粋)

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