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未来の私のために。あの時何に感動したのかを思い出すために。

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今日ときめいた言葉。日常生活で出会った素敵な言葉、心動かされた言葉あるいは事柄について書いています。そんな言葉に出会った時、凡庸な日常が一瞬輝きます。ああ、私は言葉に生かされてい… もっと読む
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#学問への愛を語ろう

今日ときめいた言葉13ー「努力を続けるには、楽しむことが欠かせない」

(冒頭写真は、wowwowtennisworld.jpから転載) (2023年1月3日付 朝日新聞「フェデラーさんに聞く」からフェデラー氏の言葉) 「努力を続けるには、楽しむことが欠かせない。そして、打ち込むことによって楽しみを見いだせる。仕事を楽しめたら、義務的な苦痛から解放される。そうした感覚への到達は、必ずしも容易ではないけれど、『楽しむ』『打ち込む』のバランスにはいつも心を配ってきた」 昨年引退したテニス界のスーパースター、ロジャー・フェデラー氏のインタビュー記

今日ときめいた言葉12ー「勝てないけど負けないを目指す」覚悟が問われる時代

(2023年1月1日付 朝日新聞「『覚悟』の時代に」宗教学者 山折哲雄氏の言葉) 日本人が覚悟を求められるときに使う言葉 ー「死ぬ覚悟で」 「死」と「覚悟」が結びついたのはなぜか? 戦のなくなった世の中で武士が主君にどのように忠誠を尽くせばよいのかを強調するために、死が注目されたと山折氏は言う。さらに転機になったのは「葉隠」で「観念的に過激化させた思想」が、 「武士道というは死ぬ事と見つけたり」 である。しかし、「葉隠」には、勇ましい形で死の覚悟を促す生き方の他に、も

今日ときめいた言葉11ー「絶望を救うのは、日常そのものだけなのです。朝のコーヒーの一杯でもよい。何か人間らしいことによって、人は救われるのです」

(2023年1月1日付 朝日新聞 「誰もが孤独の時代 人間性失わないで」 スベトラーナ・アレクシエービッチさんの言葉から) 彼女は、「戦争は女の顔をしていない」で独ソ戦を戦った女性兵士の声を集めて戦場での生々しい現実を描いた作家で、ノーベル文学賞受賞者でもある。他にもアフガンに侵攻したソ連兵やその遺族、チェルノブイリの事故の遺族や被災者を取材して社会や時代の犠牲になった人々の声を作品にしてきた人でもある。 そんな絶望の淵にいる人々を見てきた彼女が、 「絶望を救うのは日常

教育とは日々の暮らしの中で手渡されるのだと実感した日−2023年1月1日

アメリカはまだ大晦日。年越しそばを食べているのは、長女の家族(下の2枚)と次女の家族の食卓(上の写真)。 長女のうちは、うどん。 こちらは次女のうちの食卓 年越しはお蕎麦を食べなさいと教えたわけではないけど、長いマレーシア滞在の後、日本に戻って家族5人で過ごした短い生活の中で娘たちが感じ取っていたアイディアなのだと思う。 マレーシアのインターナショナル・スクールにいた時、「子育てで大切なのは、良い教育と栄養のある食事」とアメリカ人のママとよく話した。 日本に戻った時

工学系女子を増やすために“女子枠“設定ーあなたは理工系を選択しますか?

(2022年12月20日付 朝日新聞 「工学部入試 広がる女子枠」より) 日本の政府や教育界そして産業界も、あまりに無節操だと思いませんか? ちょっと前まで、大学の医学部で女子受験生を不当に不合格にしていたのに、今度は工学部に女子枠を設けてまで工学系女子学生を増やそうとしている。 世界の水準を気にする日本政府にとって、OECD(経済協力機構)の示した数値はちょっと、いやかなり現状そして将来を憂うべきものだったに違いない。 日本における女性の大学入学者のうち理工系に進学

今日ときめいた言葉10ー「怒りを高潔さに変える。物を書く基本はそこにある」

(2022年12月21日付 朝日新聞 評論家 川本三郎氏 寄稿「思い出して生きること」より、心に響いた3つの言葉) ❶「かつて人間は怒りではなく、高潔さで苦難に立ち向かっていた」 (コルム・トビーンの小説「ノーラ・ウェブスター」からの言葉だそうだ) 「むろん『怒り』は人一倍ある。しかし、『怒り』を生のままで表現するのではなく『高潔さ』に変える。ものを書く基本はそこにあるのではないか」               *** ❷「今Ukraine(敢えて英語にしてあります)

”セントルイス・ブルース”ー「生きていたいと言う希望」であり、「人間であることを自覚させてくれた」曲

                        (写真はセントルイスの風景) https://youtu.be/xte8OH2W9iM (YouTubeから転載) NHKドキュメンタリー「世紀を刻んだ歌2 セントルイス・ブルース」から この有名なジャズの名曲“セントルイス・ブルース”は、1914年にC.W.ハンディによって作られて以来一世紀以上にわたって世界中で愛され続けている。2002年時点で録音回数は1500回に及ぶという。 ハンディの長い放浪生活、貧困と差別の中

私たちはなぜ学ぶのか(9)ー「自転車が乗れた時のように、何かが身についた前と後では風景が変わる」その新しい世界を観る喜びのため

(2022年12月11日付 朝日新聞「知は力なり」慶応大学教授(物理学) 松浦壮氏の言葉から) 「学ぶ」ということは、 「ひとたび自転車に乗れてしまったら、自転車に乗れない自分を想像できないように、何かが本当の意味で身についた前と後では風景が変わってしまうということである」 松浦氏は、幼い頃父親から教えられた数字の不思議に触発され、数の世界への【眼】が開いたと言う。 ー父親の話というのは、2+4=6、6÷2=3、2と4の間の数字は3。「足して半分にするといつも真ん中の

「初恋」の歌を味わう

「初恋」と聞けば、島崎藤村のあの詩だろう。 まだ上げ初めし前髪の林檎のもとに見えし時 花ある君と思いけり だが「初恋」というタイトルの詩は、石川啄木にもある。私がときめいたのは、「一握の砂」に収められているこちらの「初恋」である。それも、この「初恋」に越谷達之助という人が曲をつけ、オペラ歌手が歌ったその作品にである。 砂山の砂に腹這ひ初恋のいたみを遠くおもひ出づる日 この詩を読んだだけでは、きっとその情感はここまで伝わらなかったと思う。この美しいメロディーとソプラノの

今日ときめいた言葉9ー「日本人は日本語を実に粗末に扱ってきた」

「人間をある人間たらしめるのは、国家でもなく、血でもなく、その人間が使う言葉である。 日本人を日本人たらしめるのは、日本の国家でもなく、日本人の血でもなく、日本語なのである。それも、長い<書き言葉>の伝統をもった日本語なのである。 (「日本語が滅びるとき」ー英語の世紀の中で 水村美苗 著) それなのに我々日本人は、長い歴史を通して日本語を粗末に扱ってきたと水村氏は言う。1500年前は漢文(真名)に対する大和語(仮名)という下位に来る言語として、明治近代以降は西洋語に対す

「女性のいない民主主義」(前田健太郎 著)を読むー女性が締め出されている日本、それでも民主主義国家と言えるのか?

拙文「『民主主義とは何か(宇野重規 著)』を読む」でも書いたように、私は日本が民主主義国家であるということに大いなる疑念を持っている。 そんな私でも、この本「女性のいない民主主義」に出会った時、自分の意識から女性の視点で政治や社会を見る意識が欠落していたことに気付かされた。女性である自分がその立場で民主主義や政治を考えていないことを認識させられた。 「民主主義とは、政治指導者が、競争的な選挙を通じて選ばれる政治体制を指す」と定義されるなら、それは「男性の民主主義とは」と言

「自由への手紙」(オードリー・タン[語り])を読むー「誰かが決めた『正しさ』はいらない」

若干35歳で台湾のデジタル担当大臣に就任し、今回のパンデミック対策でマスクの在庫確認ができるアプリを導入した人として名を馳せた。さらには、高いIQ指数(測定可能な測定値160)を持ち、学校教育は14歳で自主退学。そして自身はトランスジェンダーであることを公表している。 何から何まで我々とは違ったバックグラウンドを持つタン氏の自由論。でも読み終わって思ったことは、普段自分が感じていたこととおんなじだということである。ずっと自分が変だと感じたり不快に思っていたこと、もやもやして

“ Stay hungry, Stay foolish ” (ハングリーであれ、愚かであれ)ー生きることの意味を学び直す

上記の言葉は、アップルの創業者 スティーブ・ジョブズが、2005年のスタンフォード大学での卒業式のスピーチを締めくくった言葉である。(この時ジョブズは、すでに癌に犯されており、6年後に亡くなっている) 何故かこの言葉に心揺さぶられた。これから社会に飛び立っていく若者に対して、大企業を築き上げた経営者の口から発せられた餞(はなむけ)の言葉が、実利的なものではなく、ありきたりで教訓的なものでもなく、意表をつく言葉であったからだ。 でもこの言葉には、それを受け取った者を奮い立た

「民主主義を信じる」(宇野重規 著)を読むー「日本社会は批判に開かれ、常に自らを修正していく能力を持っているか」

本書は、下記に掲載した書籍「民主主義とは何か」と同じ著者によるものである。2016〜2020年まで東京新聞に連載した「時代を読む」の文章をまとめたものである。 この「民主主義を信じる」を最後まで読み「あとがき」を読んだ時、この著者が日本学術会議により推薦された会員の中で、任命を拒否された6名の一人だと分かった。不覚にもその名を知らずに読んでいた。 この2冊を読み終わった時、そこから伝わってくる著者の民主主義に対する強い思い、確固たる信念に大いに勇気づけられた。だから「民主