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New York Cityという名の楽曲と、思い出

2021年に入り、4曲目のオリジナル曲“New York City”をリリースした。
都市の名前を冠したダンストラックシリーズとしては、“Tokyo”に次ぐリリースとなる。
私たちAmPmは、毎回異なるボーカリストを迎えて楽曲をリリースしてきたが、これにはボーカリストを多くの人に紹介していきたいという側面もあり、一つのコンセプトにしている。一方、今回のようなダンストラックシリーズには、リリースの度に「ダンストラックをベースに...」と言っておきながらも、自らの楽曲においてスタンダードなダンストラックをリリースしていないことに違和感を感じたこと。また、DJとしてライブ出演する機会がありながらも、持ち曲の中でダンストラックが無かったが故に、他のアーティストの楽曲を使うことも多く、自らのオリジナルでダンストラックを作っていかなければと痛感していたことが背景にある。
また、コロナ禍においては、オンラインライブを実施するといったことも検討したが、DJとしてやるには楽曲の“許諾”問題もあり、やはり自らの楽曲を増やしていく必要があると明確な課題があったことも一つの理由といえる。
別の理由として、AmPmのクリエイティブの根源にもなっている、Sleep No Moreを観た時だったり、ベルリンのクラブでも感じた「言語を越えるクリエイティブを作っていく」という部分では、ボーカルが入る歌物よりは、ダンストラックの方が表現が適しているのではと感じたことも理由といえるでしょう。
この状況下で渡航することが出来ていませんが、私たちの日々のアイデアソースである“旅”を軸に、今後も都市の名前を冠したダンストラックをリリースする予定であり、今回がその第二弾として“New York City”を題材に楽曲をリリースしました。

| New York Cityを選んだ理由

私たちAmPmの一つの特徴として、仮面を被って活動していることが挙げられます。このきっかけになったのが、Sleep No Moreという演劇を観たことでアイデアが浮かびました。この演劇は、ホテル全館を使って繰り広げられるもので、観客は仮面を着用し、館内を自由に移動できます。演者は一切のセリフがなく、演技が進められるのですが、不思議なことに物語が自然と伝わってきます。言語なしで表現する演技の凄さはもちろんですが、館内のセット、照明、音響などを含めて高度なトータルクリエイティブを体感した私たちは、大きな感銘を受けました。

これとは別に、音楽は国境を越えるといいますが、実際には大きな壁が存在し、人種による差別が今も存在していると感じています。
特にアジア人においては、その傾向が顕著といえるでしょう。見た目で楽曲の良し悪しを判断されることは、私たちにとって大きな悩みです。
例えば、これまでも偉大なアジアのミュージシャンが、欧米のアーティストに楽曲提供をした事例も多数あります。アーティストとしてのアジア人の活動は、K-Popのおかげで、POPのジャンルにおいては、その傾向も少なくなったように感じますが、完全に無くなったわけではないですし、特にHip-HopやDance Musicのようなジャンルが明確なものには、アジア人を受け入れない壁を今でも感じます。
では、そのような見た目を排除したらどうなるんだろう、匿名性を強く打ち出したらどうなるんだろうと感じていたのもこの頃でした。

Sleep No Moreでの体験は、“どのようにしたら人種の壁を超えられるのか”という悩みを払拭する出来事でした。
Sleep No Moreを鑑賞後、一緒にいった仲間とNew Yorkの街を歩きながらしゃべってる時に、突如思いついたアイデアでした。

「仮面を着用したらいんだ」と。

アジア人であるという見た目を排除したらどうなるんだろうと、匿名性を強く打ち出したらどうなるんだろうと思って、AmPmを始めた結果がご覧の通りです。日本に限らず、世界の多くの人々が私たちの曲を聴いてくれています。もちろん、日本人としてアジア人としてのアイデンティティは捨てるつもりはありませんが、実際に存在する大きな壁を越えるためには結果として正当な手段だったと思っています。
(仮面を被ったことが全てとは思っていない。偶然も含めてだと思っている)

とにかく、いつか完全に壁を超えた時に、仮面を着用していようが、外していようが関係なく、音楽が評価される時が来ると信じています。
仮面を着用する理由は他にも色々ありますが、これらNew Yorkでの出来事が、私たちの活動に大きな影響を与えたのは間違いないでしょう。

| New York Cityのイメージ

私たちは二人で活動しているので、もう一人(通称:AmPm左)のイメージは本人に聞いてみないと分からないですが、これを書いている私(通称:AmPm右)のイメージとしては、最初はつまらない街だと思っていました。
初めて訪れたのは、おそらく2007年頃。アメリカを横断と縦断をしたのですが、そのスタート地点がNew York Cityでした。年齢や経験が、そのように思わせたのか「ただ大きいだけの街で、やることないし、つまらないな」と思ったのが最初の印象だったと思います。その後、海外に行くことは多かったのですが、New Yorkへの渡航は避けていたかと思います。
それからしばらく経って、2015年あたりにAmPm結成前の相方とNew Yorkを訪れたことで、印象が大きく変わったように思います。(その間にも1回くらい行った気がするが、あまり記憶がない) 
2015年以降からは、割と頻度多めに行っている気がしますが、仕事だったり、ただ何となく行ったり...とにかく、これまでの印象と大きく異なり、こんなに魅力的な街があるんだと好きな街の一つに変わった記憶があります。
ファッションや、食べ物、お酒、建築、デザインなど、きちんと知ることで、この街には確かに最先端のものが集まっていることが分かります。
私の中で、行くたびに、“新しい何か”を得られる街に変わりました。

| New York Cityの好きな場所

私のGoogle Mapには、たくさんの「スター」が付いています。
洋服屋、飲食店、ホテル、クラブなど様々です。その中でも、どこが好きかなと眺めながら3つ程選んでみました。

NeueHouse
シェアオフィス。
何をきっかけに知ったのか覚えてないですが、WEBを見た時に格好良いなと思い、NYに行った際に直接見に行きました。空間はもちろん、置いてある小物に至るまで、完璧に格好良かった。いつかここでオフィスを構えたいなと思った場所。今はどうだか分かりませんが、空いていればゲスト利用できたはず、コワーキング。いるだけで、クリエイティブになった気分に。
前向きに、仕事頑張ろうって思える場所です。
後に、AmPmとして某レーベルからオファーをもらった際に、NYにもオフィスがあるからということで、場所を指定されて向かったのが、こちらNeueHouseでした。そういうこともあるんだなと。
ちなみに、相方であるAmPm左さんに同じ質問をしたら、おそらくフォーのお店を選ぶでしょうけど、そのお店もこの近く、The Pho
https://www.neuehouse.com/
Featherweight
隠れ家バー。
隠れ家とよく言いますが、実際には隠れていないお店が多いが、ここは本当に隠れているバーです。ブルックリンにある、Sweet Scienceというレストランの中を抜けていき、看板なき扉を開けると存在しているバーです。
単純だけど、ここでカクテル飲んでるとNew Yorkに来たんだなと優越感に浸れるし、誰かと一緒にいくと“ドヤ顔”できるところです。好きな理由はともかく、ここに行くと元気が出る場所です。
この周辺にも素敵なバーがたくさんあり、飲み歩くのも面白い。このあたりに深夜営業のコンビニながら、自家製のパストラミサンドを売っているところがあるんだけど、いつも思い出せない。ただ、奇跡的に辿り着いた時に食べるそれは、最高に旨い。
http://www.sweetsciencebklyn.com/featherweight
PUBLIC Hotel
ホテル。
最後の一つは悩みましたが、何かのインタビューでも述べてますが、私たちの大きな目標の一つはホテルを建設することです。色んな国のいわゆるデザイナーズホテルというか、ブティックホテル的な所に行きましたが、良い空間であることはもちろんですが、それには働く人のノリ、食事、バー、ちょっとした小物のセンス、そして“音楽”が存在しているかどうかという点で個人的良い空間であるかと判断しています。New Yorkには、当然いくつものこのようなホテルがありますが、その中でも、最強なホテルといっても良いでしょう。70年代後半にNew Yorkに存在してた伝説のクラブStudio 54の創設者 Ian Schragerが手がけたホテル。
Studio 54を作った人が、オープンさせたホテル。これだけで説明は十分かと。
https://www.publichotels.com/

| 最後に

楽曲については、聴いた人が自由に想像してもらえれば良いと思っています。その上で、あくまで個人的な目線でいうと、連なる高層ビルの合間から見える強い日差し。新しいものと、古いものの融合。強いアイデンティティ。変化のスピード。他者を受け入れる懐の深さ。
このようなイメージがNew York Cityにあり、私たちと同様に、この楽曲からもそのようなイメージを持つ人もいるでしょう。
また、この街を訪れた人にとっては、それぞれの思い出があるでしょうし、住んでいる人には、それぞれの想いがあるでしょう。行ったことがない人にとっては、それぞれが街に対しての想像を持っているかもしれません。
この都市シリーズに、大きな意味はありませんが、都市の名前を冠して、その街をイメージした曲を聴くことで、普段考えないようなことを思い浮かべ、約4分の特別な時間を作ってほしいなと思います。
実際に、この曲を手がけた私たち自身が、New York Ciryのことを思い浮かべたことで、「あの時、仕事頑張ろうって思ったんだ」「あの時、楽しかったな」と忘れかけていた感情を思い浮かべることができました。
今回も街の風景を切り取ったMVを作っているので、ぜひご覧ください。
というわけで、私たちは引き続き、次の街に向かって制作を続けます。こちらも楽しみに待っててもらえると嬉しいです。


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