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Facebook | LinkedIn | Airbnb | Dropbox をグロースしてきた VC 手法の実演

1 | はじめに

Greylock Partners といったベンチャーキャピタルをご存知でしょうか?

Greylock Partners は、Facebook、LinkedIn、Airbnb、Dropbox 等に投資実績のあるベンチャーキャピタルです。Greylock Partners は投資先へグロース支援も行い数多くの企業をグロースさせてきました。

ここでは Greylock Partners が数多くの講演で案内している1,000億円企業に向けたグロース手法「Hierarchy of Engagement (エンゲージメント階層)」のご案内と共に、その実践方法について実演してみます。

Amplitude でもこの「エンゲージメント階層」を参考にグローバル 30,000 以上の企業に対してグロース支援を行っています。実際に Airbnb, Dropbox が Amplitude を使って Amplitude のカスタマーサクセスチームと共に日々グロース運用を行っています。


2 | エンゲージメント階層

エンゲージメント階層とは、ユーザーのエンゲージメントを高める事に主軸を置いてプロダクト/サービスの成長を高め、1,000億企業へ向けたビジネス成長へ導くといったモデルです。

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Greylock Partners は数多くの企業をグロースしてきました。その中で、これらのレベルを突破できなかった企業がどのようなダウンロード曲線となっているかを紹介しています。

次の4つの企業は PMF に成功して、いわゆる「ホッケースティック曲線」となりダウンロード数が急増するといった現象になった事を示しています。

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一方、その後のダウンロード推移ですが、急激に成長のピークを迎え以下のような結果になってしまっています。

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上記の軌跡は、それぞれ snapchat, musical.ly, Yik Yak, dubsmash の実際の推移になっています。

何故、これら企業は「ホッケースティック曲線」を生み出したのにも関わらず、その後成長が止まってしまったのでしょうか?Greylock Partners は以下の構築が十分にできなかったの分析をしています。

ユーザーエンゲージメントの構築

「ユーザーエンゲージメントの構築が重要」と言われて久しいですが、実際にどのように構築したら良いのでしょうか?このフレームワークをモデル化したのが「エンゲージメント階層」です。

次の章より、それぞれのレベルでの実践方法についてご案内します。なお、Greylock Partners の講演内容が動画で公開されています。数多くの講演がありますが、以下は Amplitude がスポンサーした講演内容になります。


3 | エンゲージメントユーザーの数を増やす

「レベル 1  | エンゲージメントユーザーの数を増やす」において重要な事は具体的に以下と述べています。

プロダクトの「コアアクション」実行ユーザー数を増やす

「コアアクション」とは何でしょうか? Greylock Partners では、プロダクトの軸となるユーザーアクションがあり、これを「コアアクション」と呼んできます。以下「コアアクション」の例です。

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例えば Facebook においては「友達になる」であったり、Pinterest においては「ピンする」といった事になります。

これらコアアクションが伴わないユーザー数の増加はいずれ成長を止めるとの意味合いを込めて Greylock Partners では以下と表現しています。

エンプティーカロリーによる成長

DAU/MAU の増加だけでプロダクトの成長を判断すると、実はきちんと栄養を摂っていない中での成長の可能性があり、いずれ成長が止まってしまう危険性が含まれてしまいます。


では、具体的にどのように運用すれば良いかを実演してみたいと思います。ここでは、Amplitude のデモデータ AmpliTunes で実演してみます。AmpliTunes は Spotify のような音楽/映像ストリーミングサービスです。

AmpliTunes のコアアクションを「音楽/映像の再生」としました。ユーザーが「音楽/映像の再生」を実行すると以下のイベントが発火して Amplitude へと送信されるように設計しています。

Play Song or Video (音楽/映像の再生の時に発火するイベント)

アクティブユーザーの中でコアアクションである Play Song or Video を発火しているユーザーがどのくらい占めているのかを「イベントセグメントチャート」で確認してみます。

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DAU 毎に Play Song or Video 実行ユーザーは 68%-83% で推移している事が確認できました。(チャートリンク)

Amplitude の無料アカウントをお持ちの方は (チャートリンク) を押下する事により実際のチャートで確認できるようになっています。

一方、コアアクション Play Song or Video を実行していないユーザーは何をしているか疑問がでてきます。「ファネルチャート」を使ってこれを確認してみます。 (チャートリンク)

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プロダクトに接触後に Play Song or Video を実行していないユーザーが 17.1% いることが判明しました。

Play Song or Video を実行していないユーザーが何をしているか確認してみます。これはコンバージョンしていない斜線部分にカーソルを置き、サブメニューを実行する事により即座に確認できます。

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Step 2 に注目してみます。離脱ユーザーの行動を確認した所、Welcome イベントを発火しているユーザーが多数占めている事が判明しました。Welcome イベントは「新規ユーザー」に対してのみ発生するイベントです。

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上記集計結果によると、過去30日で 74,882人の新規ユーザーが1日目で離脱しています。どうやら新規ユーザーのアクティベーションに難がある模様です。

早速、アクティベーションフローを確認する事にしました。10%改善するだけでも、月間 7,488人のユーザーがアクティブユーザーになってくれます。サブスク費用が月間500円として、10%向上で月間374万円強の売上げ向上が期待できます。

皆さんのプロダクトでは、このような事象は発生していないでしょうか?Amplitude 導入して頂きましたクライアントで良く判明する事例です。ご確認されていない場合は早速ご確認ください。


4 | リテンションユーザーの数を増やす

エンゲージメントユーザーを増やすフレームワーク構築に成功したら、次に注目する事が「レベル 2 | リテンションユーザーの数を増やす」になります。この場合、以下の2つが重要である事を Greylock Partners では述べています。

(1) ユーザーがプロダクトに残したデータを分析し、データドリブンでより良いサービス向上に努める。

(2) 継続してエンゲージメント向上を努め、末長くプロダクト/サービスを利用して頂く。結果、ユーザー側でも他サービスへのスイッチングコストが大きく占めるようになってしまう。

Greylock Partners では、この事例として Evernote を挙げています。ユーザーがより末長く Evernote を利用し、多くのメモを記録するように UIX の向上を努めます。これにより、より多くのメモが記録されるようになり、Evernote が「マストハブ」状態になり、エンゲージメントだけではなく、他サービスへ転換するスイッチングコストも高まってしまう事になってしまいます。

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では、早速実演してみます。仮に AmpliTunes でコアアクションを行うリテンションユーザーを以下と定義しました。

「過去30日で Play Song or Video を 50回以上実行」しているユーザー

このユーザーコホートを Amplitude で表現すると以下のようになります。

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収益結果を AmpliTunes では 50,993 人のユーザーが該当しています。(かなり多い!?) このユーザーが他のアクティブユーザーと比較し、どのようなアクションをより多く利用しているかを確認してみます。

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比較すると以下の動作が3倍以上多く実行されている事が判明しました。

・Add Friend (友達の追加)
・Post Community Content (コミュニティーにコンテンツの追加)
・Join Community (コミュニティーへの参加)


次に過去データよりファクトを求めてみます。上記3つのアクションを1回以上行ったユーザーのリテンションを「リテンションチャート」で確認してみます。(チャートリンク)

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リテンション率が 60ポイント以上向上し 80% 前後を推移するといった結果が確認できました。(赤線) 

機能強化のプロダクトロードマップに「Add Friend」「Post Community Content」「Join Community」の 3つを入れ込む事にしました。これら3つの機能をより魅力的に高め、かつ、容易にアクションを実行できるように UIX を改善するように提案する事としました。


5 | 好循環ループの作成

次に最もハードルの高いプロダクト/サービス内の「レベル 3 | 好循環ループの作成」です。Greylock Partners は、Pinterest を例に以下のように述べています。

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プロダクト/サービスの向上に向けて、複数の好循環ループを作成する必要があります。上記では、以下の2つのユーザー状態に注目して好循環ループを説明しています。

・Growth (新規ユーザー獲得後の好循環ループ)
新規獲得ユーザーが「ピン実行」する事により、他ユーザーへエンゲージメントを高める効果が期待できます。

・Re-engagement (休眠ユーザーからの復帰)
友達が「ピン実行」した通知を受け取る事により、休眠ユーザーがサービスに復帰する効果が期待できます。

すなわち、既存ユーザーがお互いに刺激し合ってサービスの活性化を担ってくれる自発的な好循環ループが理想的と述べています。


AmpliTunes では、どのようなユーザー循環になっているのかを確認してみます。まずはユーザー状態を 新規 | 定着 | 休眠 | 復帰 でユーザー分をしてみます。これは「ライフサイクルチャート」で確認する事ができます。(チャートリンク)

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それぞれ一定数のユーザー状態を確認する事ができました。上記をユーザーの状態遷移図で示すと以下となります。

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どのようなプロダクト/サービスにおいても、定着ユーザーが休眠状態になってしまいます。定着ユーザーが休眠状態になってしまった際に、「休眠 ➡︎ 復帰 ➡︎ 定着」へと遷移させるように循環を作成する必要があります。


では、どのようなトリガがきっかけで定着ユーザーへと遷移する可能性が高いのかを確認してきます。これは「コンパスチャート」で確認する事ができます。

「コンパスチャート」では、先行指標、すなわちマジックナンバーを求める事ができます。定着ユーザー化に向けて相関関係にあるユーザーアクションを確認してみます。(チャートリンク)

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上記チャート結果から好循環ループを作成する上で注目できそうなイベントを精査してみました。

・ Share Song or Video
・ Join Community
・ Post Community Content
・ Add Friends

以下の好循環ループを作成してみる事にしました。

より多くのユーザーがプロダクト内のコミュニティーに参加し、コメントを投稿、友達を招待してコンテンツをメンバーで共有するループの作成

上記ループを多くのユーザーが体験できるように、プッシュ通知やアプリ内メッセージといったエンゲージメント試作を実施する事としました。効果が判明したら、より多くのユーザーが上記好循環ループを体験できるようにUIX を改善してプロダクトに工夫を盛り込む事にしました。


6 | まとめ

今回、Facebook、LinkedIn、Airbnb、Dropbox 等をグロースさせてきたベンチャーキャピタル Greylock Partners の1,000億円企業に向けたグロース手法「Hierarchy of Engagement (エンゲージメント階層)」を Amplitude のデモデータ AmpliTunes で実演してみました。

皆様のプロダクトのグロースの参考になれば幸いです。ご質問等ございましたら、お気軽にお問合せください。


7 | 他のグロースハック手法のご案内

以下のマガジンで具体的なグロースハック手法をまとめてますので、ご参考頂けますと幸いです。


8 | 無料アカウントについて

Amplitude は月間 1,000 万イベントまで無料でお使い頂けます。ファネル分析 | LTV 分析 | リテンション分析 | アクティブユーザー分析等、グロースに必要な分析を行う事ができます。

Twitter, dropbox, Microsoft, Hubspot 等で利用されている分析ツールをご自身のプロダクトでもお試しください。


9 | 「リテンション向上の虎の巻」無料 DL ご案内

北米で最もダウンロードされているリテンション向上教本の抄訳 (全63頁) 登録不要ダウンロード頂けます。

無料ダウンロード

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10 | Amplitude について

Amplitude は、多くのアナリティクスが採用している「セッション軸」でなく、「ユーザー軸」でユーザー行動分析ができるアナリティクスです。ユーザー行動分析により、顧客理解を深める事ができ、データに裏付けされたサービス改善を図る事ができます。

Amplitude は全世界で12,000社以上の導入実績があり、NTTドコモ, Microsoft, Twitter, Dropbox, PayPal, Under Armour 等のグローバル企業で利用され、データに裏付けされた顧客理解やサービスグロースを支援しています。

日本市場においては、パートナーである代理店と共に、イベント設計、ETL、導入から分析を含む運用支援を一気通貫でご提案させて頂いています。

お問い合わせ : tokyo@amplitude.com