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61. 十人十色の正義感
自らを正義であると思い込んでしまった途端に、人はどんなに残虐な
ことでも、あまり心を痛めずに行うことができるようになります。
歴史的には、もっとも残酷なかたちで、この人間の心理が
顕在化した時期がありました。
その一例が「魔女狩り」です。
ドイツを中心に、ヨーロッパにおける魔女狩りが猛威を振るったのは
16世紀~17世紀にかけてです。
悪魔に仕え、呪術で人々にさまざまな害悪を及ぼす魔女ではないかと
疑われる人物に対して、制裁を加えるなどの迫害が行われていました。
社会不安に対する生贄として、魔女と疑われた無実の人々は、
民衆によって裁判にかけられ、殺されていったのです。
キリスト教ではその当時、魔女を殺すことは正義だと認められて
いたので、自身を正義の側に置いて、自分が救われるには
魔女を裁かなければならないという考えが広まり、魔女を裁くことが
神の意思に沿うことであると信じました。
人間には、集団にとって都合の悪い個体を見つけ出し、
排除しようとする思考が備わっています。
知恵を持つ人間ならば、これを過激化させず共存共栄の道を探すことも
できるはずだと思うかもしれませんが、人間の脳は数百年前から
ほとんど変化していません。
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魔女狩りの裁判が収束したのは、上層部の意識が変わったからでした。
民衆からの告発が減ったわけではなく、民衆は依然として異質なものを
排除するために告発を続けていたのです。
ただ、それが裁判で受理されなくなってしまった、それだけのことでした。
そして現代の私たちの心の中にも、依然として異質なものを排除しようと
していた民衆のように、正義中毒の火種がくすぶり続けています。
残念なことですが、人間は他人が失敗したり、不幸な出来事に
遭遇した時に、思わず湧き上がってしまう喜びの感情を持っています。
これをドイツ由来の学術用語でシャーデン・フロイデと言い、
シャーデンは「損害」、フロイデは「喜び」という意味で、
他人の損害を喜ぶ感情のことを指しています。
シャーデン・フロイデが集団内で発生したとき、異質な他人を
排除する方向に動きます。
![](https://assets.st-note.com/img/1718667932682-OXrVcQP7Ra.png?width=800)
他人の不幸を喜ぶ感情は、人間が社会的な生き物であることが
関係しています。
たとえば、他人の迷惑を考えずに好き勝手する人がいれば不快にもなるし、一人だけ得する人がいれば妬み心も抱いてしまいます。
この感情は男性より女性の方が強いという研究結果があり、集団での
協調性や公平性を重視する傾向は女性の方が高いため、
この男女差が生まれると考えられます。
普段偉そうな政治家や売れている芸能人が、何か不祥事を起こして
謝罪会見をしていた時に、「ざまあみろ」と思ってしまうのは、
あなたの意地が悪いからではニャいんです ฅ(ↀᴥↀ)ฅ
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