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《木曜会:6月20日》

新潟空港はなんだか居心地が良い。ドバイ国際空港のように広大で空港自体が要塞化されたものも楽しいのだが、そうではなく肩の凝らない気楽さが地方の空港にはある。それを「のんびり」と評すのかどうかわからないが、その中でも特に新潟空港の快適さは目を見張るものがあった。

新潟国際空港
ドバイ国際空港

10点満点を付けようと思ったが、大阪への帰りはめっちゃ揺れたので2点だ。今後は飛行機に搭乗する回数(n数)を半分まで減らそうと真剣に考えている。実際、先々週の仙台は新幹線で往復。先週の山型も行きは新幹線、今週の新潟も行きは新幹線だった。

来週の壱岐は、どうしようか悩んでいる。飛行機も苦手だが、同じくらい船も苦手であり(苦手のタイプが異なるのだが)、その2つしか移動手段が残されていないため、その場合は自分自身どちらを採択するのか興味がある。

そのまま、木曜会——。

【6月20日:木曜会参加者】
①冷泉 ②ヒゲの男 ③ファラオ ④ムエタイ野口
⑤バズらせ屋コースケ ⑥メキシコの精霊のMYO
⑦アラタメ堂のご主人 ⑧デザイナー浦部 ⑨元歌手の女
⑩水着のおっさん(アラカワ) ⑪ロビン 
⑫PayPayの課金が止まらない男 ⑬常連の不思議な女

「新潟の聖篭町に喜楽亭という店があったよ」と新潟から帰ってきたばかりのヒゲの男は冷泉に伝える。アラタメ堂のご主人も「僕の血縁者がやってた中華料理屋も喜楽という名前でしたよ」と教えてくれる。冷泉から喜楽の使用許可が得られていない状態で、勝手に使用されているのではないかとヒゲの男は指摘する。

「喜楽いう言葉、僕が言うよりも前に、ずっと、あった言葉です」と冷泉は正直に話す。確かにデジタル辞典で調べてみても『喜楽』という言葉は掲載されており、その意味は以下のとおりであった。

【喜楽】
喜びと楽しみ。喜び楽しむこと。

引用:デジタル大辞泉(小学館)より

冷泉が言うてるままやん。と、来場者一同が笑い転げることとなった。その光景の何が愉快かといえば、その事実を知って最も笑い転げているのが冷泉自身だからだ。人を感心させることもできれば、人を笑わせることもできる、なんとも深い言葉ではないか『喜楽』とは。

多少なりとも以前より体格がドシっとした、バズらせ屋のコースケ君は飲食店をM&Aしたと打ち明ける。どうして飲食店を買ったのかの問いに「飲食どうのではなく、とにかくM&Aというのをしてみたかったのです」と切れ長の眼を向けながら質問に答える。

【M&A】 Mergers and Acquisitions
企業・事業の合併や買収のこと

引用:Wikipediaより

コースケ君は、PayPayの課金が止まらない男とSEOならぬMEOのことで話しをしている。コースケ君はM&Aの後、業態が飲食店であるためスタートダッシュを図って知人を沢山呼んだのだが、それが原因で12キロ太ったと教えてくれた。

【SEO】 Search Engine Optimization
検索エンジン最適化。検索エンジンのオーガニックな検索結果において、特定のウェブサイトが上位に表示されるよう、ウェブサイトの構成や記述などを調整すること。また、その手法の総称。

引用:Wikipediaより

【MEO】 Map Engine Optimization
主にGoogleマップ向けの地図エンジンで検索結果が上位に表示されるために様々な施策を行うこと。SEOの地図バージョン。

引用:https://www.synergy-marketing.co.jp/glossary/meo/

上記の2名の話しとは別枠で、日本全国いろんなところに喜楽と名付けられた店舗ありますねと、誰かが教えてくれる。

【喜楽】喜びと楽しみ。喜び楽しむこと。

引用:Wikipediaより

「でも、冷泉の『喜楽』にはその説明だけでは収まらない、どこか血の匂いの要素というか、泥をすすってでも相手を殺すとか、そんなニュアンスが含まれていると感じる」と勝手なことを言うヒゲの男。それを聞いて、ひとり嬉しそうに爆笑するのは、やはり冷泉本人なのだ。

アメリカ村で『FARPLANE』を経営するロビンも新しい事業展開を視野に入れて現在進行形にて動いているという。今さらながらFARPLANEとはどういった場所なのであるのか、定義付けして周知する必要がある。

Q:ハプニングバーですか?
A:セクシャルな部分は扱っていますが、マジで違うのでよろしくどうぞお願いたします!

引用:『FARPLANE』のHPより

新規事業について本報告書にて詳細を明かすことはできないが、四方八方から質問が飛んでくる。

「業態は?」「ターゲット層は?」「顧客単価は?」「強みは?」「ハプニングバーですか?」という具合だ。矢面に立たされたロビンはひとつひとつ丁寧に濁声で回答していくが、その目には「いちいち鬱陶しいんじゃ」という感情が読み取れて、それがまた愉快だった。

木曜会の最初「今日はゲストで偉い人を呼んでます」と冷泉が宣言したとおり、アラカワと名乗る男がやってくる。カジュアルだが清潔感のあるスーツに白のカッターシャツ、ヒゲの男たちより10~20才ほど年齢が上の先輩であり、普段であれば冷泉が座っている席に着座して静かに酒を飲んでいる。

その対面、オルガン横のメイン席で同じく静かに酒を飲むのはChatGPT魔改造の中枢を司る、ムエタイ野口である。

「ええ、スーツ着てはりますね」(冷泉)
「ああ、これは水着なんですよ」(アラカワ)
「えっ!どういうことですか」(全員)
「水着の素材を使用して製作されたスーツなので、伸縮性に優れていて着心地が良いですよ」(アラカワ)

木曜会に来場していた皆がアラカワのスーツに触りたい触りたいとなり、濃紺のスーツの生地を指で摘みあげる。ホントだ、伸縮性がある。

「その水着のおっさんが何の用でここに来たんですか」(ヒゲの男)
「おい、失礼なことを言う奴がおる。次はホンマに海パンだけで来ましょうか」(アラカワ)
「あ、荒川さんはめっちゃ強いです。少林寺拳法してはります」(冷泉)
「少林寺拳法なら僕もしていた」(ヒゲの男)
「何段でしたか」(アラカワ)
「覚えてないです」(ヒゲの男)
「帯の色は何色でしたか」(アラカワ)
「ええと、緑色でした」(ヒゲの男)
「緑色は、6級ですね」(アラカワ)

ヒゲの男は全員に笑われた。そして唐突ではあるが、水着のおっさんと一緒に『LET IT BE』を演奏することとなった。水着のおっさんは歌が上手い。ただ、コロマンサに置いてあるギターはどういうわけか3弦を【F (ファ):本来はG (ソ)】以上にすると弦の張力が強すぎて切れてしまいそうなため、ギター全体を1音ずつ下げてチューニングしている。

つまり、水着のおっさんが歌い慣れた『LET IT BE』の原曲キーより1音低いのだ。気持ち良さそうに歌いながらちょこちょこと「キー、低くない?」とワーワー言いながも、それを無視して曲が進行するので仕方なくまた歌うを繰り返す。この水着のおっさんは先輩として、とても魅力的だった。

朝は6時に起きるため、早めに帰らなければいけないと水着のおっさんはコロマンサから帰宅する準備をする。なんでもそうした生活習慣がルーティンとなっていると教えてくれた。

「水着のおっさんのルーティンワークは知りたくもないから、はよ帰ってくれますか」とヒゲの男は言う。水着のおっさんことアラカワは「失敬な奴がおる」とロビンに同意を求めるが、ロビンからも「アラカワ、ゴチャゴチャ言わんとさっさと帰れ」と追い打ちを掛けられる。

冷泉と水着のおっさんは20年来の先輩後輩であり、互いに気心が知れた仲であることはすぐに理解できた。冷泉が木曜会に連れてきてくれたゲストを最大限におもてなしすることができたのかどうか不安だったが、翌日、水着のおっさんから冷泉に対して「めっちゃ楽しかった」と御礼の連絡があったと聞いて安堵した。

『LET IT BE』=あるがままに

そうお付き合いさせていただくことが、最適だなと感じた。

ひとしきり笑ったあと、唐突にヒゲの男の電話が鳴る。息子が家に立て籠もりそのまま寝てしまったため、誰も家に入れないので助けてくれという緊急通報だった。

1日、いろいろある。

次回の木曜会は6月27日となります。皆さん、奮ってご参加ください。

次回予告:『冷泉の逆転満塁ホームラン』


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