酒場放浪の始まり
場所は神楽坂。
駅から一番近い坂を上がっていく途中にあった。
友達と待ち合わせをしていたのだがドタキャンされ、
せっかく自宅から1時間以上かけて来たのだからと
たまたま目についたこの店に入った。
色あせた赤い暖簾をくぐると、
「いらっしゃいー」と店主らしき人の野太い声。
「すみません、1人なんですけど」
「好きなところ座って―」
カウンター7,8席に4名テーブル2つ。
ほぼ満席に近かったため、選ぶことなくカウンターへ。
メニューが手の届かない場所にあったため、
とりあえず、置いてあるだろうと思われる2品を注文。
「お新香と煮込み、お願いしまーす」
すると隣に座ってた渋めなおじさまが
「ここは煮込みよりおでんが美味いよ」
とボソッと一言。
慌てて
「ごめんなさーい。煮込みやめておでんにしまーす」
「あいよー、ネタは何にする?」
で、注文したのが写真の品々。
とりあえず大根からいただくと、
なんとまぁ、店主の顔に似合わず優しい味。
かと言って薄すぎるのではなく、
昆布と鰹のお出汁がしっかりしていて、そこにほんわりと甘さも感じられる。
それにしても、何となく注文してたから全部で6品。
しかも1個がとても大きい。
これは1人では美味しく食べきることは出来ないなと思い、
このおでんを教えてくれたおじさまに
「良かった半分召し上がりませんか?」
「悪りぃなねーちゃん。遠慮なくいただくよ」
そこから冷酒を飲みながら、
その中におでん出汁入れて飲むことも教わりつつ、
私がもう一杯注文したところでおじさまは退店。
「ゆっくりやってけよー」
「また会いましょうー」
そのあと頼んだお酒を飲み切り、
「おあいそお願いしまーす」
「さっきの人から貰ってるよ」
「え?初めて会った人なのに」
「いいんだよ、おっさんてのはそういうのが好きなんだから」
これが始まり。
今から15年くらい前、
私が三十路突入一歩手前のお話(笑)
だけどこのおじさまのおかげで、
女の一人飲みを怖いと思わずに今に至ることが出来ているのかもしれない。
そんな感じで始まった酒場放浪。
過去、色々なお店にひとりで飛び込みで入っていたので、
年号が変わるのを機に(まだ変わっていないけどw)
それを記録に残してみようと思う。
ちなみにこの店には、そこから転職前までの8年近く、2、3ヶ月に一度くらいのスパンで通ってた。
#酒場放浪紀 #酒場放浪記 #酒場 #一人飲み #酒 #大衆居酒屋 #令和元年にやりたいこと
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?