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それってほんとに恋なのかい-2

野球部のキャプテンに恋をする。しかも、試合での姿を見て、ひとめぼれ。

教科書に載ってるような例文だな!おい!というくらい青春の通り道ど真ん中を歩いていた私。

彼に恋をした、と自分が気づいて、生活が変わった。

大学生の彼とは別れた。野球部は甲子園に行けず、夏の戦いが終わった。夏休みが終わったら、学校に行くのが死ぬほど楽しくなった。朝何時頃にどこにいれば、彼に「おはよう」と言えるか、何曜日の何時間目は移動教室ですれ違えるチャンス、とかそんなことにどんどん詳しくなっていく。

”友達なら”って言われて始まる関係なんて、もしかして絶望と屈辱なのかもしれないけど、私は希望に満ち溢れていた。私が好き、っていうだけでも死ぬほど幸せだったから。

残された校内のイベントを全力で楽しみ、無意味に意味を持たせてメールを送ったり、小さなきっかけを百倍にして電話で話したり。彼はとても優しくて、無視することなくメールを返してくれるし、電話にも出てくれる。彼から、ってことは一度もないのが、彼の気持ちの全て。大学受験のための補習をする彼に、チュッパチャップスの差し入れをする。パイナップル味。もはや、私の青春の味。そしたらきちんと、「ありがとう」ってメールをくれる。勝手な一目惚れだけど、彼は私を離さない。俺はダメだよ、って最後の一言を言わない。

でも、きちんと振られた。もうこぼれ出してたまらない感情を、伝えることでしかコントロールできなかった。振られても涙なんて出ないよ。ってくらいに彼のことが好きだった。

で、私は振られてもっと、加速したのだ。好きの気持ちが。受験に向かう彼に、思いの込めたお守りを渡した。一回デートに誘って断られて、でも負けじとリトライして、デートまでこぎつけた。卒業に向けての長い長い春休み。絶望は希望に代わり、二人で映画を見て、さよならの駅で「ねね、手繋いで」って数百メートル左手にしか意識のない時間。

彼の手は大きく、性格とこれまでの毎日が詰まりまくった手だった。

一生忘れられないくらい、儚い手だった。

飽きずに気持ちを伝えて、気持ちよく断られる。

そもそも、私たちは、卒業後に進む道が全く違うのだ。彼は関西。私は関東。それが理由ではないけれど、私の恋は選ばれなかった。彼は私を好きではないのだ。でも、私の気持ちは絶対大事にしてくれる。そんな人をどうやって嫌いになればいいのだろう。。。卒業式で第二ボタンをしっかりもらった。ちゃんと前日に「ボタン、私が欲しい」と予約して、「そんな予約いらんやろ!」の彼の一言を笑う私。当日、一つを残してしっかりなんのボタンも残ってない彼を見て、もはやそれがエンゲージリング並みの輝きに見えた。どうやって、そのボタン一つ残したの?それは、私でいいの?

もう、会えなくなるね。




-3に続く。





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