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『花一匁』考察

2023年6月4日、ずっと真夜中でいいのに。は活動5周年を迎えました。5周年を記念してファンクラブ会員限定のライブ「元素どろ団子TOUR」を開催したり、マルイとコラボして様々なグッズやクレジットカードまで作るなど、活動の幅を一気に広げてきました。そして5周年を記念する日にサプライズのアコースティックライブを敢行したのです。元々YouTubeで配信する予定だったアコースティックライブですが、突如ファンの間で「ライブ来たら観れる!?!?」という情報が拡散されたのです。

オリジナル文字の一覧を照らし合わせると確かに「ライブ キタラミレル」になるのです。更に公式リークサイトも更新され、このような文字が表示されました。

Twitter上では空前の「ACAねさんを探せ!」状態になり、ファンは答えがどこなのか必死に見つけ出そうとします。そして答えを導き出したファンが続々とシークレットライブの会場に集まり始め、ついに定員の400名に達したのです。ちなみにこの方の解読が模範解答のようで、公式スタッフにリツイートされていました。

そして5周年を記念するアコースティックライブが秘密の場所に集まったファンと、Youtubeを通して観覧するファンのために始まりました。現地に行ったファンの方いわく、「どろ団子の延長線のような雰囲気」だったそうです。そしてこの日のもう一つのサプライズが『花一匁』が初披露されたことです。更にこのアコースティックライブの後、MVが公開されました。MVにはこの5年間にリリースされた曲のキャラクターや、アルバムのジャケットなど、至るところにずとまよの要素が散りばめられていて、ファンが歓喜する内容になっていました。

実は、注目してもらいたい点が他にもあるのです。ACAねさんがデビューする前に歌っていた未発表曲をリメイクしたものが『花一匁』のようなのです。その曲の名前は『黒く塗りつぶす僕らを』…過去のライブレポートによるとダンサブルなナンバーだということがわかっています。『黒く塗りつぶす僕らを』の歌詞に「花一匁」というところがあるんですよね。古参のファンの方に教えていただいた歌詞がこちらです。(正確に記録されていない歌詞なので多少の間違いはあるかもしれませんが、その点はご容赦下さい。)

僕のことを何も知らない 君のいる世界へ
ずっと真夜中でいいのにって溢した午前5時
嵐の前の静けさなんだとわかってて 怖くて避けてたんだ
君が未来に行ったきり帰らないなんて 僕は知らなかった
知りたくなかった「冗談だよ」って笑って君の夢ばかりみた
全然飛べやしない奴が暗く黒く塗りつぶす僕らを
教えてお願いどうしたら他愛もない話できるの?
ごめん 君が 過去が 弱りきった僕が 散らかったままなんだ
一切合切捨ててもダメだ また探してしまった
君が欲しいよ 花一匁
手に入らない事わかってても
柄にないことばかりだからこうして
こんな僕をまた 笑ってくれたらいいのに

「ずっと真夜中でいいのにって溢した午前5時」というところがあります。アコースティックライブでACAねさんが話していましたが、この歌詞からバンド名が誕生しました。バンド名にもなった歌詞があり、ここまでずっと温めて、完成形として活動5周年記念日にリリースしたのには並々ならぬ意義があるはず!と聴いた瞬間に感じました。

ピンときたのはそれだけではありません。曲のタイトルが似ているため、『暗く黒く』の原曲が『黒く塗りつぶす僕らを』だと信じていたのですが、更に同じ曲からエッセンスを抽出して『花一匁』を作ったんだ、と思いました。このシークレットライブ以外にもACAねさんは過去に謎解き問題を出したことがあり、かなりの頭脳派だということがわかります。私が何を言いたいのかというと、ACAねさんは真意をカモフラージュさせる天才だということです。『花一匁』とつながりがあると思われる曲は『正義』『過眠』『暗く黒く』です。『過眠』の考察はこちらです。

『過眠』と『暗く黒く』には共通点があります。1つ目の共通点は映画「さんかく窓の外側は夜」のタイアップ曲だということ。2つ目はACAねさんの大切な誰かが関係しているような描写があるということ。私はこの2曲は映画のタイアップ曲にしたのは、映画のために書き下ろした曲というイメージをリスナーに与え、カモフラージュをするためだと思いました。なぜかというと、『暗く黒く』の原曲は『黒く塗りつぶす僕らを』であって、その歌詞は『過眠』とリンクするところがあるからです。「さんかく窓の外側は夜」は霊が見える青年を取り巻く物語なので、その点を絡めているのが流石!と感じたポイントです。これ以外にも死者や霊界との繋がり、死に関する言葉をACAねさんは残してるので、それも合わせて考察を進めていきたいと思います。

『ずっと真夜中でいいのに』という歌詞。その後に続く『午前5時』というのも非常に意味深です。単刀直入に言うとこの話は、この時間に大切な誰か(私の考察はお母さんだと仮定しておきます、お母さんが亡くなったという世界線で読み進めていって下さい)が臨終を迎えたんだと思いました。「嵐の前の静けさなんだとわかってて 怖くて避けてたんだ 君が未来に行ったきり帰らないなんて 僕は知らなかった」というところがあります。終わることの無い寂しさ悲しさの嵐が襲いかかってくる、それが怖くて現実に直面できなかったのでしょうか。「未来に行ったきり帰ってこない」というのは未来=誰もが行く先、つまり死後の世界のことを指しているように思います。

2020年に販売された「ふふふカレンダー」にはACAねさんの手書きのメッセージが添えられていて、その中に「死を考えると楽になる 終わりがあると思えるから」というのがあるのです。あるずとまろさんが写真を提供してくれました。

ACAねさんのメッセージ

他にもクスッと笑えるようなメッセージもあるんですが、これはいきなり死というダークな言葉が使われていますよね。ところが、ACAねさん的にはポジティブに捉えていませんか?いろいろ悩むことも苦しむことも無くなる、という意味なのかもしれませんが、死の先には亡くなった大切な人との再会が待っている、と考えると気持ちも楽になるのかもしれませんよね。

お母さんがいない朝が来ないで欲しい、だから「ずっと真夜中でいいのに。」って思ったのかもしれません。『花一匁』の歌詞にも「成仏」や「死」という言葉が出てきますが、これもリンクしているように感じます。他の曲の考察でも触れましたが、ACAねさんのお母さんは音楽が好きな人だったと思います。だからこのバンド名には、自分に大切な命と生きる道を与えてくれたお母さんに、感謝や再び会えるように、という祈りが込められていると思うんです。後に続く歌詞も帰ってこないお母さんを思う気持ちや、「寂しくないよ、笑ってね」と語りかけている姿を表しているように見えるんですよね。なかなか重い内容です…だからカモフラージュするために、『黒く塗りつぶす僕らを』を『暗く黒く』にリメイクして、さらに映画のタイアップ曲として起用してもらったんだろうと私は解釈しました。

『正義』の考察と「ACAねさんの発言『ライブとは確認の場』考察」も大いにリンクしているので、『花一匁』の前にこれらを読むとおもしろいかもしれません。

それでは歌詞を追っていきましょう。

ずっと真夜中でいいのにって溢した午前5時。
目に見えてんのは 波形だけです 腐れたデモベース
偶然⇄必然の工作 朝靄は4シーズン
痛み止め用の曲 作っときたい

このまま朝が来ないでくれたらいいのにな。ずっと目に焼き付いているのは機械の波だけ。いろいろ考え事しながら、自分の好きな音楽からオリジナルのデモ曲作ってみたけど、なんか上手くいかない。「なんでこうなってしまったの」っていう気持ちを「こうなってしまったのは仕方ないことなんだ」って自分に言い聞かせることを何度も繰り返してしまう。なんだか眠れなくって朝靄を毎日毎日、春夏秋冬ずっと見てる気がする。悲しい、辛い、痛いって思う気持ちを紛らわせる曲を作っときたいな。

大事な人がいなくなってしまった瞬間、一人にしないでほしい、時間が止まってほしいと願う人は少なくないと思います。朝が明けると新しい一日が始まり、嫌でも動かないといけません。ずっとそばで看取っていたときに見ていた波形とは、心拍数を表す心電図モニターなのじゃないかなと思いました。またMVのメインとなる舞台は病院です。音楽が好きなお母さん、そのお母さんのために曲を書いていたのかなぁ、と想像しました。自分の力ではどうにもならない不可抗力に抗おうとする思いと、半ば諦めのように受け入れようとする思いの葛藤の渦をこの記号「⇄」で表しているようにみえます。「痛み止め用の曲 作っときたい」ですが、ACAねさんは真意とは反するメロディーや歌詞を書く傾向があるように思います。代表的なものがいじめられた経験を歌った勘冴えて悔しいわですね。痛い思い出であっても、それを明るく前向きな印象を与える曲にすることで自分自身を癒やす薬にしていたのかもしれませんね。

ルーティンから もう抜け出せない
辞めたい辞められない 苦しいほど
ご機嫌なんて伺って ばかじゃない?
僕が作るものは 既にあるものじゃーーん

朝起きたらご飯を作って、洗濯物干して、身支度整えて…お母さんに代わって決まったルーティンをこなしてる。やめたいけど私がしなくちゃ、代わりにする人いないんだし。ばかみたいに周りのご機嫌伺ってる。でも私"らしく"することも大事だと思うし、そうあるべきだよね。

「ばかじゃない?」という歌詞が出てきました。ばかじゃないのにを連想した人は少なくないでしょう。同じように過去の曲の歌詞が随所に見られます。5周年のメモリアルソングに相応しい演出ですね。曲作りとも絡めたダブルミーニングの歌詞だと思いました。「僕が作るものは 既にあるもの」とは、自分の中に蓄積された経験やポテンシャルのことを指しているように感じました。新しく作り出すというようり、既に自分の中にあるものを再構築していく=お母さんが好きな音楽を小さい頃からよく聴いていた、それをACAねさん流にオリジナルの曲として作り出していったように思います。

何か出来そうな夜更かし
成仏させたし
特別なキャラに期待はしないで
Tシャツも しわくちゃ
淡い残り香の攻撃に やられないように⚠︎
意味が欲しいよ 花一匁
手に入らないこと わかってても
柄にないことばかり たらたら溢して
こんな僕をまた 笑ってくれたらいいのに

眠れない夜、自分にもできることがあるかもって思った。悲しい気持ちは成仏させた。でも、急に私のキャラが変わるなんて期待はしないでね。お母さんみたいに上手に服の整理できないからTシャツがしわくちゃだ。お母さんが好きだった柔軟剤の香りを嗅ぐとまた感傷的になるよ。花一匁の意味を知りたい。負けたら向こうに取られちゃうのもわかってるんだけどね。普段は笑顔が多い自分でも、柄にもなく文句をたらたら言ってしまう。また会うときにはこんな自分でも笑ってくれるかな。

誰かの代わりをしないといけない、特に慣れない仕事をするとどうしてもミスしたり、失敗してしまいますよね。そんな中でも頑張ろうとしている姿が目に浮かびました。花一匁は二手に分かれて仲間のやりとりをする遊びです。なぜ花一匁なのか…これは私の想像ですが、この世からあの世にお母さんが取られてしまう、この世に留まってほしいACAねさんの気持ちを表現したものだと感じました。悲しくても、明るいイメージがある子どもの遊びに例えるあたりが、感性豊かなACAねさんらしいですね。

飛んでっちゃった 弱音が飛び散った
君の白い袖を 汚したのは僕だよ
なんで謝った?
あの時から舞台に 立てないままだったんだ

もういなくなっちゃった。弱音が出てしまう。白い袖が汚れたのは私がすがりついて泣いたから。なんでごめんって謝ってたんだろう。憂鬱な気分になって人前に立つことが億劫になっていたからかな。

親はいつの時代も子どもの幸せを願うものです。自分が病気になったことが原因で子どもが暗くなっていたり、学校にも行きにくくなったとしたら「ごめんね」って言ってしまうと思うのです。「違うよ、悪いのはお母さんじゃないよ」という会話でもあったのでしょうか。「舞台」という言葉で、アーティストのステージを表しているようにも見えますが、一般人の舞台とは学校や会社などそれぞれの立場で活躍する場所のことだと思いました。親子が双方を思う気持ちが痛いほど刺さります。

ルーティンから もう抜け出せない
辞めたい辞められない 愛想笑顔
ご機嫌なんて伺って ばかじゃない?
僕が歌うものは 既にあるものじゃーーーん

何も裏がない無垢な笑顔じゃなくて愛想笑顔をやめたい、でもやめれないんだ。

なにもしないと自然と表情がこわばり周りから心配されるので、それを誤魔化すために愛想笑顔を振りまいていたのかもしれませんね。

何か出来そうな夜更かし
成仏させた詩
特別なキャラに期待はしないで
Tシャツも しわくちゃ
淡い残り香の攻撃に やられないように⚠︎
意味が欲しいよ 花一匁
手に入らないことわかってても
柄にないことばかり たらたら溢して
こんな僕をまた笑ってくれたらいいのに

1サビの「成仏させたし」が2サビでは「成仏させた詩」に変化しました。書いた曲が「なんか違うなぁ…」と思ってボツにした様子を表したのだと思いました。

パジャマ姿で 始まった共感会議
髪振り乱して 半乾き水しぶき
明日は早起き ゴミ出しプラの日
うるさいアラームをセットしてgn...☽

パジャマ姿で家族会議始まっちゃった。ちょっと待ってー、まだ髪乾かしてる途中だよ。ああそうだ、明日はゴミの日だった、プラゴミだったよね。絶対起きれるようにうるさいアラームセットして寝よう。おやすみなさい。

家族と役割分担を決める家族会議をしているようですね。一人抜けるだけでも戸惑うことってたくさんあります。お父さんやお姉さん、ACAねさんも「しっかりしなきゃ!」とお互い励まし合っていたのかもしれませんね。家族愛を感じます。

笑われたって凹むけど
媚び売れないけど
特別な未来を 期待はしない死
Tシャツも しわくちゃ
淡い残り香 胸に刻め 流さないように⚠︎
負けて嬉しい 花一匁
寂しさに強い処方箋 欲しいよ
柄にないことばかり たらたら溢して
早起きの夜も 頑張りすぎは良くないので
健康でいられますように

周りのみんなからは家のことばっかりしてる子って笑われてる。そんなこと言われると凹むけど、変に媚び売るのもなんか違う。別にとても幸せな未来を期待していない。お母さんの残り香を胸に刻んで、周りに流されないように生きていきたい。花一匁には負けたけど、これが私のエネルギーになるはず。でも、寂しさに打ち勝つ処方箋は欲しいよ。無理して頑張りすぎて倒れるのだけは避けたい。いつまでも心も身体も健康に過ごせるようにね。

「健康でいられますように」は心身ともに健康でいることの願いですが、日常生活も創作活動も、何をするときも身体が資本です。自分が倒れたら家族に悲しい思いをさせる、それが嫌だから健康でいたいのでしょうね。ACAねさん自身が辛かったので、余計にそう思うのかもしれません。いずれにせよ、他人を思いやる気持ちが強い人だと改めて思いました。

最後にMVに出てくるこの花の花言葉について個人的な考察を述べたいと思います。

枝振りや花とその蕾の形から木蓮のように見えます。木蓮は色によって花言葉は違うのですが、白い木蓮の花言葉は「崇高」や「尊厳」なのだそうです。命の営みを連想させる言葉だと思いませんか?お母さんはACAねさんにとって、偉大で崇高で唯一無二の存在だった、ということを表しているように見えました。

5周年を最強に健康に迎えることができてファンも嬉しく思っています。どんな困難も苦しみも悲しみも乗り越えて、逞しく生きるACAねさん。いつまでも健康でいてください!これからもずっと応援しています!

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