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失恋は人を詩人にする

「失恋は人を詩人にする」とは、たしかジェーン・スーが言っていた。

過去にダウンロードして削除したアプリをもう一度ダウンロードすると、以前使っていたころのデータが残っていることがある。
ライティングの勉強に英語日記でも書こうとある日記アプリをダウンロードしたら、過去の失恋時に書いた文章が残っていた。

もう一度会いたい女性。
あのころの彼女と私を結びつけたものはもう霧散してしまったけれど。
当時、私はあまりに人を好きになれないので、自分をアロマンティクなのではないかと思っていた。性欲と友愛以外はわからなかった。
一緒にパフェを食べに行った店で、彼女はこの店のスプーンの薄さと舌触りが好きなのだと言った。
そんなことを気にする人がいるとは今まで思わなかったので、いたく驚いた。
彼女は私が人生で出会った中で最も賢く繊細で美的感覚の鋭い人だった。
もう会うことも連絡することもできない。
私は彼女にふさわしくないので仕方ない。
今日、元彼への最後の手紙を書いている時に泣いた。まつエクした直後なのになと思いながら泣いた。
とはいえ、泣いてしまったのはLINEをブロックした理由を書いた部分でなければ、感謝を述べている部分でもなく、「もう会えなくてもあなたの幸せを願っている」と嘘をついたところと、私たちのあいだにだけ存在するMr. fox という狐に「Bye bye」を言わせる絵を描いたところだった。
彼といて幸せになれないのは分かっていて、手酷く裏切られた彼が恋しいわけもなく、結局私は彼のために作り上げた健気で茶目っ気のあって甘えん坊の小さな女の子がいじらしくて哀れで仕方ないのだ。

エモい。

失恋しなくてもこんな文章が書ければいいのに。