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【末期癌の祖母を看取る】在宅介護、医療サービスの利用で食事や入浴介助が楽になる話

私は30代で仕事を辞めて、祖母の介護に専念しました。
在宅医療の難しさは、体力面、精神面、金銭面で負担がかかることだと思います。

少しづつ弱っていく姿をみて不安になることもしばしば。
体調が悪くなると外出は難しくなり、すべて自宅で介護しなければいけません。

「通院の付き添い」「食事の世話」「入浴介助」「おむつ交換」もあって家族の負担は増えるばかり。

在宅医療は一人で抱え込まずに、在宅介護・医療サービスの利用をおすすめします。
末期癌でも自宅で「入浴」や「訪問診療」が可能です。

今回のnoteでは、末期癌で在宅医療を考えている人に向けて書きました。
介護の負担が軽減する方法や、在宅介護や医療サービスの内容を紹介しているので参考にしてください。

祖母の介護をしようと思ったきっかけ

祖母の体調が悪くなったのは2019年。
病院で検査をしたところ「卵巣癌」が発覚しました。

同じ年に子宮、卵巣摘出、腸管切除、人工肛門造設手術を行います。
手術での腫瘍の完全切除は難しく、膀胱に腫瘍が残りました。

この時点で余命は2年で、介護度は要介護2。

高齢であることや心疾患も見つかったため、追加治療をせず緩和ケアに移行しました。

病気になる前は、日本舞踊、畑仕事、ゲートボール、旅行と多趣味だった祖母。

入院2日前までゲートボールをしていたくらいです。

退院後は横になっている時間が多く、以前の活気もなくなりました。

「今まで育ててきてもらった恩返しをしたい」

私は祖母と残りの時間を一緒に過ごそうと思い、在宅医療を決意したのです。

祖母の介護で孫ができることは何?

退院した祖母は、紙おむつも必要なく、自力で歩くことも可能、食事も普通食で元気でした。

在宅医療のメリットは、住み慣れた自宅で治療や生活ができる点でしょう。

しかし時間の経過とともに、必ず容体も悪化します。

デメリットは、悪化したときに家族側の負担が増すことです。

最終的に家族が行った内容は以下の通りです。

【在宅医療の内容】

・食事(1日3回)
・ストーマ内の排便(人工肛門)(1日2~3回)
・おむつ交換(6時、9時、12時、15時、18時、21時)
・バイタル測定(体温、自動血圧計、SpO2測定)(1日数回)
・入浴介助(1日おき)
・ストーマ交換(人工肛門)(3日に1回)
・内服介助(1日2回、頓服あり)
・座薬挿入
・軟膏塗布
・湿布貼付
・口腔ケア(1日2回)
・爪切り(1ケ月に1回)
・部屋の掃除(週1回)
・洗濯(2日に1回)
・点滴の管理

【在宅医療・介護サービス】

・訪問診療(隔週1回)
・訪問看護(週2回)
・訪問入浴(週1回)
・訪問歯科(不定期)
・訪問理容(2ヶ月に1回)
を利用していました。

すべて孫である私の担当です。
在宅医療は、いかに効率よくこなしていくかが、重要な課題となりました。

※人工肛門の交換は、2011(平成23)年に追加され、医行為ではないため家族がいっても問題ありません。

【参考元】
2) 厚生労働省:ストーマ装具の交換について(回答). 医政医発0705第2号、 平成23年7月5日.
https://www.mhlw.go.jp/web/t_doc?dataId=00tb7471&dataType=1&pageNo=1

祖母の介護の負担を軽くするために

長い在宅医療が続くと、介護側も精神的、肉体的にも疲れがでてきます。

在宅医療も24時間365日休みがありません。

そこで一番、負担がかかる「通院」「食事」「入浴介助」を見直しました。

外来通院から訪問診療に切り替える

祖母は車で50分程度の大学病院に通院しています。

受診頻度は1ケ月に1回程度ですが、受付、検査、待ち時間、診察、支払いを含めると半日以上はかかります。

治療内容は無治療のため経過観察です。

無治療の場合、癌が進行する可能性は高くなります。

診察は内診、血液検査のみ。

手術から1年後、異常なしだった腫瘍マーカーの数値も上昇します。

大きな病院は救命救急センターも併設しているため、急性期の患者さんを受け入れています。

回復期や慢性期の患者さんを対応すると、助かる命も助かりません。

主治医から「これ以上は診察できない」と強く転院を勧められました。

祖母の選択肢は次の2種類です。
・緩和ケア病棟に入院
・在宅医療(訪問診療)

「最後は自宅で息を引き取りたい」との意向もあり、在宅医療に切り替えました。

在宅医療に移行するときは、病院の相談員と転院先を決めます。

訪問診療は自宅とクリニックの距離が「半径16キロ以内」と決まりがあり、受け入れ先が見つかるまで苦労しました。

「距離が遠い」「癌に対応していない」と何件も断られましたが、最終的に、隣町の個人クリニックに決まりました。

通院から訪問診療に切り替えることで、通院にかかる時間、体力面で負担が軽減します。

訪問診療と往診の違いについて

間違いやすいのが訪問診療と往診です。

日本訪問診療機構によると、訪問診療と往診の違いについて、以下のように述べています。

訪問診療とは

毎週○曜日の○時にと約束して医師が訪問の上、診療するのです。1週間ないし2週間に1回の割合で定期的、且つ、計画的に訪問し、診療、治療、薬の処方、療養上の相談、指導等をいっていきます。

引用元:日本訪問診療機構

【祖母の場合】
【曜日】隔週木曜日
【時間】14時~
【同行】看護師1名
【内容】診察、薬の処方、生活指導
【料金】医療保険1割~3割負担
「かかりつけ医」が定期的に自宅にきます。

利用時に同意書、申込書といった申請書類が必要です。
処方薬は調剤薬局で別途支払いになります。

往診とは

往診とは、通院できない患者さまの要請を受けて、医師がその都度、診療を行う事です。
突発的な病状の変化に対して、救急車を呼ぶほどでもない場合など、普段からお世話になっているホームドクターにお願いして診察に来てもらうもので、基本的には困ったときの臨時の手段です。

引用元:日本訪問診療機構

往診は時間外救急、夜間休日に対応しています。
ナイトドクター、ファストドクターと呼ぶことが多く、急な発熱、ケガに対応してくれるサービスです。

【曜日】平日夜間、休日
【時間】24時間対応
【同行】ドライバー1名
【内容】診察、検査、薬の処方、
【料金】医療保険1割~3割負担、交通費

WEB、LINE、電話から受付が可能。トリアージ後に自宅に向かうシステムです。
インフルエンザ、コロナウイルスの検査をしたり、数日分の処方薬をその場で投薬したりします。
医療費以外に交通費がかかります。

食事は本人が食べたいものを食べる

在宅医療で困ったことは「毎日の献立」でした。

はじめのころは主食、主菜、副菜、汁物といった和定食を心がけてましたね。
朝・昼・晩と手作り。

やがて1日3食の食事作りも負担になります。

祖母の症状が悪化してくると、自分の食事を作るだけでも精一杯になります。

末期癌は少しずつ食事量が減り、最終的に何も食べられなくなります。

祖母の口癖は「ご飯とおかずは柔らかく煮てほしい」です。

本人が元気なうちに食べたいものを食べるほうが幸せだと思いました。

雑炊を好んで食べた

祖母は宅配弁当、レトルト食品、冷凍食品を好みません。

金銭面を考えると、毎日、お惣菜やテイクアウトも厳しいでしょう。

最終的に祖母が好んで食べたメニューが「雑炊」です。

雑炊は、冷蔵庫にある食材と、ご飯を煮るだけのシンプルな料理です。

1日1~2食を雑炊にすることで、食事作りの手間を省きました。

祖母が好んだ雑炊レシピはちこちらです。
・卵雑炊
・鮭フレーク雑炊
・みそ汁雑炊
・スーパーで売っているお寿司の雑炊
・海苔巻き寿司の雑炊
・お稲荷さんの雑炊

特に「お寿司の雑炊」は、魚の出汁とワサビの辛みでおいしいのだとか。

見た目は非常に「………」ですが。

【お寿司雑炊の作り方】
1、鍋に水を入れる
2、お寿司を投入する
3、沸騰させる
4、具材を箸で細かくする
5、ご飯が柔らかくなるまで弱火で煮る

海苔巻き寿司も同じ工程です。
具材を鍋の中で細かくします。

【お味噌汁編】
1、鍋にご飯を入れる
2、みそ汁を入れる
3、沸騰させる
4、ご飯が柔らかくなるまで弱火で煮る

基本的にご飯とおかずは分けて食べるものでは?と思うかもしれません。

祖母が雑炊を好んだ理由は以下の通りです。
・飲み込む力が弱い
・食べ物が口の中に残りやすい
・むせる
・痰が絡まる
・本人の意思

見た目よりも、食べたいものを優先しながら、食事作りの手間を省きましょう。

入浴介助は訪問看護や訪問入浴を利用する

介護生活で体力を使ったのは「入浴介助」です。

「お風呂が大好きおばあちゃん」のため、2日に1回ペースで入浴をしていました。

自宅のお風呂で「洗髪」「洗顔」「上半身」「下半身」の順番で洗います。

シャワーのみで、時間は10分程度。

最後にストーマを剥がし、周囲の皮膚をきれいにします。

介助中は中腰が多く、腰に負担がかかりました。

介助側は介護用エプロンをつけて入浴介助します。

浴室内は温度と湿度が高く、予想以上に体力を使うのです。

訪問看護に入浴介助をお願いする

訪問看護は、看護師が自宅で健康状態の把握、医療処置、看取りといった看護を行います。

点滴や医療処置がメインですが、訪問看護も自宅浴室で入浴介助ができます。
私も「体力の限界」を感じ1週間に1回、入浴介助をお願いすることにしました。

看護師は1名。

シャンプー、ボディーソープ、バスタオル、タオルは、自宅のものを使用します。

メリットは自宅の浴室を使い、普段通りに入浴できる点です。

洗髪から全身浴、おむつ交換、ストーマ交換まで看護師が担当します。

デメリットは、担当看護師にお風呂場や脱衣場を見られることです。

家族の共有スペースに他人が入ってきても、気にならない人が向いているでしょう。

訪問看護は、近くの訪問看護ステーションにお願いしました。

ケアプランに応じて20分、30分、1時間、1時間半のコースがあります。

どのコースにするかは、契約時に看護師と決めます。

主治医からの指示書が必要になりますが、発行に時間はかかりません。

(祖母の利用料金)
【保険の種類】医療保険1割負担
【利用時間】1時間
【利用頻度】1週間2回
【負担】1ケ月9,000円前後 基本料金+加算4種類

医療保険の場合は1週間に3回までですが、状況に応じて24時間対応可能です。
ステーションによっては、自費負担として営業時間外の交通費や休日夜間料金もかかります。

訪問入浴を利用する

入浴介助に限界を感じた私は、1週間に1回のペースで訪問入浴をお願いしました。

訪問入浴は寝室やリビングと場所を選ばず入浴できます。

「でも…お部屋が広くないとダメなんでしょう?」

いいえ。

部屋の広さは関係ありません。

介護は心の広さが大切です。

祖母は、寝室が狭いため「リビング」で入浴していました。

寝たまま湯船につかり、全身浴や清拭が可能。

広さも2~3畳あれば十分です。

【訪問入浴の流れ】
まず、看護師1名、介護士2名が「訪問入浴車」で自宅にきます。

専用浴槽を運び、同時進行で健康チェック、脱衣、お湯の準備をします。

その後は浴槽に移動、入浴、着衣、ストーマ交換、健康チェック、片付けをして終わります。
シャンプー、ボディーソープ、バスタオル、タオルもサービスに含みます。

家族側が用意しなくても大丈夫。

入浴中はシーツ交換も可能です。

ドライヤーは持参するため、髪を乾かす作業もスタッフが行います。

所要時間は50分程度。

デメリットは利用料金が高いことでしょう。

介護保険が利用できますが、介護度や加算によって料金が変わります。

(祖母の利用料金)
【保険の種類】介護保険1割負担
【利用時間】1時間
【利用頻度】1週間1回
【負担】1ケ月7,000円前後 基本料金+加算4種類

契約時に「加算はスタッフ育成のためご理解ください」と話されていたのが印象的でした。

訪問入浴が向いている人

訪問入浴は次のような人に適しています。
・自力での入浴が困難な人
・寝たきりの人
・家族だけでは入浴の限界がある人
・体調の変化が激しい人

利用していた祖母もシャワーにはない「気持ちよさ」が味わえるそうです。

訪問入浴は、利用するときに条件があるため注意してください。
・要介護1~5の認定がある
・医師から入浴の許可が下りている

ケアマネージャーに相談後、ケアプランを作成し契約を行います。

利用時に同意書、契約書といった申請書類を提出します。

契約後に一定期間、利用しない場合は、再利用時に契約書が必要です。

訪問入浴は、専用の浴槽を自宅に運び、入浴するシステムです。

訪問入浴は自宅浴室での介助はできないため注意してください。

まとめ

在宅医療は、体力、精神力、金銭力の「3力」のバランスが大切です。

在宅医療生活が疲れる前に、在宅医療・介護サービスを検討しましょう。

費用はかかりますが、肉体的に楽になります。

サービスを利用することで、看護師や介護士の作業手順も学べるため自身の勉強になります。

私は在宅サービスを通じて以下の知識も身につきました。
・人間関係
・自宅に他人を招き入れるときのストレス発散法
・神経質にならず視野を広く保つ方法
・常に部屋をきれいに保つ方法
・介護食のレパートリー
など…

在宅医療の経験がない私でも、たくさん学べました。

まだ、ブログを始めたばかりですが、皆さんのお役に立てたら幸いです。











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