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【エッセイ】ビブリオバトルについて語る

ビブリオバトル。それはオススメの本について自分の感想、あらすじ等を交えてプレゼンテーションを行うこと。制限時間は5分間。オーディエンスによって、「一番読みたくなった本(チャンプ本)」を決めていく。発表を行う際、原稿を読んではならない というルールがある。

私はこのビブリオバトルを今までに2回経験している。2回とも、大学の講義で行った。プレゼンをすることに馴れることができ、なおかつ読書習慣を身に付けるきっかけにもなる一石二鳥の講義内容だ。

しかし、初回は悲しくなるくらい、しどろもどろのプレゼンになってしまった。ぶっつけ本番で一度も練習をしなかったのだから、当然だ。私は完全にビブリオバトルをナメていた…。今振り返るとそう思う。苦い思い出となった第1回目のビブリオバトルで紹介した本は「かがみの孤城(辻村深月 著)」。昨年の12月には映画化もされた大ヒット作だ。学校に居場所がなく、部屋に閉じこもっている主人公・こころ。ある日、自室の鏡が光り出し、彼女は別世界に吸い込まれる。おとぎ話に登場しそうなお城には、見知らぬ中学生が6人集められる。そこに、狼のお面を被ったオオカミさまという少女が現れ、「城に隠された鍵を探し出せば願いを叶えてやる」と告げる。果たして、誰が鍵を手にし、どんな願い事を叶えるのか…? かなりざっくりとしているが、大枠のあらすじはこうだ。ちなみに、5分間の制限時間のため、上記よりも更に多くの情報を盛り込みながら本について語らなければならない。しかし、先に述べたように、ぶっつけ本番の発表だったため私のプレゼン内容はそれはひどいものだった。同じことを繰り返し説明したり、何秒(もしくは十数秒)か何を言えば良いか分からず沈黙してしまったり…もっと最悪だったのは、話の結末が分かってしまうような言いぶりをしてしまったのだ。一番やってはいけない、ネタバレに近いことをしでかしてしまった。事前に友人とビブリオバトルについて話していた時、「やっぱり話の結末は言わないように気をつけなきゃいけないよね~」と確認したのに。グループで一緒になった他学生の反応はというと、イマイチだった。(ほぼ)ネタバレをした瞬間は特に。真剣に聞いてくれたのに、無様なプレゼンを披露してしまって、身が縮こまる思いがした。彼らのプレゼンは、素晴らしかった。練習を重ねてきたことがすぐ分かるレベル。本の内容説明・オススメポイントも申し分ない語り口だった。「作品を読んでみたい!」と思わせてくれるプレゼン。私のそれとは雲泥の差があった。練習をおろそかにした自分を恥じた。何よりも悔しかったのは、読了後、とても感動して胸がどきどきした「かがみの孤城」を全く満足にPRできなかったこと。あんなプレゼンじゃ誰も興味が湧かないだろうな…と落ち込んだ。

この教訓を生かし、2回目のビブリオバトルは入念な準備をして臨んだ。紹介した書籍は「The Hate U Give ザ・ヘイト・ユー・ギヴ~あなたがくれた憎しみ~(アンジー・トーマス著)」。アメリカの人種差別について書かれた本で、シリアスな内容。心の中が暗くなるような描写もところどころ散見された。しかし、撲滅にいたっておらず、今なお社会問題となっている人種差別を真剣に考えさせてくれる素晴らしい作品だ。こちらも、2018年にドラマ映画化されている。ギャングがはびこる街に住む女子高生・スターの幼馴染・カリルが白人警察官に射殺される事件からすべては動き出す。事件後、警官のやったことは正当化され、事実とはかけ離れた情報がメディアを通じて報道される。カリルの無実を訴えるため、スターは唯一の事件目撃者として立ち上がり、声を上げていく。これが話の大まかなあらすじだ。実は、この作品を読むのは初めてではなかった。再読本である。3年ぶりということもあり、思い出しながら少しずつ読んでいった。読む過程で考えさせられることや湧きあがる感情は、当時とは異なっていて、新たな発見もあった。
その気づきをノートに書き取り、自分の言葉で伝える練習を重ねた。結果、ビブリオバトル当日、自信をもって聴く人にプレゼンを披露することができた。この作品が、自分の考え方にどう影響したのかについても共有しながら。

2回のビブリオバトル経験を通して、読後に作品の感想、気づきや疑問などを他者と分かち合うことの重要性が少し分かった気がする。読んで終わり、ではなく、内容や考えを自分なりの言葉で伝えること。これは自分が作品に対し、どんな感情を抱いていたのかを明確にする良い機会である。更に、聞き手の質問や意見にも耳を傾け、じっくり考えることで、今までとは違う視点で作品を捉え直すこともできる。個々の解釈や感想を聴くことで読書の楽しみは倍加するだろう。また、プレゼン力も培うことができる。人前で話すことに対して自信をつける絶好の機会だ。教育現場のみならず、地域図書館や書店のイベントにあったら、素敵だろうなと思う。





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